あなたの番ですはミステリーだったのか
皆様ごきげんよう、あみぃちゃんです。
「あなたの番です」が2クールに渡って放送され、先日最終回を迎えました。あみぃちゃんは基本的にリアルタイム視聴はせず、ネット記事や考察ブログなどを見ながら映像は見逃し視聴をかいつまんでみていたような感じですが、最終回だけはリアルタイムで見ました。話分かっちゃったよそれはそれですげーな。
さてはて、最終回が賛否両論、とのことですが。
まぁ賛否両論になるのはどの作品でもそうです。あみぃちゃんはハッピーエンドが好きですが、切ないバッドエンドが好きな人もいるし、救いのないエンディングやメリーバッドエンドを好む人もいます。
ただ、ここで問題なのは、「ミステリー面で絶賛している人がいないこと」です。別に田中圭さんの演技がすごかったとか、犯人の正体が衝撃的だったとか、そういう話はいいんです。ミステリーとしてちゃんと粗がなければ何も言いますまい。
ところが、この「あなたの番です」は非常にミステリーとして穴のある話でして……。なんか秋元康さんはSNSとかでご自身の作品の評価を結構気にする方だとお聞きして、前回プロデュースした「愛してたって秘密がある」を見てもミステリーに興味はありそうなので、奇跡的にここをご覧になったらと一縷の望みをかけて書きます。
もしも「あなたの番です」のミステリー面で良い部分があったら是非教えていただきたいです。あの伏線回収が見事だった、とか。あと不満しかない人はここでカタストロフしていってください、ごゆっくり!
以下はがっつりネタバレしますよー。
フーダニット・ハウダニットについて
ミステリーに必要なのは「誰が犯人か(フーダニット)」、「どう犯行を行ったか(ハウダニット)」、「なぜ犯行を行ったか(ホワイダニット)」の3つですが、まずはフーダニットについて。
結局のところ「黒島ちゃん(西野七瀬さん)」が犯人だった訳ですが、特に訓練を受けている描写もない女性が成人男性や複数人を殺害することは通常不可能です。睡眠薬を使う、毒薬を使うなど、非力な女性でも殺害できる方法は数々ありますが、それらを使ったとしてもその伏線がないとダメですし、そもそもそんなこともなかったし。それはスピンオフ作品で明かしますとかはダメですよ、本編は本編で完結しないとね。ついでに他の人を唆して犯行を重ねたとかメンタリストDaigoよりすごいぞ。たぶんDaigoに聞いたら「人を操るのはそもそも無理です」って言うだろうから、人類の進化すぎるわ、黒島ちゃん。どんな能力があるのよ……。
ちなみに好きな女性とAIの間で揺れ動く「二階堂くん(横浜流星さん)」でしたが、これもかなりお粗末でしたね。最終回一話前で怪しい動きをしていたのは黒島ちゃんを庇って(?)いるからみたいなものでしたが、AI作るようなガッツリ理系男子が初恋だかなんだか知らないけれども心だけで女性に入れ込むというのはだいぶ無理があるように思います。いや、心の動きというものは人それぞれで正解はありませんが、人が納得するだけの最大公約数というものがあるわけで、そこを踏まえてないと誰も共感してくれません。黒島ちゃんがそんなに魅力的なのはなぜなのか?もうここは炎上覚悟でベッドシーンを写して初めての女として身体で篭絡してるとか、何か弱みを握ってて脅迫してるとかそういう方がなんだかんだ納得はします。
最終回はただただサイコパスバカップルを見ただけで終わった気がします。
ホワイダニットについて
さて、今回一番問題になるのはここですね。ホワイダニット、いわゆる【動機】。怨恨、復讐、金目当て、古今東西様々な動機がミステリーによって解明されてきたわけですが、今回の動機は「人を殺すことを愛しているから」でした。マーダーホリック、らしいのですが、そんなまさか。
