見出し画像

Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew

2020 Winter & Christmas Selection(12月1日〜12月25日)

橋本徹(SUBURBIA)を始めとする
「usen for Cafe Apres-midi」の選曲家17人が
それぞれのセレクトした音楽への思いを綴る
「Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew」

詳しい放送内容はこちら
D-03 usen for Cafe Apres-midi
http://music.usen.com/channel/d03/



橋本徹(「usen for Cafe Apres-midi」プロデューサー) Toru Hashimoto

特別な年の特別な季節、甘美に華やいだいつもの風景は望むべくもないが、12月の街並み、その装いや表情を少しでもささやかな幸せで彩ることができたらと希いながら、メロウ&グルーヴィーで心地よく、そして心暖まる楽曲を中心に、今回も計34時間分を新たに選曲した。
毎日16時から18時までの特集タイムも、「2020 Urban-Mellow Winter & Christmas」と題して。特集以外の時間帯も、去年〜今年に発表されたクリスマス・ソングを織りまぜながら、ハートウォームに構成している。
アプレミディ・レコーズで日本盤CDをリリースしたばかりの、「2020年ブラジル・ミナス音楽No.1アルバム」の呼び声高いマルコス・ルファートの『Vata』を筆頭に、相変わらずニュー・アライヴァルのお気に入りも枚挙に暇がない。
アルバムなら、やはりブラジルのルエジ・ルナとゼ・マノエウ、そしてナイジェリアのウィズキッドと南アフリカのシミーにセバ・カープスタッド、さらにコモンやセン・モリモト、いずれも“Songs”という言葉がタイトルに付けられているのが印象的だった、イスラエルのスタヴ・ゴールドベルグ、ソロ・ピアノ・ジャズのフレッド・ハーシュ、フォーキー&ミニマルなエイドリアン・レンカーが、愛聴盤ベストテンという感じだろうか。
配信でこの夏リリースされていたマリのパーカッショニストSidiki Kamaraの『Yafa』は、先日カフェ・アプレミディ21周年パーティーでYoshiharu Takeda(祝・名作『Aspiration』アナログ化!)がかけていた、優しく心に沁みわたる2020年ベスト・アフロ・スピリチュアル・ジャズ。ディープ&ジャジーなKelvin Momoを始め南アフリカAmapianoも留まることを知らない活況を呈していて、ホープ・タラやアーロ・パークスからデュヴァル・ティモシーの好サポートも光るcktrlまでUKソウル〜UKジャズも引き続き大豊作。
シングルなら、今春亡くなったトニー・アレンのドラムも冴えるソウル・II・ソウルのアフロビート・リミックス、Free Soulファン歓喜のエンマ・ノーブルによるマーヴィン・ゲイ・カヴァー、来春のニュー・アルバムが楽しみになるグレッチェン・パーラトの新曲あたりを特筆したいが、特に今回のセレクションで活躍してくれたフェイヴァリット作のジャケットを32枚掲載しておくので、曲目リストと併せてチェックしていただき、その中身の素晴らしさにも触れてもらえたら嬉しい。

それでは皆さん、大変な一年になりましたが(コロナ禍によってアーティストもリスナーも音楽と向き合う時間が増えたからか、新作のリリースという意味では例年以上に充実していたと思います)、ポジティヴな気持ちで来年を迎えられることを祈って、心躍らせることは容易ではありませんがせめて、心安らぐ素敵なウィンター&クリスマスを!

