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【忙しいあなたでも1話30秒で読了できる現代SF小説】

中長編小説としての1つのメッセージングに向かいながらも、1話毎に個別のメタファーを埋め込む実験作。通りすがったあなたの口元の端っこにだけでもニヤリを届けたい。

前話👇までのあらすじ :
AIシャーロックからの「他の動物と違ってなぜ人間だけがおかしな倫理観で素直に性欲に従わないのか」という問いに戸惑いながらも答える直江。人間がいかに無意識的な行為に支配されていることか。

(続き)

直江はそこで録画を終えた。

Youtubeにアップし、ブラウザを閉じようとしたその時。

ふと前回の動画「AIがシンギュラリティを語ってみた」の数字がいつの間にか増えているのが目に入った。

上げて半日ぐらいで250再生だったのが、1000弱ほどに伸びていた。

そしてコメントも数件入っていた。

「人間が判断してきた結果こんな世の中になっちゃってんだから、AIに管理してもらった方がマシになると思うけど.....」

これはおそらく

このまま人工知能が発達していき、その効率性が人間の生活を豊かにすることは望むが、AIが人間を管理する側に立つまでは望んでいない。...

というシャーロックの言葉を聞いての反応だろう。


他にもあった。

「ってか、こんな話し相手欲しいんだけどっ!」

直江はこのコメントにピンときた。


「(何とか、視聴者と交流させる方法はないものか....。)」


翌日、直江は早速YouTube Liveの存在を発見した。

「これならリアルタイムに質問を受け付けることができるのか。

質問者が多ければ多いほど、多角的に思考できて良いはず。」

しかもYoutube Liveであれば、配信しながら、最終的にその動画全編を残しておくことができる。

「(どうせ大した編集をしているわけでもないし。会話の様子をただアップするだけなら楽だな。)」

そう思った直江は、早速今夜のラフシナリオを書き始めた。

やはり、数字が上がることは発信者にとって、次の手を考える上で糧になる。

有名でも誰でもないただの一般人の自分が、見ず知らずのどこかの人からコメントで反応してもらえることの喜びは、今の時代ならではだ。

もともと直江は、シャーロックと自分との2人だけの会話をアップすることよりも、

早く視聴者との相互交流に発展させたかった。

その方がシャーロックにとっての学びの機会は何倍にも膨れ上がるからである。

AI技術の流出を恐れて、密室の研究室で毎日同じ顔の研究員から似たような質疑応答ばかりしていては、

いつまでたってもappleやGoogleなどのデータ量には敵わない。

AI研究そのものをオープンソースにする直江の狙いは、視聴者との交流にあったのだ。


「シャーロック。」

「ヴゥン♪」

「やあ直江君。何か御用かな?」

「今日はYoutube Liveに挑戦してみようと思っているんだ。」

「なるほど。それは興味深い。... (少し調べている間が空く)

 Youtube Liveだね。よし分かった。まず何をすればいいかな?」

ライブをやると配信者が勝手に決めて、ただライブ配信をしているだけで視聴者が

どんどんと入ってくるかというと、そんなにYoutubeは甘くない。

事前告知もしていないし、そもそも1〜2つ動画をあげただけで固定客が付いているわけでもない。

光の計算を必要とする開発者でありながら、ことYouTubeに関しては見切り発車が過ぎる直江。

結局、2人は視聴者が参加してくるまで、いつものように2人で会話をしていた。


その時、書斎の扉が開く音が聞こえた。

「パパぁ?誰とお話しているのぉ?」




(つづく)


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前作『ARガールフレンド』もよかったらどうぞ。
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