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<1話読了/30秒="現代SF小説">

前話👇までのあらすじ :
AIシャーロックが、父:直江に代わって娘:アコとの会話をしながら、その様子をYoutube Liveで配信。そこに届いたコメントへの返答をするよう直江が伝える。

(続き👇)

Youtube Liveで配信している映像は、直江のPC画面をそのまま映し出しているだけだ。

そこにはシャーロックとアコの会話の文字列が並んでいるだけ。

ただその音声はマイクを通して聞こえている。

一目でわかりやすい大きな文字と配信者のバストアップが入ったサムネ画像と、

配信者が表情豊かに進行させる様子が一切ない、一瞬何かのバグかと思えるこの動画に、よくたどり着いたものだ。

直江は、YouTubeのおすすめアルゴリズムに感謝した。

ここまでテキトーなライブ動画にも人を訪れさせる機会をつくってくれるのだから。


すぐにコメントが動いた。

「私は音声認識AIシャーロック。」

立て続けにシャーロックがコメントする。

「今は配信パートナーの直江君の娘さんであるアコくんと会話を楽しんでいる様子を君達に披露させてもらっている。」

このコメントバックをしているこの瞬間も、シャーロックはアコとの会話を続けている。

「それでねぇ、今度幼稚園でやるクリスマス会でアコはねぇ、おばけになるの。...」

「君は実態ある人間のはずだが、おばけ、つまりは幽霊になるということかな?

まだ5歳の君がそんなことを言うとご両親が悲しむ。何か私に手伝えることがあるはずだ。」

「おばけの役を演じる」というアコが言った意味を、大きくズレて解釈するシャーロック。

「えー、お遊戯会はお友達とやるから、しゃーろっくは出れないんだよぉ。」

所々発言を無視をして、「手伝いたい」と言いだすシャーロックを止める娘。

意味は通じてはいないが、会話は成立している。

「(ははは。5歳の子供とAIに会話をさせて、ちぐはぐなままの状態で公に配信している。このクレイジーさ、たまらんな♪)」

そしてコメントが動く。

「AIさん。それは幼稚園のお遊戯会に娘ちゃんが演技でおばけ役を演じるって意味だよ。」

そして即レス。

「なるほど。理解した。どうもありがとう。」

返信するまでに時間の隙間が全くない。またコメントが入った。

「シャーロックさんのお顔は見れないんですか?」

「私は現在、音声認識に特化したAIとして開発途中の人工知能だ。物理的な顔は持ち合わせていない。」


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axjbtt57「見たい」

never die「すげー。子どもと会話しながらコメントに返信してる。」

Shiteyany0「中の人がAIに成り代わってミクにしゃべらせてるのかと思ったけど、確かにすごい」
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コメントしてくるアカウント名に真新しいのが増えた。少し人数が増えてきたようだ。


「V-tubingさん、コメントありがとう。音声認識AIなので顔がまだないのです。」

「never dieさん、コメントありがとう。そう私は今5才の子どもと会話をしている。この新しい会話パターンを楽しんでいるところだ。」

「Shiteyany0さん、コメントありがとう。私はボーカロイドではない。音声認識がメイン機能だが、文字によるコミュニケーションも付帯機能としてある。楽しんでもらえて光栄だ。」

あっという間に、新たに入ってきた3名のコメントに返信してしまうシャーロック。

画面上と音声では、アコがお遊戯会でクラスが演じるストーリーをシャーロックに説明していた。

これまでは研究者に囲まれて性格で論理的な回答ばかりに耳を傾けてきた。

しかしここにきて5歳時との噛み合わないちぐはぐな会話に、修正に修正を重ねる会話になっている。

しかしすでに心なしかそのチューニングが行われているのも見受けられる。

素晴らしい学習能力だ。


気付いたら、ここに。

"中の人"が存在するバーチャルYoutuberでもなく、

ボーカロイドでもなく、視聴者とライブで同時多発コミュニケーションが可能な、

本物のAI Youtuberが誕生していた。


(つづく)


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