誰かの選択肢を広げるため、自分を見せる。ー みかやん
株式会社TABIPPOが運営する、ニューノーマルトラベラーを育てる学校「POOLO」。今回お話を伺ったのは、POOLOのコースのひとつ「POOLO JOB」の1期生、みかやんさんです。
みかやんさんが生まれ育ったのは山間の小さな限界集落でした。高校卒業後には山での暮らしを飛び出し、フィリピンへ語学留学、アイルランドへワーキングホリデー、その後は6カ国を旅されています。19歳のときには、約800kmに及ぶ巡礼路である「サンティアゴ巡礼・フランス人の道」を、美しい景色や文化的な遺産を楽しみながら、約30日間かけて歩きます。
2023年9月からは新しい挑戦として台湾留学を予定している、みかやんさん。生きるテーマや、これからやりたいことについて伺いました。
自分は存在していないんじゃないかと感じた山での暮らし
—「山暮らしの窮屈さ」の反動のようなものから海外へ行かれたように感じましたが、海外に行くことを選んだ理由はなんだったのでしょうか?
私が暮らしていたのは、村人が多い時で15人くらいの秘境のような場所でした。地理的にも閉ざされた空間で、「世の中に置いていかれる」「実は自分は存在していないんじゃないか」みたいな焦りのようなものがあったことが大きいと思います。
もうひとつは、10人いるイトコの内6人はワーキングホリデーや海外留学の経験者だったので、海外へ行くことが特別なことではありませんでした。母親も30歳頃に仕事を辞めて、ニュージーランドへ行ってたこともあってか、大人になったら英語ってみんな喋れるようになると思っていたので、言語的なバリアもあまり感じていなかったのだと思います。
シンプルな自分になったサンティアゴ巡礼
— サンティアゴ巡礼で得たものはありましたか?
1日20km、多い時で50km歩く中で、本当にいろいろな人と出会いました。主婦や仕事の合間に数日間だけ歩いて帰ってを何年も繰り返している人、退職したことを機に歩くことにした人、ギャップイヤーで来ている学生さん。宿が一緒になったり、ご飯を一緒に食べたりすることもあるけど、大体の人とは挨拶をするだけ。
サンティアゴ巡礼に行く前の私はすごく人見知りで、ほとんど対人恐怖症のようでした。自意識過剰だった部分もあると思いますが、30日間で何百人と出会って、自分は何をそんなに気にしているんだろう、みんな違ってもいいんだ、十人十色って本当にあったんだ、みたいなことを体感をして、いちいち気にしているのが馬鹿馬鹿しくなったんだと思います。
歩き始めた時は、挨拶をするだけでもドキドキでした。でも、1週間ほどで緊張感も恐怖感も無くなっただけでなく、他の巡礼者との会話を楽しむ余裕まで出て、自分から話しかけれるようになりました。
そうやって多くの人と関わっていくうちに、世界は広くて、生き方も想像以上に多様で、日本だけが居場所ではないという考えになりました。
そして、歩いている間は1人の時間も長く、いろいろと考えていくことで、物事がどんどんシンプルになっていきました。
— この旅は今もみかやんさんに影響していますか?
影響していると思います。例えば、なにかを始めたり、新しいことに関心を持ったときに、ずっと日本にいると年齢や性別的なこと、世の中が求める大人、普通だと思っている大人の姿みたいなものに自分も引っ張られてしまいます。
そういうのもあって、始めるときに怖かったり、変と言われるのかなと考えてしまう。心理的なワンステップがあるけど、サンティアゴでいろいろな大人の姿を見て、話を聞いて、なんでもやっていいと実感したから、自分の好きなことができていると思います。
移動するのは閉塞感から解放されるため
— みかやんさんが移動する理由、旅する理由はどんなことがありますか?
移動が好きというより、一箇所にずっと住めない。限界集落の生活の反動で、同じ場所にいると、都会でもすごく閉塞感を感じてしまって、そこから動けなくなっていきそうとか、ちょっと惰性になってないかなってすごく考えるんです。
どちらかというとポジティブじゃなくて、恐怖心から来ている行動だと思います。結果、移動した先でそれぞれ自分にとって必要な出会いがあったので、そういうのも含めて全部いいご縁だったと思っています。
— どちらかと言えばネガティブな理由から移動しているとのことですが、今後、一箇所に留まりたいという気持ちはありますか?
ぼちぼち、あります。日本に帰ってきてからの5〜6年の間に7〜8回引っ越しをしていて、ちょっと疲れてきました。移動だけだったらいいんですけど、ネックは荷物です。
みんなが自分を大事にできる場をつくる
2023年9月から予定している台湾留学では、留学中の生活や車いすユーザー、子連れの方にも役立つ旅の情報発信を考えているという、みかやんさん。
— 車いすユーザーの有益な旅を考えた理由はなんでしょうか?