画像1

Marcos Ruffato『Vata』
Luedji Luna『Bom Mesmo É Estar Debaixo D'Água』
Zé Manoel『Do Meu Coração Nu』
Sidiki Camara『Yafa』
Common『A Beautiful Revolution (Pt 1)』
WizKid『Made In Lagos』
Simmy『Tugela Fairy (Made Of Stars)』
Kelvin Momo『Momo's Private School』
Seba Kaapstad『Konke』
Soul II Soul『Back To Life (Zepherin Saint Remixes)』
Emma Noble「Woman Of The World」
Hope Tala『Girl Eats Sun』
Arlo Parks『Collapsed In Sunbeams』
cktrl『Robyn』
Sen Morimoto『Sen Morimoto』
Masego『Studying Abroad』
Mary Halvorson's Code Girl『Artlessly Falling』
Josh Johnson『Freedom Exercise』
Fred Hersch『Songs From Home』
Laraaji『Moon Piano』
Gretchen Parlato「Wonderful」
Stav Goldberg『Songs』
Prophecy Playground『Comfort Zone』
Bill Callahan『Gold Record』
Matt Berninger『Serpentine Prison』
Adrianne Lenker 『Songs And Instrumentals』
This Is The Kit『Off Off On』
Bahamas『Sad Hunk』
Sam Amidon『Sam Amidon』
Ferran Palau『Kevin』
Barbara Casini & Toninho Horta『Viva eu』
María Suárez『Fabulario』

Dinner-time 土曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 日曜日0:00~10:00
Brunch-time 月曜日10:00~12:00
Brunch-time 火曜日10:00~12:00
Brunch-time 水曜日10:00~12:00
Brunch-time 木曜日10:00~12:00
特集 月曜日16:00~18:00
特集 火曜日16:00~18:00
特集 水曜日16:00~18:00
特集 木曜日16:00~18:00
特集 金曜日16:00~18:00
特集 土曜日16:00~18:00
特集 日曜日16:00~18:00



本多義明(「usen for Cafe Apres-midi」ディレクター) Yoshiaki Honda

格好よくはないけど微笑ましいジャケットのクリスマス・アルバム。us the Duoというフォーキー・ポップ・デュオの『Our Favorite Time Of Year』です。今回の2020 Winter & Christmas Selectionでも何曲か選びましたが、ハイライトはやはりポール・マッカートニー「Wonderful Christmastime」のカヴァーでしょうか。もう1枚はThe Polyphonic Spreeの2012年のクリスマス・アルバム『Holidaydream: Sounds Of The Holiday, Vol.1』。こちらはジョン・レノン「Happy Xmas(War Is Over)」のカヴァーが目玉かな。ワムの「Last Christmas」も大好きだけど、ポールとジョンのこの2曲はやはり外せない。

画像2

us the Duo『Our Favorite Time Of Year』
The Polyphonic Spree『Holidaydream: Sounds Of The Holiday, Vol.1』

Lunch-time~Tea-time 木曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 金曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 土曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 日曜日12:00~16:00



中村智昭 Tomoaki Nakamura

チリー・ゴンザレスの『A Very Chilly Christmas』でファイストが歌うオリジナル新曲「The Banister Bough」は、ずっと昔から歌い継がれてきたスタンダードのようにさえ聴こえる。新型コロナウイルス禍にある2020年のクリスマス・シーズンに、これ以上相応しい楽曲があるだろうか。2010年代のクリスマス・アルバムと言えばトレイシー・ソーン『Tinsel & Lights』だが、本作はそれに匹敵する定盤として、2020年代の12月を毎年静かに彩ることになるだろう。

画像3

Chilly Gonzales『A Very Chilly Christmas』

Dinner-time 月曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 火曜日0:00~2:00



添田和幸 Kazuyuki Soeta

今年ラストのクリスマス・セレクション。コロナ禍で疲弊した心に灯をともすような心温まる選曲を心がけました。クリスマス・アルバムでは前作をたびたびセレクトしたLeslie Odom Jr.やIgnasi Terraza & Randy Greerの新作。FeistをフィーチャーしたGonzalesも嬉しかったですね。

