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Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew

2021 Autumn Selection(10月11日~11月30日)

橋本徹(SUBURBIA)を始めとする
「usen for Cafe Apres-midi」の選曲家17人が
それぞれのセレクトした音楽への思いを綴る
「Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew」

詳しい放送内容はこちら
D-03 usen for Cafe Apres-midi
http://music.usen.com/channel/d03/



橋本徹(「usen for Cafe Apres-midi」プロデューサー) Toru Hashimoto

緊急事態宣言もようやく解除され、再出発の10月。まだまだ普段の生活で気をつけなければならないことは多く、音楽好きとして謳歌してきたコロナ禍以前の日常にはほど遠いが、新しい時代を生きていくささやかな希望を胸にカフェ・アプレミディもリスタート、深まりゆく秋の街並みを素敵な音楽で色づかせることができたらと、心からの思いをこめて、今回もメロウ&グルーヴィーで心地よい楽曲を中心に、計34時間を新たに選曲した。
月〜日を通してのTwilight-timeの特集は、引き続き20周年を迎えた「usen for Cafe Apres-midi」の集大成となるセレクションを意識して、「Music City Lovers」と題して。リリースを予定しているセレクター仲間と選んだ20周年記念コンピCDも、収録希望曲のアプルーヴァルに時間がかかってはいるが、現在制作進行中なので、ぜひ楽しみにお待ちいただけたらと思う。
その他の時間帯は、豊作だった夏の終わりから秋の初めにかけてのニュー・アライヴァルをたっぷりと。文句なしに前回No.1アルバム(そして2021年の年間ベスト・アルバム間違いなし)としたCleo Sol『Mother』のようなとびぬけた存在こそ選出しづらいものの、セレクションで特に活躍してくれた28作のジャケット写真掲載リストの上から7作──UKアフリカン最重要プロデューサーJuls、UKジャズ×メディテイティヴ・アンビエントの才媛Nala Sinephro、チェンバー・アンビエントな休日に聴くジャズの理想Brendan Eder Ensemble、絶品のバレアリック・チルアウトAngophora、“ミスター・クワイエット・コーナー”真打ちScott Orr、前作『Nostalgia』と前々作『Bad Bonez』もアプレミディ・レコーズでCD化した“21世紀ベッドルーム版シュギー・オーティス×マイケル・フランクス”ことMichael Seyer、名門Stones Throwからデビューしたエアリー&センシュアルなアンビエント・ソウル新星Silas Short──は、とりわけよく聴いた作品として大推薦したい。
シングル曲については、最も僕の心の奥深くに響いた、フレンチ・メキシカンのシタール奏者Leonardo Prakashが南インド出身の心震わせる女性歌手Ganavyaをフィーチャーしたアリス・コルトレーンを思わせる至上のオリエンタル・ジャズ「Om Tare Tuttare (To Alice)」を、その代表としてピックアップしたが、先日亡くなったジャズ・オルガンのレジェンドDr. Lonnie Smithの生前ラスト・リリース(彼自身がかつて歌った入魂の名作「Move Your Hand」を親友イギー・ポップをヴォーカルにセルフ・リメイク)などもセレクトしているので、ぜひすべての選曲リストを隈なくチェックしてもらえたら嬉しい。

2021 Autumn 橋本徹

Juls『Sounds Of My World』
Nala Sinephro『Space 1.8』
Brendan Eder Ensemble『Cape Cod Cottage』
Angophora『Together』
Scott Orr『Oh Man』
Michael Seyer『A Good Fool』
Silas Short『Drawing』
Peyton『PSA』
Little Simz『Sometimes I Might Be Introvert』
Anaiis『This Is No Longer A Dream』
Space Afrika『Honest Labour』
James Blake『Friends That Break Your Heart』
José González『Local Valley』
Sufjan Stevens & Angelo De Augustine『A Beginner's Mind』
Assaf Amdursky『432』
Lady Blackbird『Black Acid Soul』
BADBADNOTGOOD『Talk Memory』
Nate Smith『Kinfolk 2: See The Birds』
Homeshake『Under The Weather』
Pearl & The Oysters『Flowerland』
Sampology『Regrowth』
Snowy Band『Alternate Endings』
Bremer/McCoy『Natten (The NIght)』
Remis Rančys『Pavėjui』
Leonardo Prakash feat. Manuel Pelliza & Ganavya「Om Tare Tuttare (To Alice)」
Christine Bougie『Firm Believer』
Fabiano Do Nascimento『YKYTU』
Ayrton Montarroyos 『Caetano Veloso Além Do “Transa"』

Dinner-time 土曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 日曜日0:00~10:00
Brunch-time 月曜日10:00~12:00
Brunch-time 火曜日10:00~12:00
Brunch-time 水曜日10:00~12:00
Brunch-time 木曜日10:00~12:00
特集 月曜日16:00~18:00
特集 火曜日16:00~18:00
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本多義明(「usen for Cafe Apres-midi」ディレクター) Yoshiaki Honda

