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ぼくの株の話 part7
怨念が浄化される金額を手にした時、人は弱くなる。
もうスーパーサイヤ人にはなれないんです。
前回
〇株中毒
ラッキーで震災を乗り切った僕はまたしても調子に乗っていた。自分はやれると心から思っていた。思えばだがこの頃が株は一番楽しかったように思う。株に勝てるようになって資産の増加にある程度確信を持ててきて、且つ給料と同じかそれ以上の速度で増える資産。楽しくないわけがなかった。まるで石仮面をかぶったD〇Oのように全能感に包まれていた。
俺は貧乏人をやめるぞぉぉぉ!ジョジョーーーーッ!!!!!
当時自分の給料はもろもろいれても500万そこそこだった。田舎暮らしでお金の使い道などなく、酒もたばこもやらない僕は給料のあまりのすべてを株に突っ込んでいたが、そういう日々が辛いということは全くなく、雪だるま式に増えていく口座のお金の与えてくれる興奮は酒やたばこ以上に僕を陶酔させていた。次はどの株を買ってやろうか。仕事から帰れば株のことばかりを考えていたし、それが楽しくて仕方がなかった。そしてやはり僕は1億に行ける人間だと思った。株で1億稼ぐ、そんな夢みたいな話を実現させることができると。そして会社で給料が安いと愚痴って、日々を漫然と過ごしている上司みたいな人間とは違うのだと、そう思った。
〇絶対許さないリストNo.1ー君の名は?坂〇幸〇
そんな絶好調の僕はある株に目を付けた。その会社はエルピーダメモリと言って、DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)の開発・設計から製造・販売まで一貫して行う国内唯一の専業メーカーであった。元々は日立とNECの目盛り部門が整理統合してこの会社となったわけだが、元々韓国勢に押されて劣勢だったうえにリーマンショック後の不況も重なって(確か当時のDRAMは採算ラインを割ったような価格で値段が推移していた)相対的に体力のないエルピーダメモリのような会社はお金が高速で溶けて行ってるようなありさまだった。一度2009年にも経営危機が訪れて、日本政策投資銀行とその他の銀行からの多額の融資を受けたものの、2012年にはまたお金がありませんもう死にます、といったような状況だった。
僕はここで考えた。確かにどう考えてもこのままいけば死ぬが、既に政府もそれに追従した、させられた銀行も相当なお金を突っ込んでいるのだ。今更後に引けるだろうか?と・・・。しかもこのサイズ(時価総額)、そして何よりも国内唯一のDRAMメーカーという地位、助けないはずはない。考えれば考えるほど政府による救済があるという確信が深まっていった。そう考えた僕は勝負に出た。2012年の2月頭くらいに資金の4分の1ほどをエルピーダメモリを買ったのだ。その時の株価はだいたい350円前後だったと思う。もし政府の救済が決まれば間違いなく倍くらいにはな労だろうと思っていた。そう思っていた・・・。
そこからほどなくしていよいよ救済が決まりそうだというニュースが聞こえてくるようになって、僕はひそかにほくそえんでいた。そりゃ助けるだろうと。国内唯一だぜ?もうおまえら(銀行など)も後には引けないだろうよ。さらにはマイクロンと経営統合だ、アップルがお金を出すとか出さないとかまで話が聞こえてきて僕はもう勝利を確信していた。1000億か2000億かどんと金を出してくれよと。そして俺を儲けさせてくれ。そんな風に考えながらそのニュースを眺めていた。そして某日に定款を変更して発行株式数の上限高を引き上げるだとかいう話が聞こえてきていよいよだなと僕は思った。2か月で倍かー、もっと行くかもなぁ。いやー儲かっちゃいうなぁ。己の才能が恐ろしいよ。ほんと株よありがとう。政府よありがとう。そして社長の坂〇さんありがとう。がんばったよね。俺のために頑張ってくれてありがとう。そう思っていてその翌日に取締役会だかが延期になったというニュースが流れた。そしてエルピーダメモリはつぶれた。
はぁあああああああああああああああああぁあ?はぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ?????
ええ?ええええぇぇぇえええ????ええええ?まじ???なんで?つぶれたって何?アップルは?!マイクロンはどうなったの?!
社長、ていうか坂本いけるって言ってたやん?いけるって言ったよね!?逝けるだったの・・・ねえなんなの・・・・。
どうなってんだよ・・・・ねえ俺の株は、俺の金はどうなんの・・・・。まじでまじで・・・・。
そうエルピーダメモリはつぶれた。どんなに僕が嘆こうともその思いは届かない。現実は非情である。株価はその翌日に10円以下になった。そして僕は一瞬にして資産の4分の1を消し飛ばしてしまった・・・。
*当時のエルピーダメモリのチャート
僕は翌日文房具屋に行った。そして黒い表紙のちょっと立派な手帳を買ってこう書いた。
絶対許さないリスト
1.坂〇幸〇
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