画像4

Chilly Gonzales『A Very Chilly Christmas』
Leslie Odom Jr.『The Christmas Album』
Ignasi Terraza & Randy Greer『Around The Christmas Tree』
Nicholas Krgovich & Friends『Pasadena Afternoon』
Sunset Rollercoaster『Soft Storm』
Otis Kane『Therapy』
Abrahamblue『Tracks I Made Last Summer』
Better Person『Something To Lose』
Stav Goldberg『Songs』
Georgie Sweet『Misunderstood』
Nathan Thomas『Still Water』
Marie Dahlstrom『Like Sand』
V.A.『Blue Note Re:imagined』
Sen Morimoto『Sen Morimoto』
Arlo Parks『Collapsed In Sunbeams』
YellowStraps『Yellockdown Project』
Glenn Astro『Homespun』
James Tillman『Modern Desires』
Dougie Stu『Familiar Future』
Okvsho『Kamala's Danz』
Matthew Halsall『Salute To The Sun』
Júlio Resende『Fado Jazz Ensemble』
Jamael Dean『Ished Tree』
Loris S. Sarid『Music For Tomato Plants』
Jusell, Prymek, Sage, Shiroishi『Fuubutsushi』
Selah Broderick『Witnessing』
Lila Tristram『Our Friends』
Ólafur Arnalds『Some Kind Of Peace』

Dinner-time 火曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 水曜日0:00~2:00



中上修作 Shusaku Nakagami

さて皆様はどんな一年だったでしょうか。みえないものに右往左往させられた年でもありましたが「世界がかわった」という表現は大袈裟ではなく、きっとその通りなのでしょう。「人」が「人」の意識を変えるのはなかなか大変ですが、「変調をきたしたムード」は「人」の意識をこんなにも簡単に変えてしまう。そして変化した意識はいやおうなく人から人へと伝播していく。

意識、といえば或る日、当店(私の本業は骨董商です)のお客様Aさんは「自分が楽しむことを先延ばしにしない」とおっしゃいました。時間は無限と感じていた子供のころとは違い、おぼろげにも先行きがみえてきた刹那、近しい人の死を経験したことで芽生えた意識なのだそうです。コトバにするのは簡単ですが、雑事にまみえた大人の社会では(有益無益とわず)実行にうつせず先延ばしにしがちではないでしょうか。その方は女性なのですが、木工教室で椅子を作ったかとおもえば、ある日はドラムを叩き、そして骨董も心から楽しんでおられます。私はAさんと同じようにふるまえるのだろうか。感動が素直に動力源となりうるのだろうか。答えを先延ばしにする自分であってはならないと思いました。​​​​​​​

音楽からは前へとすすむパワーをもらえます。このクリスマス・シーズンが皆様にとって限りなくハッピーでありますように。そして、ハッピーな瞬間にチャンネルが「usen for Cafe Apres-midi」になっていますように。「メリー・クリスマス」──小声でも遠くの人に聴こえますように。

画像5

Sufjan Stevens『Songs For Christmas』

Dinner-time 水曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 木曜日0:00~2:00



髙木慶太 Keita Takagi

クリスマス・アルバムをリリースすることは、特にシンガーにとってある種の到達点であるように思う。
望んだとしても誰もが届く境地ではないだろう。2枚目ともなればなおさらだ。
だからなのか、これまで以上に歌詞とメロディーを慈しみ噛み締めて歌う姿に心を打たれる。
マーヴィン・ゲイが降臨したかのようなタイトル曲が白眉。

画像6

Brian McKnight『I'll Be Home For Christmas』

Dinner-time 木曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 金曜日0:00~2:00



FAT MASA

今年はいつものような賑やかなクリスマス・イヴェントがしにくい中、家で聴くには最適な内容のチリー・ゴンザレスのクリスマス・アルバム。今の世情にあった内容だが、コロナ禍以前に制作されたというもの。
ゴンザレスのソロ・ピアノ・シリーズがクリスマス・アルバムになったような印象。クリスマス・ソングの伝統的な曲から現代の定番曲まで、なんの違和感もなくずっと聴いてしまいたくなる一枚です。

画像7

Chilly Gonzales 『A Very Chilly Christmas』

Brunch-time 金曜日10:00~12:00



三谷昌平 Shohei Mitani

いよいよクリスマス・シーズンが到来。今年はアメリカのダラス出身の女性シンガー・ソングライター、ジリアン・エドワーズの「All My Christmas」を紹介したいと思います。2014年リリースの4曲入りEPの冒頭に収録された作品で、とにかく彼女のキュートなヴォーカルが印象的なナンバー。途中から入ってくるベルの音もクリスマス気分を盛り上げてくれます。コロナ禍で引き続き厳しい状況は続いておりますが、皆様、楽しいクリスマス・シーズンを!