年末のBest Selectionでも選んだことのあるBig Crown RecordsのHoly Hive。楽しみにしていた彼らのニュー・アルバムが、国内レーベルのインパートメントからリリースされた。Holy Hiveはジャンル的なワードをあてはめるなら、フォーク・ソウルという、いかにも自分が好きそうなスタイル。フォーク・シンガーでもあるポール・スプリングのヴォーカルも、ドゥラン・ジョーンズ&ザ・インディケイションズのドラマー兼ヴォーカリストのアーロン・フレイザーに近い優しくソフトな歌声。派手さは少ないけれどハートウォームな聴き心地の良曲が並ぶ、この秋冬におすすめの作品です。

2021_Autumn_本多

Holy Hive『Holy Hive』

Lunch-time~Tea-time 木曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 金曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 土曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 日曜日12:00~16:00



中村智昭 Tomoaki Nakamura

Nujabesが世を去って節目となる10年を期にharuka nakamuraが制作した「Reflection Eternal」のカヴァーが、つい先日7インチEPでアナログ化された。鎌倉にNujabesが残したスタジオを訪れレコーディングされたという本作、微かに聴こえる波の音は、生前の彼が愛した湘南の海で録音されたものだろう。今回のAutumn Selectionにおいては、B面に収録された「Latitude」のカヴァーも「Reflection Eternal」の直後に選曲した。普段、一枚のレコードから2曲を並べることはほとんどないが、今回に限ってはそうすべきだと思った。Nujabes=セバさんが突然亡くなってからずっと、残された者に何ができるかを考え続けている。

2021_Autumn_中村

haruka nakamura「Reflection Eternal」

Dinner-time 月曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 火曜日0:00~2:00



添田和幸 Kazuyuki Soeta

深まる秋の夜を思い描いて、デンマークのピアニストとベーシストによるデュオBremer/McCoyの最新アルバム『Natten (The Night)』から先行曲をピックアップ。素晴らしかった前作に引き続きDavid ByrneのLuaka Bopレーベルからリリースとなる、秋の夜長にピッタリな一枚。静寂の中に深く沈みこむ美しいアンサンブルにぜひ耳を傾けてみてください。

2021 Autumn 添田

Bremer/McCoy『Natten (The Night)』
Mallu Magalhães『Esperança』
Villagers『Fever Dreams』
Peter Fessler『Solo Time』
Motti Rodan『צליין』
Holy Hive『Holy Hive』
Pearl & The Oysters『Flowerland』
Hollyspleef & Moodhay『Garden Grooves』
Common Saints『Starchild』
Olivia Dean『Growth』
Saint DX『Unmixtape』
Homeshake『Under The Weather』
Cleo Sol『Mother』
Naia Izumi『A Residency In The Los Angeles Area』
Vicmari『Window Curtains』
Eyedress『Mulholland Drive』
Silas Short『Drawing』
Dan Nicholls『Mattering And Meaning』
Nat Birchall『Ancient Africa』
Greg Foat『Gone To The Cats』
Mia Doi Todd『Ten Views Of Music Life』
Awkward Corners『Amateur Dramatics』
Mansur Brown『Heiwa』
Yebba『Dawn』
Nala Sinephro『Space 1.8』
Hugh Small & Brian Allen Simon『The Side I Never See』
Maxine Funke『Seance』
Tom Misch『Quarantine Sessions』

Dinner-time 火曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 水曜日0:00~2:00



中上修作 Shusaku Nakagami

なんだかんだで秋が到来した。コロナ慣れした善良な国民としては、マスクのヒモ焼けした顔を鏡にうつしながら酷暑から抜け出した安堵感にひたっている。今日も髭剃りのすべりがよい。

折からロンドン(最近は地方に引っ越したそう)のロメアのことが気になっている。近年はNinja Tuneから作品をリリースし、ジャイルス・ピーターソンなどのトレンドセッターから熱い支持をうけているが、彼のデビューは案外早い。昨年の最新アルバムのジャケットも彼自身のデザインによるもので、美術家トータルとしての才能、とりわけこの捻れたセンスはグレートブリテンというより北アイルランドあたりを感じさせるが、極東島国のいち音楽ファンからは想像もできないほど複雑なアイデンティティーを抱えているのかもしれない。

たとえば家で放牧しているヤギの毛から編んだフォーキーな民族衣装を着た子供が、バレアリック・ハウスで踊り狂っている感じ。あるいは炊きたての上等なコシヒカリの上にサワークリームオニオン味のプリングルスをトッピングする感じといったらよいか。重いビートに身体が覚醒しつつ脳内でじわじわとひろがる“奇妙な懐かしさ”がロメア作品の真骨頂かもしれない。タイトル曲「Home」のゆったりとした旧い手風琴のリフレインを聴くと、明日の栗ご飯がぼくの鼻腔を刺激する。

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Romare『Home』

Dinner-time 水曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 木曜日0:00~2:00



高木慶太 Keita Takagi

深く温かく、ふくよかでいて憂いもある。テリー・キャリアーの歌声が一番似合うのは晩秋だと思う。夜の喧騒で繰り広げられる男女の艶やかなやりとりを洒脱に描いたエリントン・ナンバーもテリー・キャリアーの手に掛かるとセピア色を帯びた一人語りに聴こえる。本作がリリースされたニュー・ソウルど真ん中の1973年から見れば、サテン・ドールが腰をくねらせた華やかなりし1950年代のシカゴは郷愁の対象であったのだろう。

