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又吉直樹さんとトーク&ライブイベントを開催します!

経緯はさておき(5月14日から公開のPodcastにて話しています)

又吉直樹さんとのトーク&ライブが5月27日表参道WALL&WALLにて行われることになりました。ライブのお知らせは本当に久しぶりです。バンドセットや弾き語りのとても内容の濃い演奏になると思うので是非楽しみにしていてください。さらに、又吉さんが選んでくれた小説2作をお題に、作った曲の披露をしたり、その文学についてのトークを行います。

異分野との交流を掲げスタートするFIELDS。初回のテーマに文学を掲げておきながらも、実はここ数年を振り返ると、僕自身は文学作品を読む機会が少なくなっていました。
目の前の切迫した現実に追いやられ、どちらかといえば社会情勢や経済的な書物ばかりを手に取るようになったのは、文学という立場がこの現代社会の中で劣勢だということを、僕自身が無意識に、いや、意識的に自分事として感じていたことの表れでなないだろかと思い当たったりもします。

そんな折、又吉さんの「火花」を手に取って読み始めたのですが、冒頭間も無く、かつて三島文学にどっぷりと浸かっていた心情が蘇ったのです。あぁ、好きな感じだ、、と。文学が与えてくれるものを懐かしい情緒として思い出したことが今回のイベントに至る経緯の発端としてあったのは間違いありませんが、火花の一節にある、(読んだことがある方にしかわかりませんが) 「楽しい地獄」という言葉が、これまでの全てを包括し、私的年表の中に文学の立場が再来したのを確かに感じました。

楽しい地獄、、、
そんな優しさと残酷さを、これまで嫌というほど感じてきましたが、そこに蓋をしなければ世界そのものは成り立たないのも事実。優しさの中の残酷さや、残酷の中に潜む優しさは、その蓋を開けようとする者にしか見えません。しかし文学はその蓋を軽々と開けてのけます。
その蓋の開け方のようなものが作風と言われるのかもしれませんが、僕は又吉さんの蓋の開け方が好きだなと思いました。笑いという視点でこそ開くことのできるアプローチにやられてしまいました。(もともとクラスの笑いを取ることが大好きな時代があった僕にとっては尚響きました。)時に笑いを許しの類で文学に昇華している様が、僕の少年から大人へと移り変わった歳月を、風通しの良い隔たりにしてくれたような気がします。

かつて、情景描写の巧みが持つ美しさに魅せられて、物語性よりもそこばかりを追いかけていた僕ですが、久しぶりにじっくりと文学へ向き合うと、自分が追いかけているものの変化を感じることができました。今の僕には、どうしても哲学が飛び込んでくるみたいで、それは面白い発見でした。そんな所にこれからの文学との向き合い方や楽しみを垣間見いています。

僕は父が小説家で、一般的には父親として落第者であるが故に、音楽や文学を好んではいるものの、所謂それにまつわる貧乏であることに非常な嫌悪感を抱いておりました。音楽で稼げなくて貧乏でいることは、許し難い行為であるがゆえ、青年時代から現在に至るまでの貴重な時間を、経済活動に費やしてきました。誠に中途半端な人生であったと振り返るばかりではあるのですが、中途半端なりにも培った哲学が、文字として自分事かのように記されてあるのを発見すると、許しを得たような、答え合わせをしているような気にさえなり、人生後半戦に差し掛かった者が文学に触れるとこんな作用が生まれるのかと自笑しています。

又吉さんの文学には、ところどころに哲学が散りばめられており、そこにも感銘を受けました。それはとても現代的で配慮に満ちていて、読み終わった時に、現実世界に焦点が合わなくなる事もなく、逆に視力が増すような心地がとても好きです。ただそれは僕の経験からなる視力であって、他の誰かも同じとは限りません。
文学には、それぞれに適したメガネの作用のようなものが潜んでいるのでしょうけど、ピントが合わないものと遭遇した時もまた、人の多様を知るきっかけにもなるはずです。

例えば、お題でいただいた田山花袋「蒲団」ですが、これには視力を奪うような作用があったりして笑、半日くらい現実がピンぼけしてしまいました。ピンぼけにもいろいろありますが、蒲団に見るボケを解釈すると、普段僕たちは真実というピントを、自己防衛として意図的にぼやかすようなことをしているので、そこにピントを合わせられてしまうと、日常のまやかしによるピントがボケてしまうわけです。蒲団恐るべしです。

いつの時代も作家は世界の蓋をこじ開けて、或いはそっと開けて、こちら側は自分勝手に視力を良くしたり悪くしたりするのだろうなと思います。

もう一作、芥川龍之介の短編「蜜柑」は、この世の危うさがそこに潜んでいることを感じ取ることができましたが、その危うさは結局どうすることも出来ない。どうする事も出来ないことがこの世にある事が存在する。そんな道徳的な印象を受けました。例えば争いの火種なども、些細な誤解やそれぞれの心象で生まれることの危険さ、仕方のなさも連想させられました。

この2つの作品の中にも、様々な視点が感じられるので、どんな曲にしようか模索しています。もしお時間があれば、この2作品を当日までに読んでいただけたら、イベントを更に楽しむことができるのではないでしょうか?

この間収録したPodcast収録も1時間ほど話し込んでしまったので、当日がどんな展開になるか、とても楽しみです。

その後も又吉さんの作品を全て拝読しましたが、文学と笑いの相性がとても良いこと、笑いが心をほぐして、シリアスにも哲学にも、温かみの表情が与えられるような心地良さを感じました。

ここまで取り留めもなく書き連ねてしまいましたが、まだ又吉さんの文学に触れていない方には是非お勧めします!

そして、5月27日を楽しみにしていてください。14日からは二人で話をしたPodcastも配信予定です。

そして僕自身、ちょっと驚きなのですが、バンドでの演奏は3年ぶりとなります。
この間リハーサルをした際に収録したバンドメンバーとのPodcastは公開中です。うっすらリハーサルの演奏をBGMにトークしておりますので、そちらもお楽しみいただければと思います。

【チケット受付】
https://puffin.zaiko.io/e/fields01

【FIELDS】
5月27日(金) 表参道 WALL&WALL
開場 18:00 / 開演 19:00
前売 4,500円 / 当日 5,000円
出演:笹倉慎介・又吉直樹
(笹倉慎介バンドセットBass 千葉広樹 / Drums Senoo Ricky)
【期間限定Podcast】
又吉直樹×笹倉慎介
☆打合せの様子公開☆5/14(土)~ライブ当日まで☆
https://anchor.fm/sasakura/

#又吉直樹
#笹倉慎介
#wallandwall






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