画像8

Jillian Edwards『All My Christmas』

Dinner-time 金曜日18:00~22:00



渡辺裕介 Yusuke Watanabe

今年のクリスマス。
パーティーやイヴェントとしてでなく、古きよきアメリカン・ファミリーのクリスマスを味わう・味わえる自宅での穏やかな時間が増えそうです。
しかしながら、この人肌恋しいこの季節でも、街のスーパーやファストフードなどでも「usen for Cafe Apres-midi」は心温まる空間を演出しております。 
今年、今まで気づかなかったクリスマス・アルバム、ジョン・デンヴァーの『Rocky Mountain Christmas』とアレサ・フランクリンの『This Christmas, Aretha』と出逢えて、昨年までと異なる選曲になりました。ジョン・デンヴァーのこのジャケットとどこまでも穏やかなフォーク・クリスマス。アレサのアーバンなミディアム・ソウルフル・クリスマス。
クリスマス・ソングを深く知る年になりました。

画像9

John Denver『Rocky Mountain Christmas』
Aretha Franklin『This Christmas, Aretha』

Dinner-time 金曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 土曜日0:00~2:00



富永珠梨 Juri Tominaga

2020 Winter & Christmas Selectionのベストワンには、アメリカはメリーランド州エリコットシティー在住、コリアン・アメリカンのシンガー・ソングライター、Sam Ock(サム・オック)が2016年にリリースした『Wintery』をセレクトしました。しあわせなホリデイ・ブランチに心地よく馴染む、アコースティック・フィーリンなクリスマス・アルバムです。サムのジェントリーで伸びやかな歌声と、フレンドリーで心弾む楽曲の数々に、思わず笑顔がこぼれます。キャンドルの柔らかな灯りのように、心をふわりと温めてくれる、リラックスしたナンバーがちりばめられた、多くの人々に愛されるであろうマジカルな一枚。絵本の世界のような愛らしいジャケット・アートにも心奪われます。大切な人へのクリスマス・ギフトにもおすすめです。メリー・クリスマス! 皆さんにとって笑顔あふれる素敵なクリスマスになりますように。

画像10

Sam Ock『Wintery』

Brunch-time 土曜日10:00~12:00



小林恭 Takashi Kobayashi

毎年10月末から選曲の準備をはじめるWinter & Christmas Selectionですが、例年なかなかクリスマス気分になれず苦労しています。
今年はコロナ禍の中、不安な年をすごした影響なのか、クリスマス・ソングが深く心の奥底にまで響いてきて、選曲しながら多くの偉大なミュージシャンが作った曲に癒されました。
なので祈るように、誰もが穏やかな雰囲気で暖かなひとときを迎えられたらいいなと、気持ちを年末に置き換えて選曲できました。
楽しんでもらえればとても嬉しいです。

画像11

Chris Mastheim『Chris Mast Style』
Sidibe「Christmas Time Is Here」
Hope Tala『Girl Eats Sun』
Judit Neddermann & Meritxell Neddermann「Santa nit」

Dinner-time 土曜日18:00~22:00



ヒロチカーノ hirochikano

誰しもが困難な出来事に直面した2020年だからこそ、いつにも増して「大切な人との時間が少しでも素敵で幸せな気持ちになりますように」という願いをこめて、今年のクリスマス選曲を贈ります。そんな中からまず紹介するのは、時計じかけの魔法をイメージしたかのような切ない効果音アレンジが絶妙だったAquiloの「So Close To Magic」。続いては、牧歌的SSWサウンドが心温まるGreat Lake Swimmersの「They Don't Make Them Like That Anymore」。Jackson Brownとの掛け合いが美しいPhoebe Bridgersの「Christmas Song」は、 “You don't have to be alone to be lonesome(孤独になるために一人でいる必要はありません)”というサビの部分の歌詞が、今の時代の人々の心に染み入るクリスマス名曲です。ラストは改めて再発見となった、ブロッサム・ディアリーへのオマージュを感じる抑制の効いたチャーミングな唄声が心に響いたMindy Gledhillの「Christmas Waltz」を。Merry Christmas & Happy Holyday!