2021_Autumn_高木

Terry Callier『I Just Can't Help Myself』

Dinner-time 木曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 金曜日0:00~2:00



FAT MASA

ジョルジ・ベルシーロの「Final Feliz」が秋によく似合う。夏に合う清涼感あるAOR〜コンテンポラリーR&Bも彼の持ち味で大好物なんですが、このバラードも絶品。夕暮れのビーチみたいなシチュエイションから、枯葉が舞う街並みにまでマッチする、ロケイション問わない佳曲。

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Jorge Vercillo 「Final Feliz」

Brunch-time 金曜日10:00~12:00



三谷昌平 Shohei Mitani

今回ご紹介させていただくのは、サウスロンドン出身のマルチ・インストゥルメンタリスト、Conor Albertの「Be So Kind」と、カリフォルニアを拠点に活動するピアニスト/ビートメイカーのKieferの最新EP『Between Days』から「Running Out The Clock」とロイ・エアーズの「Everybody Loves The Sunshine」のカヴァーです。

Conor AlbertはSoundCloudにアップしたデモが話題となり、Marie Dahlstrøm、James Vickery、Mac Ayresといった様々なアーティストとコラボレイションを果たし、そのマルチな才能と独自のセンスで、今、注目のアーティストです。「Be So Kind」はRosie Frater-Taylorとのコラボレイション曲で、Early Autumn Selectionでも紹介させていただいた彼女のアルバム『Bloom』にも別ヴァージョンで収録されていて、アレンジの違いを楽しむことができます。Conor Albertは今秋、新作『Collage 2』をリリースしていますので、興味のある方はチェックしてみてください。

Kieferはもはや説明不要かと思いますが、ヒップホップ・ビートにジャズを融合させたサウンドで注目されたアーティスト。『Between Days』でも彼の持ち味でもあるジャジー&チルホップなサウンドは健在ですが、これまで以上にメロウな印象で、秋にぴったりなサウンドとなっています。Kieferは先頃、待望のサード・アルバム『When There's Love Around』もリリースしており、そちらの方はバンド編成ということで、これまでの作品とは一味違ったものに仕上がっています。興味のある方はそちらもチェックしてみてください。

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Conor Albert feat. Rosie Frater-Taylor「Be So Kind」
Kiefer『Between Days』

Dinner-time 金曜日18:00~22:00



渡辺裕介 Yusuke Watanabe

この生活に慣れてしまったのかと疑うように久々に昼間に友人と距離を保ちつつすごしました。
コーヒー飲んでおしゃべりしただけなのに夕方に疲れてしまいました。
無事いつもの生活に戻ったときのために、体力作りが必要な気がしました。
TVでヨーロッパのサッカーや競馬を観戦していると、超満員でマスク誰もしてない!
当たり前だった状況に怯える私。

そんな中こんな状況での選曲は、もう終わりにしたい気持ちで深秋を選曲しました。

今まで以上に我が道選曲な気がしますが、1960年代〜2021年の中で自由に心地よく違和感のない選曲をしました。

久々に前半からライブラリーやサウンドトラックを中心にAORも織り交ぜてヨーロピアン選曲。しばらく新作メインで選曲していたので、時代を越えた名曲を改めてじっくり深秋の中でじっくり楽しんでいただきたいのであります。
そんな中に混じってThe Stone RosesやThe Smiths級なのに地味に活動しているThe Coralも収録。彼らこそイギリス歴史がぎっしりつまった追いかけるべきバンドであります。心に染み入るサイケデリック・フォーク。あとやっとAnn-Kristin HedmarkのあのカヴァーをLPで入手。今となっては最高のフリー・ソウルです。2009年に亡くなってしまったイタリアのシンガー・ソングライターMike Francisも集めだしました。彼の名曲「I'm Missing You」を聴けば他の楽曲も気になるはずです。
そういえば、10代後半からJames Brownの「Funky Drummer」使い(サンプリング)の楽曲を集めていたなあ、と。ただしヒップホップは除く。BPMはバラバラなのでそれぞれのアレンジャーのミックスが楽しいのであります。大ヒットしたCandy Flipの「Strawberry Fields Forever」やSmith & Mightyのベスト仕事Fresh 4の「Wishing On A Star」はもちろんですが、Joe StrummerやFine Young CannibalsにSinéad O'Connor そしてEd Sheeranなど。
現行の日本のミュージシャンもぜひ「Funky Drummer」使いにチャレンジしてほしいなあ、という思いをこめて選曲してます。
秋夜ごゆっくりお楽しみください。

2021 Autumn 渡辺

The Coral『The Curse Of Love』
Ann-Kristin Hedmark『Kom, Vad Väntar Du På』
Mike Francis『All Rooms With A View』
Sinéad O'Connor『I Do Not Want What I Haven't Got』