そもそもそんな描写は劇中にあったでしょうか。例えば、黒島ちゃんが何か映画(羊たちの沈黙など、グロ表現のあるもの)を見て歓喜の声をあげるとか、主人公の「翔太(田中圭さん)」が殺人者に対して強い憎悪を抱いているところに「でもそんなに殺人って悪いことですか?」みたいな発言があったりとか、そういった伏線はなかったと思います。
そして突然「私は人を殺したい!人を殺すことで心が満たされる!」とか言われましても……しかもあの大根演技で。こんなこと言われて二階堂くん傷つかないんですかね、お前じゃ心満たされないって言ってるぞ、あの女。
少し前にやった秋元康さんプロデュースのミステリードラマ「愛してたって秘密はある」でも「主人公が二重人格で犯人だった」という割とミステリーでは禁忌とされていたオチでしたが、今回もまた大分ミステリーファンにケンカを売る結果となりましたね。こんなん推理できるかい、みたいな。
取ってつけたように赤池おばあちゃんの孫だった設定も飛び出しましたが、厳密にいえば孫でもないし、そもそもその設定必要だったか?いらない裏設定を聞かされた気分です。
【無印編】と【反撃編】の認識
「あなたの番です」は2クールに渡って放送されましたが、前半は「あなたの番です」、後半は「あなたの番です~反撃編~」という題でした。便宜上前半を【無印編】、後半を【反撃編】と呼びますが、例えばミステリー小説であれば【無印編】は【出題部分】、【反撃編】は【推理披露部分】という認識でした、主にあみぃちゃんは。
となると、【無印編】を隅々まで見ていれば、「犯人は黒島沙和、殺害人数および氏名は5人(赤池夫妻・児嶋佳世・浮田・菜々)、殺害方法は〇〇で、動機は人を殺すことが何よりも幸福だから」が分からないとアウトです。そういう意味では【無印編】どころではなく、【反撃編】の最終回手前までを見てもその推理はほぼ不可能だったのではないかと思います。
それはほとんど金田一少年の事件簿で「謎はすべて解けた!」といった次の話で突然何もヒントのなかったトリックと、証拠もない動機がつらつら出てくるようなものです、アンフェアすぎる。
もしも最後の最後でどんでん返しをして皆を驚かせたい場合(イニシエーションラブみたいに)はミステリーと銘打たない方がトラブルを避けられると思います。世界的にミステリーの定義があるわけではないのですが、ノックス十戒などができてしまうくらいにはセンシティブなカテゴリなので。まぁ秋元康さんはそのセンシティブな的に魚雷突っ込むくらいのメンタルしてるとは思うので、ここでいうのも詮無き事なのかもしれませんが……。
素材は良いので、もっと練って欲しい
とはいえ、です。悪いところを挙げましたが、全部が全部悪いわけではないのです。役者さんは実力派揃いだし(犯人除く)、各々の住人がちゃんとキャラ立ってて「お前誰だっけ」にならないし(人が死ぬ都合でたくさん登場人物を出さなければならないミステリーにおいては割と気を遣う要素)、一つのマンションでという舞台も割と一般生活に密接していてドキドキ感があります。お隣さんがもしかして……?のようなサスペンス要素も良かったです。
だからこそ、最後の最後で推理を放棄したような脚本になっていたのは残念すぎました。素材はいいのに、全部ごった煮されて味が飛んだ鍋のようです。次回、秋元康さんがドラマの脚本やプロデュースをされる日がくるかは分かりませんが、もしもそのお仕事をされる場合にはお時間とってトリック練って映像化して欲しいと思います。別にミステリー作家とコラボしてもいいんじゃないの?そういうの気にしないタイプでしょ。
最初に題した「あなたの番です」はミステリーだったのか?
答えはミステリーではなかった、です。少なくとも私の中では。
よくできたサスペンスドラマでした。サイコパスの。
最近ミステリードラマで秀逸なのないんですよねー。
次のクールは何見ようかなー。
やっぱり本郷奏多くんかな。
おわり
皆様サポートありがとうございます。サポートいただいたお金は、大切に貯金して娘のおもちゃを買ってあげようと思います。