画像12

Aquilo「So Close To Magic」
Great Lake Swimmers『They Don't Make Them Like That Anymore - EP』
Phoebe Bridgers「Christmas Song」
Mindy Gledhill『Winter Moon』

Brunch-time 日曜日10:00~12:00



吉本宏 Hiroshi Yoshimoto

シアトルをベースに活動をするThe Cosmotonesからのクリスマス・ソング。印象的なベースのフレーズからスネアとエレクトリック・ピアノが重なり、パトリック・ウリンスキの気怠く甘い歌声が聖夜に響く。馴染みのあるクリスマス・ソングもモータウンのソウルとグルーヴからインスパイアされたというバンドのサウンドによってメロウに生まれ変わる。メロウ・リトル・クリスマス!

画像13

The Cosmotones feat. Patrick Ulinski「Have Yourself A Merry Little Christmas」

Dinner-time 日曜日18:00~22:00



高橋孝治 Koji Takahashi

今年は心の灯りが消えそうになるときもありましたが、クリスマスがやってきて、街は色とりどりの美しい灯りに包まれました。煌びやかで暖かな灯りに彩られた景色を見ると、心の中は落ち着き、暖かくなります。そしてこの清らかに彩られた聖なる夜に願いごとをするのですが、今年は世界中の多くの人が同じ想いを抱くことでしょう。

そんな思いで紡いだ今年のクリスマス選曲は、フィル・ダニューとテイラー・ジョンソンという二人のアーティストによるコラボレイション・ユニット、Leucadiaの聖らかで清楚な「Silent Night」からスタート。続いてニュージャージー出身のRich Andruska.の音楽プロジェクト、クラウズ・アンド・ソーンズの笑顔をもたらすクリスマス・ソング「Deck The Halls」をピックアップし、The Pains Of Being Pure At Heartの元ドラマーとしても知られるカート・フェルドマンのプロジェクト、Ice Choirによる「Cut Down The Tree」や、スリーピング・アット・ラストの「Happy Xmas War Is Over」など、自分のクリスマス選曲では定番ソングとなった作品を織り交ぜながら、2019年に公開されたジュディ・ガーランドの伝記映画『ジュディ 虹の彼方に』のサウンドトラックに収録された、オスカー女優のレネー・ゼルウィガーとルーファス・ウェインライトのデュエット曲「Have Yourself A Merry Little Christmas」や、マンチェスター出身のアビー・オザードによるイギリス人男性歌手グループ、イースト・17のクリスマス・ソングをカヴァーした「Stay Another Day」、ケン・ローチ監督の2016年公開映画のタイトルと同じ名前を持つロサンゼルス出身のアーティスト、ダニエル・ブレイクの「The Ones You Love」、テキサス州オースティンを拠点に活動している夫婦デュオAeseaesのクリスマス・アルバム第2集『Christmas Songs, Vol.2』収録の「Carol Of The Bells」、サラ、ハンナ、エヴァ、リサの4姉妹からなるフォーク・グループのシェルというユニットが、テネシー州ナッシュヴィル出身のクリスチャン・バンド、ジャーズ・オブ・クレイとコラボレイションした「Wonderful Feeling / Auld Lang Syne」など、初出となるクリスマス・ソングも新たにピックアップして2020年のクリスマス・セレクションを構成してみました。
クリスマス・ソング以外では、ベニー・シングスがマック・デマルコ をフィーチャーしたニュー・シングル「Rolled Up」や、「君が待っている家に今夜帰るよ」と優しく語りかける北ウェールズのランディドノー出身のシンガー・ソングライターCourteous Thiefのハート・タッチングなウィンター・ソング「Mountains And Sea」、Ice Choir「Cut Down The Tree」と相性が良いため、続けてセレクトしてみたロンドン出身の女性アーティスト、ケリー・リー・オーウェンズの「L.I.N.E.」など、クリスマスの雰囲気にぴったりの良質な作品もセレクト。コロナの影響でリリースが延期されていたルーファス・ウェインライトの新作『Unfollow The Rules』からも「This One's For The Ladies (That Lunge!)」をピックアップし、さまざまな女性アーティストとコラボレイションした作品が収録され、来年にリリースが予定されているペイパー・カイツのニュー・アルバム『Roses』より、先行シングルとして発表された「By My Side」と「For All You Give」も、クリスマスの夜空にロマンティックに響くことでしょう。