Dinner-time 金曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 土曜日0:00~2:00



富永珠梨 Juri Tominaga

高く澄んだ空と、爽やかな秋色の風が心地よいこの季節。そんな清々しい秋の風景がよく似合う、スウィート&シックなジャズ・ヴォーカル作品をご紹介いたします。ダイアナ・パントンが2015年にリリースしたアルバム『アイ・ビリーヴ・イン・リトルシングス~わたしの小さな願い』から「In A World Of My Own(私だけの世界)」を、2021 Autumn Selectionのベストワンに選びました。ディズニー映画『ふしぎの国のアリス』の挿入歌でもあるこの曲は、まさにアリスのような、愛らしい歌声とルックスを持つダイアナにぴったりな一曲。穏やかな秋の散歩道が心に浮かぶ、軽やかでフレンドリーなジャズ・ヴォーカル作品です。

そしてこの曲は、今年の9月にリリースされた、山本勇樹さん(Quiet Corner)監修・選曲のダイアナ・パントン初のベスト・セレクション盤『Diana Panton for Quiet Corner~fairy sings love suite』にも選曲されています。山本さんが長年、宝物のように大切にしてきたダイアナ・パントンの音楽が、クワイエット・コーナーの一枚として味わえるなんて! QCファンにとって、まさに夢のようなアルバムです。楽曲ひとつひとつの美しさや、ドリーミーな世界観をより輝かせる、山本さんの心地よくなめらかな選曲に、時間を忘れて聴き惚れてしまいます。秋の夜長や、休日のリラックスタイムにぴったりな一枚です。ため息の出るような美しいジャケット・デザインにも心奪われます。余談ですが、この素晴らしい作品のライナーノーツを大変光栄なことに、わたくし富永珠梨が担当させていただきました。みなさま、ぜひチェックしてみてくださいね!

2021 Autumn ジュリ

Diana Panton『I Believe In Little Things』
Diana Panton『Diana Panton for Quiet Corner~fairy sings love suite』

Brunch-time 土曜日10:00~12:00



小林恭 Takashi Kobayashi

秋のすごしやすい心地よさを感じさせるメロウでグルーヴィーな曲を中心に今回もオールジャンルで選曲しています。
今回はピックアップしている16枚の中からRicardo Bacelar & Cainã Cavalcanteの素晴らしいインスト・アルバム『Paracosmo』を特にお薦めします。
ブラジルのピアニスト、ヒカルド・バセラールと気鋭ギタリスト、カイナン・カヴァルカンチとのデュオ・アルバムは、1曲目の「Vila dos Pássaros」からスリリングにはじまり、自然の風景が思い浮かぶような様々な曲たちが心を揺さぶります。
今回選曲したライル・メイズに捧げられたという「Lyle」は、音楽の美しさ、瑞々しさ、湧き上がるような躍動感あふれる喜びの一曲。
この季節に似合う懐の大きなスケールを感じさせるスピリチュアルな楽曲に、ぜひ耳をかたむけてみてください。

2021 Autumn 小林

Cleo Sol『Mother』
Ricardo Bacelar & Cainã Cavalcante『Paracosmo』
Charles Dollé『Imago』
Richard Greenan『Rehearsing Heat』
UMI『Introspection Reimagined』
Rotem Sivan & Adam Neely「All We Need」
Lavender feat. CHRISSY「constantly」
Gabriela Brown「Meu Carnaval」
Men I Trust『Untourable Album』
Sufjan Stevens & Angelo De Augustine「Back To Oz」
Lady Donli「Searching」
Maya Delilah feat. Samm Henshaw「Breakup Season」
Sachal Vasandani & Romain Collin『Midnight Shelter』
Pearl & The Oysters「Treasure Island」
Moses Sumney & Sam Gendel「Can't Believe It」
FKJ『Just Piano』

Dinner-time 土曜日18:00~22:00



ヒロチカーノ hirochikano

90年代後半、選曲の仕事を始めた当時のヘヴィー・ローテイションだったByron Stingilyの「Frying High (Brazilian Vocal)」。この曲をターンテーブルで流していた若かりし日の”bossa”な感覚を、今の時代に再び想い出させてくれたAnthony Lazaroの「Like A Song」は、ひたすら繰り返される8小節の”saudosismo”溢れる旋律と、Marle Thomsonの囁くような唄声が深く心に響く逸曲です。
この曲との出会いの影響もあって、2021年レギュラー・シーズン最後となる秋選曲では、現在進行形のSSWの中から、そんな僕の音楽人生の原点ともいえる”bossa”のエッセンスを継承している好トラックを集めてお届けします。

2021_Autumn_野村

Anthony Lazaro & Marle Thomson「Like A Song」

Brunch-time 日曜日10:00~12:00



吉本宏 Hiroshi Yoshimoto

ポップなイラストが描かれたジャケットからレコードを取り出すと、盤面は鮮やかなマゼンタで、それを見たとき、彼女が表現したい音の世界観がなんとなくわかったような気がした。テキサスはヒューストンのR&BシンガーPeytonのStones Throw Recordsからのアルバムの「Haters」に針を落とすと、モーリス・ラヴェルの「水の戯れ/Jeux d'eau」のフレーズのサンプリング・ループが聴こえてきた。チャーミングな彼女の歌声がまるで“水に戯れる”ようにエレガントなR&Bとなって飛翔してゆく。

