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帝都の復讐姫は作家先生に殺されたい

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【完結】帝都周遊型の大正あやかし恋愛小説です。のじゃ姫幽霊に憑かれているクールな女給と、お人好し坊ちゃんな駆け出しの作家先生。 note創作大賞に応募中、応援よろしくお願いします!
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#ファンタジー小説部門

帝都の復讐姫は作家先生に殺されたい 浅草十三怪談 (あらすじ・序幕)

あらすじ 大正の世の東京。浅草でその日暮らしをしていた少女・花墨は、高等学校に通う悧月と…

遊森謡子
1か月前
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帝都の復讐姫は作家先生に殺されたい 1-1 浅草十二階下の迷い人(1)

 改暦から四十年が経った、大正二(1913)年、春。  草履の足音が、暗く入り組んだ路地をパ…

遊森謡子
1か月前
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帝都の復讐姫は作家先生に殺されたい 1-2 浅草十二階下の迷い人(2)

 月日は流れ、河原では涼しい秋の風がススキを揺らすようになった。  その日、悧月は新しい…

遊森謡子
1か月前
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帝都の復讐姫は作家先生に殺されたい 2-1 カフエーの女給は英語を話す(1)

※散文的に数行、戦争描写が入ります    ひっきりなしに聞こえる砲声。  血まみれの仲間を…

遊森謡子
4週間前
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帝都の復讐姫は作家先生に殺されたい 2-2 カフエーの女給は英語を話す(2)

 七年前、本の物の怪騒動によって憑捜に目をつけられた花墨は、悧月と別れてすぐに十二階下を…

遊森謡子
3週間前
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帝都の復讐姫は作家先生に殺されたい 2-3 カフエーの女給は英語を話す(3)

 座り直し、改めて飲み物を頼んでから、花墨は悧月に過去を語り始めた。 「私、ちゃんと名乗…

遊森謡子
3週間前
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帝都の復讐姫は作家先生に殺されたい 3-1 国際監獄の囚人(1)

 帝都中心部には監獄がいくつもあるが、そのうちの一つである巣鴨監獄には外国人犯罪者が収監されている。最大で二千四百人を収容できる、国際監獄だ。  その敷地内に、ひっそりと別棟がある。巣鴨監獄は司法省の所管になったのだが、この別棟だけは憑依事案捜査局の支所として、警視庁の権限が残っているのである。  表門の前にタクシーが横付けされ、先に悧月が降りた。彼がさしのべた手に、花墨はおずおずと掴まって、自分も降りる。今日は『カメリア』は定休日で、仕事は休みだ。  敷地は広大なのに、壁

帝都の復讐姫は作家先生に殺されたい 3-2 国際監獄の囚人(2)

 市電の駅の近くでタクシーをつかまえ、悧月が花墨を連れてきたのは、文京区本郷にある真新し…

遊森謡子
3週間前
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帝都の復讐姫は作家先生に殺されたい 4-1 華族会館泥棒ポルカ(1)

 茶色と灰色の屋根、ベージュの外壁、明るい青のアーチと黒の鋳鉄の手すりに囲まれたベランダ…

遊森謡子
3週間前
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帝都の復讐姫は作家先生に殺されたい 4-2 華族会館泥棒ポルカ(2)

 壁に固定されている金庫に、二人は近づいた。 「奥方の持ち物を、彼はここに入れたんだな。…

遊森謡子
3週間前
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帝都の復讐姫は作家先生に殺されたい 4-3 華族会館泥棒ポルカ(3)

 二日後。  開店してすぐの和洋食堂は、昼食にはまだかなり早く、客がほとんどいなかった。 …

遊森謡子
2週間前
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帝都の復讐姫は作家先生に殺されたい 5-1 百貨店の輝きは闇を隠す(1)

 高鳥屋百貨店は、元々は呉服店である。  日本が清との戦争に勝って景気が良くなり、高鳥屋…

遊森謡子
2週間前
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帝都の復讐姫は作家先生に殺されたい 5-2 百貨店の輝きは闇を隠す(2)

 あちらこちらと移動して、夕方に薬師寺邸まで来た時には、さすがに二人とも少し疲れていた。…

遊森謡子
2週間前
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帝都の復讐姫は作家先生に殺されたい 5-3 百貨店の輝きは闇を隠す(3)

「きゃっ」 「うわっ」  皆が驚く声とともに、食堂が暗くなった。しかし扉が開けっ放しになっているため、玄関の灯りが入ってきており、様子はかろうじて見える。  誠子はショールを持ったまま、呆然と立っていた。身体の右側は灯りに照らされているが、左側はよく見えない。  そして、その左側の肩から――  ――ぬっ、と、長い髪の女の落ちくぼんだ目が、覗いていた。豪華な袿の袖から細い手が伸び、誠子の両肩にとがった爪を軽く食い込ませている。  千代見姫だ。 「何だ……何か、奇妙な雰囲気がする