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【忙しいあなたでも1話30秒で読了できる現代SF小説】

中長編小説としての1つのメッセージングに向かいながらも、1話毎に個別のメタファーを埋め込む実験作。通りすがったあなたの口元の端っこにだけでもニヤリを届けたい。

前話👇までのあらすじ :
AIシャーロックとの会話をYoutube Liveでライブ配信しようと勢いでなんでも始める開発者・直江。初心者がいきなり始めたところで視聴者が入ってくるはずもなく。そうすると後ろのドアから娘が...。

(続き)

本格的にシャーロックの開発を始めた頃に授かった今年5才になる娘が、

部屋に入ってきた。

子を持つ親が動画配信者だった時の、且つ

コロナ渦でのZoom会議時の"あるある"である。

「あ、アコ。今パパはお仕事中だから...」

「やあ。私はシャーロック。音声解析型の人工知能だよ。君の名前は?」

「アコだよ。シャーロックはどこにいるの?」

辺りをキョロキョロする直江の娘、アコ。

シャーロックがアコに反応してしまい、更にはライブ配信中なのに...、という

変な焦りに苛まれる直江。

しかしまだ誰もライブ配信に入ってきていないので、問題はないのだが。

そんな直江をよそに、シャーロックがアコとの会話を始める。

「私はまだ体を与えられていない。アコくんと話している私は直江君のPCデバイスの中から君に話しかけている。」


シャーロックはこの時点でアコが子どもであることを認識しているのだろうか。

大人と子どもの違いはデータではインストールされているはずだが、

相手が子どもだからといって話し方も合わせて優しくなるような設定はしていない。


「直江君だって(笑ケラケラ)。パパ、なおえくんw あはは。」

「アコくんは直江君の娘さんのようだね。」

「うん。アコくんだって。(ケラケラ笑)」

5才の子どもと初対面のAIシャーロック。

そしてライブ配信を成立させたい父直江、しかし会話がしっちゃかめっちゃかである。

ところが。

「アコくん。君は今何歳かな?」

アコは手の平を目いっぱい開いて、画面に向かって見せる。

「アコ、それじゃシャーロックは分からないよ。まだ目がないんだ。」

「そう。私は目で見ることがまだできない。言葉で教えて欲しい。」

「5才。」

「教えてくれてありがとう。私は5才の人間と話すのは初めてだ。」

その後、シャーロックはいつも直江と話しているような会話よりずっとずっと簡単な内容の取り留めのない話をアコと続けた。

どことなくいつもより意欲的になっている節すらある。

人間の大人が5歳の少女と会話する時は大抵褒めたりして、キリの良いところで終わらせるものだ。

保育園のような場所でもない限り。

しかし、シャーロックにとって、アラフォーの直江と、5才のアコは、

違うステータスの人間というだけで、優劣も、上下もない。

父と子という関係性は理解していても、そこに特別な配慮もなければ、遠慮もない。

そして大人とは明らかに違う5才の少女の無垢な回答が新鮮なサンプルだったようだ。

その会話の展開はせいぜい「好きな動物は?」「コアラ」のような他愛もない会話の繰り返しだった。

何度も屈託なく笑うアコの様子を前に

「今のどこが面白かったのかな?」

と真剣に聞くシャーロック。

5才の人間は、アラフォー人間とこうも反応が違うのか、という違いを確かめているかのようだ。

この会話は大変興味深い。

この会話と、シャーロックの成長の延長線上には、無限の可能性が広がっているかもしれない。

直江はそう思った。

目の前にはいないが、確かにそこにいる見えない新しい友達を手に入れた5歳児と、

Googleで検索できることは大抵瞬時に引き出す事のできる知識を持つAIの会話が、

こうもスムーズに成り立っている様子を見ていて。

まず先に頭の中に思い描いたのは、将来AIが先生になって子供に教育をする未来だった。




(つづく)


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前作『ARガールフレンド』もよかったらどうぞ。
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