2021_Autumn_吉本

Payton『PSA』

Dinner-time 日曜日18:00~22:00



高橋孝治 Koji Takahashi

今年の秋はとても涼しく、過ごしやすいと感じているのは自分だけでしょうか? 近年は春と秋を感じる期間が短く、厳しい暑さや寒さが一年の大半を占めていると感じていたので、少しでもこの過ごしやすい日々が長く続くと嬉しいですね。
ということで、今回の選曲はそんな気分に寄り添い、穏やかでリラックス効果をもたらす、優しい感覚を持った作品を集めて構成してみました。
ディナータイム前半は、ドイツのマンハイム出身のアーティスト、アンドレアス・カウフマンの「Get On With It」、アメリカはボストン在住の女性アーティスト、Layziの「Shoes」、ロンドン出身のLily SomervilleとMegan Markwickによるユニット、IDERの「Cbb To B Sad」、ミシガン州出身のConnor WrightとKendall Wrightによるデュオ、Cal In Redの「Act Like」などをピックアップしてスタートしましたが、どれも心地よい気分になるリラックスしたナンバーだと思います。他にスペインはバルセロナで活動するサイケデリック・バンド、The Zephyr Bonesの「Verneda Lights」や、「Hikikomori In Love」というまさにコロナ禍の自分を表している(笑)、カナダはトロントで活動する男性デュオ、Swanesの爽やかなダンス・ナンバーも心くつろぐ素敵な作品です。
ディナータイム後半は、イギリスはブリストル出身で、現在はオーストラリアのメルボルンで活動するEd Bidgoodの音楽プロジェクト、Edapolloのハウス・ナンバー「Free」で始まり、クレイロのニュー・アルバム『Sling』収録曲「Amoeba」や、ワシントン出身の男女デュオ、Glosserの「Nothingness」などのゆったり心落ち着く作品をピックアップした後に、Alexander Brettinのプロジェクト、マイルド・ハイ・クラブの4作目のアルバム『Going Going Gone』収録の「Me Myself And Dollar Hell」や、アリゾナ州フェニックスで活動するアーティスト、FLDPLNの「Escalator」、ニューヨーク出身のローファイ・シンガー・ソングライター、JW Francisの「Holy Mountain」、同じくニューヨーク出身のアーティスト、Mindchatterの「Here I Go Again」、オランダのライデンという街を拠点にしている3人組、Kraak & Smaak & Tim Ayreの「Overdrive」、そしてオーストラリアのインディー・ポップ・バンド、The Jungle Giantsの「Something Got Between Us」などの軽快なダンス・ナンバーを続けました。特に「Tighten Up」調のJW Francisの「Holy Mountain」は、コミカルな要素もあってお気に入りです。
ミッドナイトからの選曲は、最近の選曲ではおなじみのCity Pop大好き少年Cameron Lew率いるジンジャー・ルートの「Fly Too」と、ブルックリンの男女デュオ、Cafunéのデビュー・アルバム『Running』収録曲「Reconsider」をピックアップし、ディナータイム後半のダンサブルな流れを引き継ぎます。そしてその流れから変化をつけて、デンマークはコペンハーゲンで活動するAsger Tarpgaardの音楽プロジェクト、レイト・ランナーの「A Handful Of Dust」や、南フロリダで活動するtiny.blipsの「Gone Get Ya」、ミズーリ州セントルイス出身の2人組、スリーピー・ソウルの「Be Near」、テキサス州オースティンで活動するKevin F. Johnsonのプロジェクト、Lonesome Rhodesの「Wormhole」などの穏やかな波のようなミドルテンポの作品をセレクトしました。その中でもインディアナ州ブルーミントン出身のアーティスト、オースティン・ホワイトの「24 Hours」は清涼感があって、これまたお気に入りのひとつです。
ミッドナイト後半は、カナダのケベック州モントリオール出身のインディー・ポップ・バンド、メン・アイ・トラストの8月にリリースされたニュー・アルバム『The Untourable Album』に収録された「Tree Among Shrubs」でスタートし、ニューヨークはブルックリンで活動するケイヴマンの「Awake For The Week」、バークリー音楽大学卒業という肩書を持つ、フランス領レユニオン島出身のNasayaが、ポルトガル出身のマルチ楽器奏者、Maroと組んだ音楽ユニットのNasaya & Maroの「I See It Coming」、ルイジアナ州ニューオーリンズで活動するインディー・ポップ・バンド 、The Convenienceのプリンスの影がちらつく「Accelerator (Pts I + II)」、カナダはヴァンクーヴァー出身のアイランド・アイズの「Night Palace」、カリフォルニア州サンフランシスコで活動する5人組バンド、ノー・ヴァケイションの「Waltzing Back」、ペンシルヴェニア州フィラデルフィア出身のアーティスト、Catherine Moanの「Chain Reaction」などをピックアップして、最後はドイツのベルリンで活動するEyeclimberのしっとりとしたダンス・ナンバー「Doomed」を選んで秋の選曲を締めました。