「せっかく台湾へ行くなら、なにか情報発信をしたい。他の人がしてないけど必要な情報ってなんだろう」と考えた時に、前職の車いすユーザーの介助の仕事で、移動のバリアが引っかかっていたことを思い出しました。
理想は、情報発信をしなくてもよい世界になること。
でも実際は、駅にエレベーターもなければ駅員さんがいないこともある。車いすユーザーの友人に、「障害者が生きやすい社会って、みんなが生きやすい社会なんだよ」と言われました。
まさにそうで、車いすユーザーの人が移動しやすい社会は、高齢者や子連れの方にとっても移動しやすくなります。でも車いすの種類もいろいろあるし、私はまだ車いすユーザーではありません。
なので、今考えているのは車いすユーザーである友達との、関係性。介助者と利用者という立場を超えた関係性も含めて、一緒に行った場所やお互いに話したことを共有したいですね。
それは、介助者制度を利用している車いすユーザーの方にとっても、いわいる“健常者”とされる人たちにとっても、お互いの思い込まされている何かから自由になる、そんなことをみんなと考えていきたいと思っています。
— 理想のライフスタイルやイメージしている今後の自分などはありますか?
土地的な部分で言うと、今のところは、海沿いで暖かいところで、自分の畑も持っていたい。あとは、近くに信頼できる農家さんがいる場所に住みたいです。
— 特定の場所ではなく、自分が求めているものを満たすことが出来れば、どこでもいいですか?
そうですね。あんまり考えていないんですよ。でも、自分が求めているものを満たすことが出来ることが一番大事だと思っています。
— 海沿いで暖かいところ、自分の畑を持つこと、信頼できる農家さんが近くにいること、という希望の中でやりたいことはありますか? 例えば、仕事やどういう生活をしていきたいとか。
今のところ、台湾での生活がどうなるか分からないんですけど、若石神父が考案した足部反射健康法を身につけて、みんながもっと自分の身体を大事にする機会、場所を作りたいと思っています。
社会的な期待と自分の価値観のズレからくる生きづらさ
コンプレックスは「生きづらさ」というみかやんさん。そこから考えたテーマ、やりたいことは「同世代のエンパワーメント」「人生の選択肢は無限大」「生きる場所は自分で選んでいい」という3つでした。
— これまでのお話を伺ってきて、みかやんさんは「周りと合わせないといけない」というところから、生きづらさを感じているように思いました。具体的には、どんなことに生きづらさを感じていますか?
例えば学歴です。私は高卒ですが、大学で勉強したいこともない、お金ももったいないと、当時大学へ行かなかったことについて、いい選択をしたとは思っています。だけど、周りは大学に進学していて、学歴社会でもあるところからコンプレックスは、いつの間にか感じていました。
社会が求める大人の姿とのズレみたいなところをすごく感じ取ってしまって、いくら自分軸があると言っても、余裕がなくなると引っ張られてしまいます。
— 「同世代のエンパワーメント」「人生の選択肢は無限大」「生きる場所は自分で選んでいい」という3つのテーマについて教えて下さい。
同世代のエンパワーメントはやっていきたいというか、自分もされたいし大事なことだと思っていますが、すごく難しい。
— 具体的な行動は決まっていますか?
まだまとまっていなくて、自分が行動して、いろいろなところに住みながら、なにかに挑戦したりしたい。
年を重ねるにつれて、小さい頃から大人が「君は若いしまだ子供だから」とか、20代の今でも「まだ若いから何でもできるよ」、自分はもうおじさん、おばさんだからと言う人が多い。
私もそれを聞いて、いつも「年齢は関係ないでしょ」と思っていたけど、言葉は自分の中に積もっていって、好き嫌いとは関係なく、自分の知らないところでそういう感覚が身についてしまう。
そういうところから、私も自由になりたいし、なろうとしてるし、同じように感じてる人もいるはずだから、そこに向けて発信していきたい。
— 「みかやんさんもやっているから自分もできるかも」というひとつの例のような感じでしょうか?
そうです。人生の選択肢は無限大というところで、いろいろな人にインタビューして、こういうアホな人もいるよ、こんな面白い人もいるよっていう、一般的じゃない大人たちにインタビューしたいですね。それが、生きづらさからの解放にも繋がると思っています。
生きる場所も、自分みたいな超田舎とか、大きな会社とか、大きくても小さくてもいつの間にかそこだけが自分だけの居場所になって、そこを基準に自分はこれができるできないっていつの間にか考えるようになってしまいますよね。
本人のせいではないけど、そう思わされてしまう感覚。私はそれがすごく辛いなと思っていた時期があるので、自分が選んで別のところに行ってもいいし、会社を離れる離れないも自分で決めていいという、自己決定権みたいなことや、こういうことをやってる人もいるよという、ひとつの例で自分を見せていきたいです。
インタビューを終えて
初めてお会いしたときの「自分が大切にしたいものを大切にしたい」という言葉が印象に残っています。自身の経験から誰かの選択肢を広げるため、みかやんさんは自分の姿を見せることを選びました。今を変えたいと望む人にとって、みかやんさんの姿は選択肢のひとつ。これからのみかやんさんが見せる”自分”がますます楽しみです。
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