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ぼくの株の話 part4

前回


〇前回までのあらすじ

 自分の中に眠る古代の勇者の力に目覚め、異界からの侵略者から辛くも地球の危機を救った僕。だがそれは次なる驚異の序章に過ぎなかった・・・じゃなくて普通に騙されてお金取られまくっただけでした・・・。

 お金返して・・・。

〇人生で大切なことはすべてネットゲームが教えてくれた

 相場は無情である。どれだけお金を返してほしいと叫んでも返してくれないどころか大体さらに奪っていく。株で損をしてFXを損をして、さらにその後に楽して儲けようとして詐欺にあう、典型的なダメ人間の末路をたどった当時の僕ではあったが、悲壮感のようなものはなかったし、漠然といつかは勝てるだろうという確信に近いものを感じていた。それは決して根拠のあるものではなかったが、僕は人生において自分でできると感じたことは人生でできなかったことは一度もなかったし、今回もそうであろうと感じていた。言葉にするとうぬぼれの強い間抜け野郎に聞こえると思うが、要するに自分の能力を正確に把握しているということだと自分では思っていた。株で一億儲けれるとは思うが、ボクシングを始めてマイクタイソンに勝てるとは思わないし、研究分野でノーベル賞を取れるとは全く思わない、そんな感じだった。

 散々馬鹿をやった僕であったが、勝つためにはどうしたらいいかという道筋について遠回りしたとも思っていなかった。自分は凡人であるから経験からしか学べないのである。だから失敗は必要経費なのだ。間違いない。そう考えなければやっていられないとかじゃないんだからね!

 昔から僕はゲームが好きで、当時はネットゲームの全盛期だった。僕はウルティマオンライン(以下UO)というゲームにめちゃくちゃはまり6年くらいプレイし続けた。簡単に特徴を説明すると強いプレイヤーは何でも奪えるゲームだった。強い武器をそろえて強い仲間と組み、弱い人間から奪い、芽を摘むことができるゲームだった(資本主義の説明ではありません)。とにかく自分はそのゲームが大好きだった。始めた当初はまだ日本にあまりネットゲームが普及していなくてそのプレイヤーの多くが外国人だった。ブラジル人、韓国人、シンガポール人そんな感じだった。あふれだすわくわくを胸にそのゲームを初めてやった僕、純粋で愛らしい中学生だった僕は開始3分で殺されて身ぐるみを剝がされた。僕は感動した。なんてすごいことなんだと、これまでの日本のゲームのように無理やり魔王退治させられなくていい、強制労働の奴隷勇者の役割をこなさないでいいというのは革新的なことの様に感じた。

 余談ではあるがドラ〇エはひどい設定である。子供一人を呼び出して1週間くらいの生活資金と棒きれを渡して、お前は勇者だから魔王を倒して来いと告げるわけだから、客観的に見て完全に要らない人間を棄民してるだけである。権限を与えずにムチャぶりをする上司である。超スーパーブラック職場である。僕が勇者なら、その場では承諾をして絶対逃げる。

 話を戻すが僕はやはり3分で身ぐるみを剥がされても、これっぽっちもそのゲームをやめようと思わなかったし、辛いとは思わなかった。そこで僕が感じたことは早く強くなりたい、である。UOの話をしているとそれだけで小説一冊分書けてしまうので端折るが最終的に僕は強くなった。自分自身もうまくなり、キャラを育て、強い武器を手に入れ、強い仲間を組織した。そして下手くそどもから奪いに奪った。僕が魔王となった。そして最後はそのゲームはほとんど誰もいなくなってしまった。殺し過ぎた・・・・。魔王としての僕はESG、SDGsを考えていなかった。環境、社会、統治そして持続的な発展。そう考えるとESG、SDGsって大切かもしれないな。何でも奪い過ぎはよくない。弱者は適度に刈り取り、その後はまたある程度育つまで待たなければならない。持続可能な収奪こそが資本主義の真骨頂である(ちなみにその収奪したアイテムを売って得たお金は相場でなくなった。魔王は別世界に転生したらただのモブであった)。

 要するに自分は本質的にゲームの攻略法を知っていた。大切なことはすべてネットゲームで学んでいた。今回強くするキャラはゲームのキャラではなく自分自身であるというだけであった。ゲームのキャラほど才能は公平ではないという致命的な違いに目を瞑れば、これまで通りやれば間違いなく最終的には勝てるということである。少なくとも自分ではそう確信していたし、そうでなければ未来の一億円のために若く貴重な時間を費やすことなどできようはずもなかった(株のために費やした当時の時間はお金がある程度増えた今ですら釣り合っているかどうか正直確信が持てない。それほど若い時の時間は貴重であったと思う)。

 そういうわけで僕は死に物狂いで勉強をした。まさに寝食を惜しんでというレベルで。平日は仕事から帰ってきてから寝るまでの5時間、休日は丸一日ひたすら勉強をした。まさに精神と時の部屋である。PER、PBR、損益計算書に貸借対照表など書いてあることのほとんどはわからなかったものの徐々に理解できるようになっていった。そうこうして精神と時の部屋で数か月が過ぎたころ僕は株取引を再開した。僕はスーパーサイヤ人ではなく、バリュー投資家Lv3(最高レベル99)となっていた・・・。

次の話

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