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はじめての4本マレット体験記

ぺるあんでは4回目となるオンラインコンサート、第9回駒場祭演奏会を、11月21日に公式YouTubeチャンネルにて公開しました!こちらでは、演奏会の準備の裏側を、団員たちの生の声とともにお届けしていきます。

第三弾は、今回の演奏会で披露する曲に奏者として参加するにあたり、「4本マレット」と呼ばれる鍵盤打楽器の奏法の中でもハイレベルな技にチャレンジした団員が、技術をマスターするまでの道のりを明かします。片手に2本ずつ計4本のマレットを同時に持ち、それぞれを自在に操って演奏できるようになるまでの団員オリジナル練習メニュー、お教えします……!

演奏会のアーカイブ公開はこちら▶▶▶第9回駒場祭演奏会

第一弾:演奏会制作サイドの影の工夫▶▶▶駒場祭演奏会ができるまで

第二弾:ぺるあん広報部の試行錯誤▶▶▶手探りのオンライン広報活動

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はじめに

 マリンバなどの鍵盤打楽器には、片手で2本ずつ、計4本のマレット(いわゆるバチのようなものです)を使って演奏する奏法があります(以下、4本マレットと呼びます)。他の人がやっている姿に憧れるけれど、いざ自分でやってみると上手くいかない、何かが違う、となることの多い奏法の一つです。

 中1で打楽器を初めて8年、筆者は「どうせ難しくてできないから」と4本マレットを極力避けつづけてきましたが、今回の駒場祭演奏会では様々な要因が重なり、2曲で4本マレットのパートを担当することになりました。そこで今回は、はじめて本格的に4本マレットを担当した体験記を書いていきたいと思います。


基礎練習開始 〜まずは2本の時と同じ動きを目指して〜

 ネットで4本の持ち方を確認して、いざ練習開始!といっても、いきなり4本全てを動かすわけではありません。まずは、4本のマレットを持ったまま、2本で演奏する時と同じように叩けることを目指します。片手に2本ずつ持っているのを、まずは1本ずつ自由に動かせるように練習していきます。それぞれの手に持っているマレットの外側同士、内側同士、右手外側・左手内側……と使うマレットの組み合わせを変えながら、スケールや跳躍などそれまで片手1本ずつのマレットでやっていた基礎練習を進めていきます。

 マレットを持つ場所がいつもと違ったり、使っていない方のマレットが一緒に動いたりするので、4本のうちの1本を自由に動かすのは一苦労です。内側と外側どちらのマレットを使うかによって叩きやすさが変わるので、正しい音を叩くことやテンポキープはもちろんのこと、音色を揃えることにも気を使う必要があります。自分の思った通りの音が出せないとイライラしてきますが、打楽器を始めた頃を思い出して根気強く練習しました。


片手で2本を動かそう 〜やっと4本らしくなってきた〜

 片手で1本ずつ動かせるようになったら、今度は片方の手で2本のマレットを使って演奏する練習に移ります。4本マレットと聞くと、ピアノの和音のように同時に叩く様子が印象的ですが、実際にはそれぞれ別々のタイミングで叩くことも多いです。また、マレットの動きがもう一本のマレットに影響されると、同じタイミングで叩くのも難しくなるので、2本のマレットを独立して動かせるようになることが重要です。

 最初は叩きやすい広さに開いて、メトロノームに合わせて八分音符を叩くことから始めました。これができたら開き具合やテンポを変えて、色々な条件で練習します。2本のマレットで別々に叩く、同時に叩く、どちらも繰り返し練習していくうちに、手が2本同時にコントロールすることを覚えていきます。慣れてくると、以前よりも和音が綺麗に叩けるようになったり、それぞれの手で別々に八分音符を叩いて、4本で十六分音符を演奏することができるようになったりと、成長を感じられて楽しくなります。


いよいよ曲に挑戦 〜指に優しくない4本マレット〜 

 ここまでの練習である程度動かせるようになったら、いよいよ曲に挑戦です(実際は充分に動かせるようになる前に合奏練習の日になってしまうので、曲練習と基礎練習を同時並行でやっていくことになります)。常に4本とも使うというわけではありませんが、途中でマレットを減らすタイミングがない時には曲中ずっと4本持って演奏します。2本で演奏できる部分も4本持って演奏する必要があり、通常時なら苦労しない部分であってもやりづらいと感じることがありました。

 しばらく4本マレットの曲を練習していると、指に痛みを感じることがありました。最初は力の入れすぎかなと思うのですが、練習を続けていると感じる頻度が高くなり、痛みも強くなって何事かと思い見てみると、人差し指に水脹れができて破れかけていました。中指とマレットを挟んでいる場所で、集中して練習しているうちに水脹れになってしまっていたようです。周りの人に聞いてみると、4本マレットをやってるとよくあることらしく、筆者はマレットが当たる場所に絆創膏を貼って保護していました。テーピングをするとマレットが滑らずもっといいらしいのですが、結局試さないまま終わってしまいました。テーピングを用意することを面倒くさがったので当然の結果ではありますが、勿体無いことをしたかなと思っています。

 4本マレットを想定しているパートなので、もちろん片手で2本持って使うことを前提にした楽譜になっているのですが、一番大変に感じたのは細かい音符の連続したリズムを片手の2本だけで叩く部分でした。楽譜通りに叩こうとするとどうしても二つ目の音が滑ったり、中途半端な音になったりしてしまいます。しかし筆者が担当していた楽譜では、二つ目の音に重きを置く必要があり、リズムと音質を両方とも保つのに四苦八苦していました。


収録を終えて 〜4本マレットの可能性は無限大〜

 今回、4本マレットに関してはほぼ初心者の状態から2曲収録に参加して、率直な感想は「人間必要に迫られればある程度はどうにかなるのか」というものでした。最初はどうなることかと思っていましたが、基礎練習や曲の練習を繰り返すうちに手が慣れてきて、2本の時よりもできることが増えて世界が広がるのを実感できました。また、他の団員が4本マレットでより複雑な楽譜をかっこよく叩いているのを見て、筆者ももっと4本マレットを練習して色んな曲をやってみようと心に決めた収録でした。


 今回の駒場祭演奏会では色々な曲で4本マレットが登場します。それぞれ少しずつ違った4本マレットらしさが現れる楽譜になっているので、みなさんにも4本マレットの持つ可能性を感じていただけるかと思います。
 その中でも筆者の一押しは『Catching Shadows』です。この曲では、4人の鍵盤打楽器奏者が全員4本のマレットを使って演奏します。特に2台のソロマリンバが本当に本当にかっこいいので、ぜひ注目してお聴きください。


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