そして今年は、本当に今までに経験したことがない日々を過ごした年でしたね。しかしクリスマスということで、最後に自分にとって素敵なプレゼントとなった嬉しい出来事をちょっとだけ書いてみようと思います。まずひとつは(自分はいわゆるハルキストではありませんが)村上春樹が新たに翻訳して8月に出版された小説が、アメリカの小説家であるカーソン・マッカラーズが1940年の23歳のときに執筆した『心は孤独な狩人』だったことです。村上春樹は出版の際に「最後のとっておき」という素敵なコメントをされていたので余計にうれしくなりましたが、なぜここまで嬉しい気持ちになったかというと、この小説を原作として1968年に公開された、アラン・アーキンやソンドラ・ロックをキャストに制作された映画『愛すれど心さびしく(The Heart Is A Lonely Hunter)』は間違いなく自分の好きな映画のベスト作品のひとつに入る映画だからです。以前このことは「usen for Cafe Apres-midi」で映画音楽を特集したときのコメントにも書きましたが、大きな影響力を持つ村上春樹が翻訳を手掛けたことで、多くの人がこの作品に興味を持ってくれるのではないかと思うととても嬉しくなります。他にはコロナ禍以降、昔のTV放送の日本語の吹き替えの世界にどっぷりとハマったことは何度もここで書きましたが、『愛すれど心さびしく』同様にフェイヴァリット映画のひとつである、ハーパー・リー原作の『アラバマ物語』(ちなみにこの映画は1962年の12月25日のクリスマスに初めてアメリカで公開されました)の1972年に日本のTVで初回放送された『日曜洋画劇場』版の日本語吹き替え放送を観ることができたことです。この映画は吹き替え放送に興味を持つ前から、オリジナル版の他に日本語吹き替えのDVDを所有していたのですが、DVD版吹き替えは自分的にしっくりくる出来映えではなく、鑑賞を途中でやめてしまった苦い経験がありました。しかし主役のグレゴリー・ペック役に、伝説のラジオ番組『ジェットストリーム』のナレイターを務めていた城達也、娘のスカウト役にムーミンの旧アニメイション版でミイの声を担当した堀絢子、そして兄のジェム役にはドラゴンボールの孫悟空と言えば言わずもがなの野沢雅子を配役とした『日曜洋画劇場』版は、この素晴らしい映画に見事にハマっていて、いまだソフト化されていないこのヴァージョンで鑑賞できたことはとても嬉しい出来事でした。
そしてもうひとつ嬉しかったのが、フジテレビ系列の関西テレビで、おそらく80年代か90年代に放送された『小さな恋のメロディ』の日本語吹き替え放送を鑑賞できたことでした。吹き替えはマーク・レスター役を内海敏彦、トレイシー・ハイド役を杉田かおるが演じた通称『日曜洋画劇場』版で、この吹き替え自体はDVDにも収録されているので珍しいものではないのですが、このときの放送では映画終わりに流れる声優紹介のテロップに、映画とは全く関係のないスティーヴィー・ワンダーの「Christmastime」がBGMとして使われていたのです。このことから放送当時はクリスマス・シーズンだったことがうかがえるのですが、この選曲が鑑賞時にとてもロマンティックに響き、編集者の想いがあふれるとても素敵な演出だと思いました。

それでは皆さん、メリー・クリスマス!

