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【読書感想文】『真ん中の子どもたち』温又柔

温又柔さんの作品は2冊目。今回読んだこちらは2017年に出版されたようです。
以前読んだのは、2020年度に出版されたもので、「真ん中の子どもたち」より後なんだね。たしかに魯肉飯よりもフレッシュな感じがしたかも!

自分はどっちの作品も好きだったな。
作者自身も調べてないので詳しくはわからないけど、作品や名前から察するに台湾にルーツがある人。

どのくらいどの国籍の血が入っているから、どこで生まれたから、この言語が流暢に話せるから、戸籍上は○○人だから・・・外から見える情報だけでは線引きできない曖昧なもの。

迷いなく「自分はこういう者です」と言い切れる人とそうじゃない人。
今までは「こういう者だ」と思っていたのに、本当にそうなのか?と揺らいでしまう人。

誰かにとっては、たったそれだけのこと、なのかもしれないけど、きっと誰かにとっては人生をかけて考え抜かなければならない命題。
温さんの物語は、そのひとにとっての深刻さで、言葉を尽くして書いてくれるから好きなんだと思う。

何かについて語る時、「そんなことよりも、もっと話すべきことがある」「明日食べることに悩む人もいる」みたいな声が、飛んでくることがしばしばある気がするんだけど、それで人から語ることを取り上げたらけっきょくいつかは自分も苦しむことになる気がするなぁ。
(まあ、自分も○○歳のひとの悩みを聞いて、そのへんはもう10代で経験しておいてよ・・・勘弁してくれと感じることもあるんだけど・・・)

自分の想像できないところでのアイデンティティの獲得(という言葉でまとめていいかはわからないけど)についての物語を読むのは自分は面白い。

ほかの作品も読んでみようかなーと思える作家さんでした。
中高時代の台湾出身の同級生のことも思い出した。どうしてあの頃台湾のこと、調べようと思わなかったのかな。自分自身も幼くて不安定だったから、他人の世界に興味を持てなかったのかもなぁ。台湾のこと、知りたくなった。

2024年5月6日 読了


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