さて、ここからは誰も望んでいないのに恒例となった、「usen for Cafe Apres-midi」とは全く関係のない映画に関するお話を今回もしてみたいと思います。
コロナ禍以降はレアな日本語吹替の研究を主にしていたのですが、今回はレアな字幕映画についてお話しましょう。レアな字幕映画というのは、VHSの時代に字幕付きで商品化されたにもかかわらず、何らかの理由でその後ソフト化がされていない作品のことで、「usen for Cafe Apres-midi」のテイストで例えると、チェット・ベイカーの伝記映画『レッツ・ゲット・ロスト』や、ブライアン・ウィルソンの『ノット・メイド・ディーズ・タイムス』があてはまります。
今回自分が検証した作品は、ジャニス・ジョプリンのアルバム『Cheap Thrills』のジャケット・イラストを手掛けたことでも有名な、アメリカの漫画家ロバート・クラムのアンダーグラウンド・コミック『フリッツ・ザ・キャット』を、アニメイション監督のラルフ・バクシが映画化した作品です。この作品も字幕付きVHS盤が存在するので、その字幕を徹底的に検証してみたところ、R指定の映画なのでスラングが多く、字幕付きVHSの字幕はかなり意訳されていることがわかりました。そしてその流れで、バリー・ホワイトも出演するラルフ・バクシの『Coonskin』というアニメと実写を組み合わせた、これまたR指定の映画を検証してみました。こちらも『ストリート・ファイト』というタイトルで日本盤VHSが過去に発売されていたので、まずはその映像と海外で発売されているDVDとの画質比較をしてみたら、驚く事実を発見してしまいました。現在流通している海外盤と、VHS盤『ストリート・ファイト』は、同じ映像素材が使われてはいますが、構成が全く違っており、それに伴いストーリーも若干変更されていました。さらに使用されている音楽はほとんど変えられており、主要人物(動物)以外の声優もかなり変更されていました。同じセリフでも『ストリート・ファイト』の方が過激な表現が使われているのに対し、『Coonskin』はマイルドな言葉使いになっていましたね。以前このセレクター・コメント欄で、『シャイニング』のTV放送版が「北米公開ヴァージョン」と「コンチネンタル・ヴァージョン」の中間の編集だったことに触れ、それがインターネット内ではたぶん語られていないんじゃないかと書きましたが、このヴァージョン違いについても今のところ、検証記事を発見できていません。一部ではカルト化して人気の作品なのに、これまたちょっと不思議ですね。
そしてもうひとつレアな字幕スーパー付き映画で、1984年に制作された、シアトルのストリート・チルドレンたちの日常を追ったドキュメンタリー映画『Streetwise』(邦題『子供たちをよろしく』)についてもリサーチしました。この映画はとても思い入れのある映画で、1987年に日本のミニシアターで上映されたときに観に行き、とても感銘を受けた作品です。日本盤でソフト化されたときもレーザーディスクを購入しました。この作品は同世代の一部のアメリカ人たちの間でも、長年愛されてきた作品で、YouTubeなどでこの作品に関連する映像が多くみられます。しかしアメリカでもVHSでリリースされて以降、別のフォーマットでソフト化はされていませんでした。自分はこの作品の海外盤ソフトを検索することは今までなかったので、その事実を知りませんでしたが、コロナ禍以降にいろいろと映画のリサーチをはじめ、今回レアな字幕スーパーについての検証にあたって、この作品の海外盤ソフトについて調べたら、これまた驚く出来事がありました。なんと検索したほんの数か月前にこの作品が、旧作品の復刻作業にはかなり定評のあるアメリカのクライテリオン社から、DVD/ブルーレイで再発されていたのです。あまりのタイミングの良さに自分でも驚きましたが、これも運命なのでしょうか。さっそく、そのブルーレイを購入し、日本盤と比較検証を行い、日本盤の字幕スーパーも徹底的に見直してみると、かなりの誤訳があったので、ブルーレイの英語字幕を参考に、思いきって全てのセリフを自分なりに翻訳してみました。これはかなり大変な作業でしたが、今年のお盆休みは予定もなかったので、ひとり静かにパソコンの前で淡々と翻訳作業しておりました……(泣)。

2021 Autumn 高橋

Layzi「Shoes」
IDER「Cbb To B Sad」
Cal In Red「Act Like」
The Zephyr Bones『Neon Body』
Swanes『Sticky Concrete』
Edapollo「Free」
Glosser「Nothingness」
Mild High Club『Going Going Gone』
FLDPLN「Escalator」
JW Francis「Holy Mountain」
Mindchatter「Here I Go Again」
Kraak & Smaak & Tim Ayre「Overdrive」
Cafuné『Running』
Late Runner『Nothing's Real Anymore』
tiny.blips「Gone Get Ya」
Sleepy Soul『Sleepy Soul』
Lonesome Rhodes『Shimmers』
Austin White「24 Hours」
Men I Trust『The Untourable Album』
Nasaya & Maro「I See It Coming」
The Convenience「Accelerator (Pts I + II)」
No Vacation「Waltzing Back」
Catherine Moan「Chain Reaction」
Eyeclimber「Doomed」

