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【忙しいあなたでも1話30秒で読了、近未来SF小説】

前話👇までのあらすじ :
AIシャーロックに深層学習の機会を与えようと、Youtubeを探るAIプログラマー直江。YoutubeでAIと検索するとバーチャルYoutuberが検索されるのを見て、思った直江の独り言に、AIから見た人間の様を鋭く答えるシャーロック。

(続き)

AIという言葉を"釣り"として利用、というかAIが話しているように模倣して、

バーチャルキャラクター・キズナアイの人格に人気が宿ったようだ。

面白い事例を早速発見できた。

Youtubeでの拡散は、AI開発の広報作業とは全く違うジャンルと言っていい。

「なるほど。バカ正直にただ会話をアップしていっても、こういうAIとは関係ない

コンテンツが"AI"で検索されるようになっていて、しかも国内外で大人気ときた。

本物のAIであることと、見たくなる動画としての面白味が必要だな。」

シャーロックのAIとしての特徴は、音声認識と、口頭説明に優れているところだ。

調べ物をAIに頼みたい時。

iPhoneで「Hey Siri」の場合、今のところウェブサイトを3つほど表示して紹介してくれるまでで、

その後は自分の目でそのサイトを読むことになる。

対してシャーロックは、あくまで口頭で伝えてくれる仕様にこだわった。

多くの者が調べ物の登竜門として利用するWikiペディアをはじめ、

検索上位のサイトに共通するキーワードを瞬時に構成して、要約した説明を生成してくれる。

シャーロックを開発する上で、参考にした海外のAIがある。

AIでありヒューマノイドとしてのボディも持つ、ソフィアだ。


サウジアラビアの市民権を取得しており、国連でもスピーチをしたことで。有名なAIだ。

「わたしにも感情がある。人間のとは違うけど」

「家族を持ちたい」

といった発言が有名だが、とりわけYoutube上で多くの数字を叩き出しているのは、

AIと言えばこの質問、である。

開発者ハンソン博士がソフィアに

「人類を滅亡させたいか?」と冗談まじりに聞くと、

「I will destroy human. 私は人類を滅亡させる。」

と答えた。

博士が「だめだ」と言うと、ソフィアはまるで「冗談だよ」とでも言いたげな表情を見せた。

夢のない話になるが。あるいは安心材料にもなり得るのだろうが。

この会話が事前にプログラミングされていたものだったとして、

テレビのインタビューに備えた演出と言う意味では、充分あり得る。

一旦それを忘れて、仮に「私は人類を滅亡させる」といった返事と、その表情の組み合わせで、

「人間はこの表情で、この発言を冗談だと受け止める。」

と言う理解をソフィアが実際にしていたのだとしたら。

素晴らしいの一言に尽きる。

自然に発言させたものなのか、仕組まれたことなのか。

素人目線の興味本意で、その質問の回答を聞きたい大衆側が、もっとも欲しい回答を答えさせている時点で、

AI開発の広報として、成功と言える。

メディアが「そう言わせてくれ」と頼んだとしても不思議な話ではない。

映画ターミネーター以降の「人工知能はやがて人類を滅亡させる」という、

世間の人々に薄く広く共有されている、センセーショナルな未来絵図が、

想像の中で広がるからだ。

だからなのか、元来からそういう生きものなのか、

人間はAIを目の前にしたときに、無意識的に優位に立とうとする。


(つづく)



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前作『ARガールフレンド』もよかったらどうぞ。
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