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行き詰まった時に、役に立ったのはだいたい「勉強」だった


尊敬している精神科医の先生から、著書の講評をいただいた。
めちゃうれしかった。


メンタルクエストの中にも書いたんだけど、ドラゴンクエストには「悟りの書」というアイテムがある。
それを使えばすべてを知る「賢者」に転職できるというものなんだけど、めったにお目にかかれないレアアイテムだ。


それになぞらえて、自分の拙い知識と経験では伝えきれない部分を、より深く理解できる素晴らしいおすすめ本やコンテンツを「現代の悟りの書」というタイトルで、著書の中でいくつか紹介した。


ゲームの世界だと、それひとつ手に入れるだけで戦況がひっくり返り、ゲームの難易度が大きく下がる「神アイテム」みたいものがある。
(「けんじゃのいし」とか「たたかいのドラム」とかがそうだね)



現実の世界ではそんなものにお目にかかれることは滅多にない。
ただ、何かひとつの「知識」や「考え方」を得ることをきっかけに、世界が変わりはじめることがある。

たとえば、その道に人生を懸けた専門家の知性の結晶のような本がそうだ。

崔先生のこの本に出会ったのは、あるクライアントさんとの関わりがうまくいかなくて苦しんでいる時だった。



「なんとかしたい」と思って必死で関わったとしても、力量が足りないので、全然うまくいかない。

(今となっては、その関わり方が互いの「境界線」を大きく踏み越えた関わりだったんだけど、その時は必死だからなかなか気づきもしない)

こっちの関わり方が悪いのかなとおもっていろいろ考えてトライするけど、どうもうまくいかない。

コミュニケーションが荒っぽくなっていって疲弊していくんだけど、自分がコミットしている相手の言動が理解できないのは、かなり堪えるものだ。


そういう「行き詰まり」を感じた時に、まずぼくが疑うのは自分の知識の足りなさであり、それに対する対処法はひたすら「勉強すること」だった。(根が真面目w)


なんとか事態を打開するヒントはないものかと、すがる想いで本やら論文やらコラムを読んだりする。
で、そういう時に、ふと道が開ける考え方に出会えるものだからおもしろいんだよね。

先生の本に出会えたおかげで、相手の考え方や言動の根底にある苦しみがすこし理解できたので、感じるしんどさも減った。


そんな時に書いたnoteがこれだ。


それと同時に、相手を本当に大切にするためには、まず自分の側にもしっかりとした境界をひくことが必要であることを知った。

やっぱり専門家はすごい。半端ない。

"「専門家」とは非常に狭い分野で、ありとあらゆる失敗を重ねてきた人間のことである" 


物理学者のボーアの名言。僕の大好きな言葉でもある。
(専門性を高めるには、失敗が必要なのだよね。まだまだ足りない。)


もちろん、知識として知っているということと、それを自分の実践の中で血肉にしていくことには大きな隔たりがある。

でも、頭の中で「目指すべきモデル」のようなものあると、やみくもにやるよりも筋がよく動けるし、学びも多いものだ。

その道のプロフェッショナルが人生をかけて失敗しまくってきた知見を無限にヒントにできるわけだから、ミリオネアのライフラインよりも頼もしいよ。

「勉強」というのは、生きるための手段なんだなあということを、学校を出てしばらくしてから学んだね。

自分のための勉強はいいよ。
手っ取り早く自分を好きになる手段にもなり得るし。

なんでもいいけど、自分のために何かを「積み重ねること」ができたら、その積み重ねたものを通して、自分に愛着が湧いてくることもあると思うんだよね。



自分の著書をなるべくライトでポップな本にしたかったのは、こういう素晴らしい本につなぐための交通整理をしたかったというのもあるんだよね。

単発でひっくり返すことは難しくても、うしろに歴戦の猛者がまだまだ控えている。

そういう、コンボの一発目の「飛び横蹴り」のような役割が担えればまずは十分だとおもっている。

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話がそれたけど、崔先生の本との出会いがなければ、この「メンタル・クエスト」は今の内容ではなかったと思う。


自分の感情が制御できずに愛する人を攻撃してしまったり、逆に愛する人から苛烈に責められたりして苦しんでいる人は多いだろう。


でも、そういう状態に至る正当な理由があることは知ることは、ものすごく大きな価値がある。

・感情が爆発してしまう人、激昂してしまう人
・自分のことを徹底的に攻撃してしまう人
・自分のことを支える大切な人を攻撃してしまう人
・「見捨てられること」への不安がものすごく強い人

・そういう相手を支える立場の人


上記にあてはまるような人たちに、この本をぜひ読んでほしいなと心から思う。


最後に、崔先生からいただいたコメントを、許可をいただいてここで紹介します。

「メンタル・クエスト」鈴木裕介著
鈴木先生から、素敵なご著書をご恵投いただきました。

ポップな装丁や書面デザインから想像できないほど、内容が盛りだくさんで、愛着理論、認知心理学、ストレスコーピング、大脳生理学など極めて多角的な土台の上に、「生きづらさ・人生ハードモード」に立ち向かうことを応援している素晴らしい一冊です。

その土台の上に散りばめられた、幅広いさまざまな人の印象的な言葉の引用や、著者自身の短くもピリリと引き締まったフレーズが非常に効きます。引用は人文系の名著、アニメ、JPOPから、「誰やねん」とツッコミたくなる先生のご友人まで!(それがまたいい。太田尚樹さんの「みんな違って、みんなキショい」は明日から臨床ですぐ使おうと思いました)多岐にわたります。

私個人は「分人主義」という言葉が勉強になりました。特に日本人に当てはまりやすいかもしれません。メンタライゼーションの創始者Fonagyは個人的会話の中で、「日本人はpretend modeが強いように見える」と表現しましたが、これを「分人主義」とラベリングするととても納得するものがあります。

「理想化」「見捨てられ不安」の項では、拙著「メンタライゼーションでガイドする外傷的育ち」から「100%幻想」「試し行動嗜癖」「外傷的育ち」等たくさん引用していただきました。「100%幻想」は私の造語ですが、最近は多くの若手精神科医や当事者がこの言葉を日常的に使っています。本作で鈴木先生が「100%幻想」の話題をこれだけ膨らませてくれたので、これからBPDの生きづらさの一つを表現する言葉としてますます人口に膾炙するかもしれません。

そして最後に・・・
あとがきを読んで、タイトル「メンタル・クエスト」に込められた著者の思い(トラウマと言ってよいと思います)に触れ、これだけの内容の本を世に出した著者のエネルギーの源が何かを知ります。ある意味ではこのご本は著者自身の「メンタル・クエスト」なのだと知り、ますますこの著書の重みを感じるのです。内容に負けず劣らず、著者のこの思いが、読む人の心を温かく、強くするだろうと思いました。


先生、本当にありがとうございました。

ワークショップ、楽しみにしております。

いつも読んでくれてありがとうございます。 文章を読んでもらって、サポートをいただけることは本当に嬉しいです。