Dinner-time 日曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 月曜日0:00~2:00



山本勇樹 Yuuki Yamamoto

ふと吹き抜ける風が心地よい季節になりました。一年で一番好きな季節。深く色づいた景色が心を穏やかにしてくれます。そんな綺麗な秋色をイメージしながら、午後のランチ~ティータイムのBGMに似合う66曲を選んでみました。アンドレア・モティスをヴォーカルに迎えたジョアン・チャモロの「Like Someone In Love」のカヴァーから、ジェンマ・シェリーによる「The Doodlin' Song」という、チェット・ベイカー~ブロッサム・ディアリーのカヴァーで繋げた選曲リストの幕開けもすごく気に入っていますが、15時を過ぎてからは、少ししっとりとした温度感を意識して、温かな歌声をもったシンガー・ソングライターやジャズ・ヴォーカルを並べています。そんな中、ぜひおすすめしたいのはレイヴェイの新曲「Let You Break My Heart Again」。コンピレイション『Quiet Corner – Ma Fleur』にも収録した彼女の「Magnolia」はメロウなベッドルーム・ポップといった趣でしたが、こちらは美しいオーケストレイションのアレンジメントが魅力的で、まるでバート・バカラックが手掛けたような、その豊かな旋律に彼女の非凡な才能を感じました。 温かい手触りと静かな余韻が、ゆっくりと深まる秋に溶けこんでいくようです。

2021_Autumn_山本

Laufey & Philharmonia Orchestra「Let You Break My Heart Again」

Lunch-time~Tea-time 月曜日12:00~16:00



武田誠 Makoto Takeda

LAのマルチ・インストゥルメンタリストであり、映画音楽の作曲家でもあるBrendan Eder。彼が創りだす木管のアンサンブルは、わかりやすく例えるなら、あの蓮沼執太フィルにも通じるようなポジティヴィティーを感じさせる、とても軽やかで、新しい空気が吹き込んでくるような美しい響きを奏でます。今回の新作は、謎のEdward Blankman名義による、エレクトリック・ピアノ/アルト・サックス/フルート/アップライト・ベース/ドラムスといった編成のチェンバー・ジャズ作品なのですが、種あかしをしてみると、それはまるで村上春樹の短編小説「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」を地でいくような、マサチューセッツ州ケープコッドのとあるソルトボックス・ハウスの屋根裏から発見された私家版テープが陽の目を見る、という架空の話を題材にしたコンセプト・アルバムなのです。そのストーリー(テープと共に段ボール箱に納められていた創作ノートから引用という設定)が記されたライナーノーツをかいつまんで要約すると、──このテープを残したEdward Blankmanは、1972年に開業したペンシルヴェニア州アビントンの歯科医で、最愛の妻ナタリーを亡くした哀しみを埋めるためにこのケープコッドのソルトボックス・ハウスに移り住んだ。そこで中古のエレクトリック・ピアノWurlitzer 700を買い求め、ナタリーとの思い出を曲にしたためていくことにした。そしてその楽曲を実際の音楽家たちに演奏してもらいレコーディングすることを思い立ち、楽譜片手にボストンを訪れ、ジャズ・クラブに足繁くかよい、4人のミュージシャンを見つけだす。レコーディングのために彼が選んだのは、マサチューセッツ州リベアにあるスーパーマーケットを改装したFleetwood Recording Studio(このスタジオ、実在してレーベルも持っていました)。もともとは鼓笛隊のレコーディングのために作られたスタジオだったが、充分なマイクと設備が整っているということで、ミュージシャンへ支払う限られたギャランティーのこともあるのでここに決められた。しかし、後にこのテープを聴くと、このセッションが成功した最大の理由は、スタッフはみな、この老人が作った楽曲を正当に評価し、魅了されていたに違いないからではないか──と、ざっとこんな内容で、もう脳内再生できそうなくらいの映像イメージが膨らんでくるストーリーが描きこまれているのです。ちなみに曲解説もなかなかの味わいで、“暑い夏の日、冷たい水を浴びる友人たちに木葉が落ちていくような感じ”とか、“エリック・サティのリディアン・コード構造から、気まぐれで自由奔放なジャズへと移行する”など、思わずうなずいてしまう巧みな表現が使われていたり。
Blankmanさんが優しく織りなすメロディーと同じリズムとテンポで散歩しながら、秋の柔らかな陽射しを感じてみたくなりました。

2021 Autumn 武田

Brendan Eder Ensemble『Cape Cod Cottage』
Brandee Younger『Somewhere Different』
Cleo Sol『Mother』
Living Hour & Peel Dream Magazine「Double Bus」
Sufjan Stevens & Angelo De Augustine『A Beginner's Mind』
Spencer Cullum's Coin Collection『Spencer Cullum's Coin Collection』
Emma Bradley『Perfumed By You』
Nala Sinephro『Space 1​.​8』

