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鬼の橋 

-子どもと大人の境目-
読むことは生きること という中学生向けの読書推進本に紹介されていた中より1冊。鬼滅の刃のブームに乗っかって、プチ鬼ブームの私が読もうと決意した、鬼の橋。過去に児童文学賞ファンタジー賞を受賞していることがわかり、尚更読んでみたくなりました。
 子供から大人への階段を登ろうとしている少年の繊細で危なっかしい姿が、814年平安京に実在した人物を元にし、ファンタジーに描かれています。

 妹を亡くし、何にも力が入らず、心がうつろな状態になっていた少年たかむら。冥界への橋を渡るたかむらの前に現れた2匹の鬼は、たかむらを怖がらせたり、食べようとしたり、、私たち人間の心の中にある邪悪な部分なのかもしれません。将軍坂上田村麻呂は、妹の死の悲しみを「かかえていきてゆけ。」と言います。残酷な言葉だと思ったが、どんなに悲しいことがあって打ちひしがれたとしても、生きているものは前に進むしかないことを示してくれました。

 たかむらは、少女阿子那と、鬼の非天丸との出会いで考え方に変化が出てきます。阿子那は、非天丸を見かけで判断せずに、心から信頼し家族になろうとします。たかむらは理解出来ずに、非天丸は阿子那を食べてしまいたい気持ちを押し殺し、葛藤の中で生きてゆきます。そんな2人を、鬼滅の刃の炭治郎と禰豆子に重ね合わせました。自分だけしか知らない、鬼滅の刃に込められたメッセージを読み取れたような感じがして優越感に浸ったことは内緒です。

 妹に意地悪するような兄だったたかむらの成長も見どころです。大切なものを守りたい、失いたくない、たかむらの心情の変化によって、行動も変化していきます。大人への階段を登っていく過程も描かれています。
 古典文学のようでありながら、現代語の文章で読みやすく、すんなり物語に入り込めるのもこの作品をお勧めする一つの要因です。

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