インストラクショナルデザイン学習記録⑦


鈴木克明先生著の「教材設計マニュアル:独学を支援するために」を中心にインストラクショナルデザイン(ID)の学習をしようと思います。
数学は独学で学べる部分が多いので、教材の力だけでどこまでできるのか知りたいと思ったからです。また、youtubeを活用した動画教材の開発をしており、そのクオリティを上げるためにIDの勉強が不可欠だと思ったので、今回の学習にいたりました。
また、このnoteは「教材設計マニュアル」をまさに独学で学習した際のレポートでもあります。引用はありますが、ほとんどすべて自分のことばでまとめていきます。
【感想】は最後に。それ以外は、私のための学習記録です。


【教え方の作戦をたてる】

教え方のノウハウを学習心理学を中心に紹介します。

①ガニェの9教授事象
②導入ー展開ーまとめ
③チャンク

【①ガニェの9教授事象】

ガニェの9教授事象とは、「人の学びのプロセス」をさかのぼって分析したものです。学びのプロセスとは、人が新しい知識や技術を習得する過程のことです。その過程の中で、他者(教師や親)からの介入がどのような効果を与えるかを、ガニェは研究しました。
効果的な介入を、「学習プロセスへの支援」と呼びます。

実践と理論の両面から調べたガニェは、9つの支援の枠組みにまとめました。こえを「9教授事象」と呼びます。
以下の表は、9教授事象をもとに小学生に長方形の面積について教える場合を例にしています。(検索した画像です)



【導入ー展開ーまとめ】

導入
授業や教材の導入は事象1~3にあたります。ここで重要なことは、
「教材に注目させる」、「ゴールを知らせる」、「既習事項を思い出させる」ことです。この授業(50分)でどこまでやればいいの?(ゴール)、何を使って解決するの?道具はなに?(既習事項の確認)をきちんと生徒に伝えることが導入です。これらが示されていないと、効果的な授業ではなくなります。

展開
導入のあとは本論にすすみます。これは事象4~7にあたります。
ここで重要なことは、「新しいことを組み込む作業(インプット)」と「いったん組み込まれたものを正しい道順で引き出す癖をつける作業(アウトプット)」が大切になります。
教材や教師の役割は、新しい情報を意味のあるまとまり(クラスターに分ける)を示したり、練習の機会を与えることです。
認知技能(数学など)ならば、応用する練習の機会が必要です。例えば、数値を変えたり違う状況を設定したりなどです。

また、事象7にあるように教師からのフィードバックも重要です。練習した内容が正しいのか正しくないのか、助言をします。
ここでは、失敗した場合もせめてはいけません。あくまで練習することが目的ですから「安心して失敗できる環境」を用意しましょう。

まとめ
授業の締めくくりはまとめです。これは事象8,9にあたります。ここで重要なのは、学習の成果を評価し、復習の機会をつくることです。
評価については、事象6の練習とは分けて考えましょう。練習は失敗から学ぶものですが、評価については、ゴールに達したか達していないかです。評価を行う場では、安心して失敗できるという環境は効果的ではありません。評価のためのテストに向けて緊張感を高めることも支援の一つです。

また、忘れたころに復習する機会を用意しましょう。(事象9:保持と転移を高める)


【チャンク】

チャンクとは、新しい内容を「説明→練習→確認」するためのひとまとまりのことを言います。(Chunk, 塊, 区切り)
単純にいうと、スモールステップのことです。ガニェの9教授事象にそって行うと情報量が多すぎる場合があります。内容をチャンクに分けて、その内容ごとに練習→確認をすることが効果的です。

ひとつ前の記事で書いた、「課題分析」をもとにチャンクを作成するのがいいでしょう。
チャンクの最小単位は1です。この場合、ゴールまでの道のりを、9教授事象にそって1回で習得させることになります。ただ、チャンクが1の場合は課題分析した意味がないので、複数のチャンクを設けましょう。



【感想】

教員の教え方には、個性がでます。まったく同じ手順、同じ内容を教えてもそこには不思議と何かしらの差が生まれます。
その差は、「ベテランの感覚」だったり、「教員の人柄」だったり、予備校ならば「カリスマ性」と呼ばれるものでしょう。

私も教員になりたてのころは、生徒に魅力的に映るベテランを目指していました。尊敬できる先生の言うことを聞いていれば、自分もそうなれる、と思っていました。
ただし、ベテラン教員の本当の力は、暗黙知になっている部分があります。長い教員経験をもとに第六感的スキルと認識されがちです。
本当はそんなことはありません、というのが私の立場です。


隠された力だったり、長い年月をかけないと身につかない力ではありません。効率よく学べば、若手だってベテランに近づけるはずです。
学習心理学や教育工学をきちんと学ぶことで、ベテランとの差を短期間で埋められるはず。

自分が学生のころに、教育工学にもっと興味をもてばよかったと反省中です。

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