Lunch-time~Tea-time 火曜日12:00~16:00



waltzanova

Autumn Selectionの選曲時期は、とにかく新譜が充実していたという印象です。クレオ・ソルにリトル・シムズ、クレイロとロードという、互いにペアになるような4人の女性アーティストの作品がいずれ劣らず素晴らしかったですね。どれもキャロル・キングやジョニ・ミッチェル、あるいはミニー・リパートンやニーナ・シモンといった伝説的なアーティストの70年代のアルバムと並べたいような、2020年代のスタンダードになるに違いない傑作たち。もちろんアナログ盤LPも購入して、我が家のヘヴィー・ローテイションとなっています。ジョーダン・ラカイやトム・ミッシュ、ホームシェイクなどの新譜も良かったですが、そんな中でアルバム・オブ・ザ・セレクションに輝いたのは、LAのマルチ・プレイヤー、Alex Brettinのプロジェクト、マイルド・ハイ・クラブ5年ぶりの新作アルバム『Going Going Gone』です。スティーリー・ダンを彷彿させる「Me Myself And Dollar Hell」といった先行曲のように、ポップな曲はよりアーバンAOR~City Pop寄りになる一方で、ボッサ風味で始まりスペイシーなドラムンベースに変身する「I Don’t Mind The Wait」のようにプログレッシヴな展開を見せる曲もあり、奥行きが増した出色の出来映えとなっていました。

オープニング・クラシックはプーランクのチェロ・ソナタを。やっぱり深みのあるチェロの音色は秋にぴったりですね。プーランクと言えば、前回のコメントで『古くて素敵なクラシック・レコードたち』に触れた村上春樹は彼の作品が大好きだそうで、音楽にまつわるエッセイ集『意味がなければスイングはない』でも一章を割いて取り上げていますね。そこではピアノ曲と歌曲について言及されているのですが、チェロ・ソナタもなかなか味わい深いので、気になる方はぜひ聴いてみてください。そうそう、村上春樹の同名短編をベースにした映画『ドライブ・マイ・カー』が公開され、僕の周囲ではけっこう話題になっていました。橋本さんからも称賛のメッセージが来ていましたよ。作品内で使われていた石橋英子の音楽も重要なポイントでいい働きをしていましたね。今回はそのテーマ曲をピックアップしています。

今回の大きな特集は二本立て。第一特集は「Walk In The Park~秋の公園ですごすサニーな午後」です。そのインスピレイションを与えてくれたのがレジー・スノウの2021年作『Baw Baw Black Sheep』。前作『Dear Annie』もそうでしたが、彼の作品は芝生の上で聴きたいようなピースフルなヴァイブにあふれたものばかり。Liv.eやLedisi、ギル・スコット・ヘロンにダイアン・シューアなど、僕のファイヴァリット・サニー・チューンを新旧織り交ぜてみました。コロナ以前は気のおけない友人たちと公園でピクニックをよくやっていたのですが、そのBGMにしたいようなイメージで選曲していましたね。第二特集はふと吹いてきた秋風のようなプディトリウム「Viajante」から始まります。その名もずばり「センティメンタルな秋」。イメージの中核はポール・サイモン『時の流れに』。このアルバムは学生時代からの愛聴盤で、僕の中では「ニューヨーカー短篇集が流れてきた」という感じの一枚。アルバムの表題曲「Still Crazy After All These Years」を今回も選びましたが、終わってしまった愛について歌われる「I’d Do It For Your Love」も一時期からは同じくらい好きな曲です。昔は「暗い曲だなー」くらいにしか思っていなかったのですが、ビル・エヴァンスがトゥーツ・シールマンスとのデュオ・アルバム『Affinity』で取り上げていて、「実に美しい曲だ!」と評価が激変しました(笑)。こちらもブレッカー・ブラザーズやエラ・フィッツジェラルド&ルイ・アームストロングなど、秋のマイ・スタンダードを取り揃えてお届けします。『Cool Struttin’』で知られるジャズ・ピアニスト、ソニー・クラーク「My Conception」は、出だしの部分がビル・エヴァンスの「Waltz For Debby」に似ているという説があるんですよね。二人は個人的な親交があったようで、クラークの没後にエヴァンスは「N.Y.C.’s No Lark」という曲を捧げています。落ち着いたハンク・モブレイのテナーが深まりゆく秋を感じさせます。実質的なエンディングは、今年の「usen for Cafe Apres-midi」チャンネルの新人賞最有力(?)Laufeyがロンドンのフィルハーモニア管弦楽団をバックにして歌う「Let You Break My Heart Again」。晩秋の黄昏どきのような余韻を残し、セレクションはいよいよ年末~クリスマスへと向かっていきます。

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Daniel Müller-Schott & Robert Kulek『Debussy / Poulenc / Franck / Ravel: Music For Cello & Piano』
Mild High Club『Going Going Gone』
Cleo Sol『Mother』
Little Simz『Sometimes I Might Be Introvert』
Clairo『Sling』
Lorde『Solar Power』
石橋英子『Drive My Car Original Soundtrack』
Rejjie Snow『Baw Baw Black Sheep』
Tom Misch『Quarantine Sessions』
Jordan Rakei『What We Call Life』
Homeshake『Under The Weather』
Brendan Eder Ensemble『Cape Cod Cottage』
Paul Simon『Still Crazy After All These Years』
Pudditorium『episode:別れ』
Sonny Clark『My Conception』
Laufey & Philharmonia Orchestra「Let You Break My Heart Again」

Lunch-time~Tea-time 水曜日12:00~16:00

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