画像14

Leucadia「Silent Night」
Clouds And Thorns「Deck The Halls」
Renée Zellweger『Judy』
Abbie Ozard「Stay Another Day」
Daniel Blake「The Ones You Love」
Aeseaes『Christmas Songs, Vol. 2』
Jars Of Clay & Shel「Wonderful Feeling / Auld Lang Syne」
Benny Sings feat. Mac DeMarco「Rolled Up」
Courteous Thief『Symphony』
Kelly Lee Owens『Inner Song』
Rufus Wainwright『Unfollow The Rules』
The Paper Kites『Roses』

Dinner-time 日曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 月曜日0:00~2:00



山本勇樹 Yuuki Yamamoto

短い秋を終えて、すっかりマフラーとコートが手放せない季節となりました。例年なら、今頃は忘年会やクリスマスといった行事の日程を立てたりして、忙しいのですが、残念ながらそういう雰囲気ではなさそうです。少しでも音楽が癒しの役割になれば、というささやかな思いをこめて、今回はメロウでハートウォームなクリスマス・ソングと、この冬に聴きたいフォーキーなシンガー・ソングライター、エレガントなサロン・ジャズを織り交ぜて選曲を組んでみました。その中でも、とくに一押しなのが、カナダのオンタリオ州出身のシンガー・ソングライター、スコット・オーです。彼が発表している作品はどれも素晴らしく、まるでガラス細工のような繊細な輝きをもった音楽ばかりです。このスタンダード曲のカヴァーは、2019年末にひっそりと配信限定で発表されていました。その祈るような歌声が、胸の奥に響き、ふっと幸せが舞い降りてくるような、そんな気持ちになります。

画像15

Scott Orr「The Christmas Song (Acoustic Cover)」

Lunch-time~Tea-time 月曜日12:00~16:00



武田誠 Makoto Takeda

たぶん街は喧噪もうすれ、もし誰かとこの日をすごすのであれば、そこには忘れていたクリスマス本来の温もりに満ちたとても親密な空間が生まれるんじゃないか、なんて思えてくる特別な年の特別な日。そんなことを考えながら、例年同様に新旧織り交ぜたクリスマス・チューンやこの時期に馴染むハートウォームな新曲をピックアップしお届けします。
いつもながら選曲の締め切り日までに新作のクリスマス・アルバムが出そろわないことが悩みのひとつではありましたが(各セレクターの選曲リストが公開されれば、ただ自分のリサーチ不足だったなんてことを痛感したりしますが……)、今年はなんとかThe Bird And The Beeの『Put Up The Lights』が入手できたことでセレクションの方向性も決まり、よかったです。
それでは皆さまのもとへ、静かで穏やかな素敵なクリスマスが訪れますように。メリー・クリスマス。

画像16

The Bird And The Bee『Put Up The Lights』
Laura Veirs『My Echo』
Shaina Hayes feat. Thanya Iyer「However You Holiday」
Johnny Payne feat. The Salamanders「Christmas Island」
Johanna Samuels「High Tide For One」
Wilder Adkins「Colors」
Helado Negro feat. Flock Of Dimes「Lotta Love」
Joey Pecoraro「My Trouble With Christmas」

Lunch-time~Tea-time 火曜日12:00~16:00



waltzanova

今年のWinter & Christmas Selectionは、例年と大きくコンセプトを変えたというわけではないのですが、コロナ禍ということもあってか、ややホーム・リスニング寄りの内容になったと思っています。今年や昨年リリースされたクリスマス&ホリデイ・ナンバーとここ最近のジャズを中心にセレクションを構成しました。

今回も選曲にまつわるエピソードをいくつかご紹介しますね。まずはジョー・エスコバーの「Christmas Time’s Around The Corner」という曲について。ジャジーで洒脱なクリスマス&ホリデイ・ソングで、この時期にぴったりの素敵なナンバーです。猫が写っているジャケットも可愛らしいですよね。この曲、Spotifyに紹介してもらったんですが、ジョー・エスコバーは実を言うと前回もエントリーさせていました。その名も「Donald Trump Blues」! 吾妻光良&スウィンギン・バッパーズもかくやというイカしたジャンプ・ナンバーで、そのテの音が好きな方には大推薦なのですが、この人、相当トランプのことが嫌いらしく、「旅立てジャック」を替え歌にした「Hit The Road, Trump」も2017年にリリースしています。ジャケも凄いので、気になる方はチェックしてみてください。で、トロンボーン奏者/ヴォーカリストであるエスコバー氏のことをさらに調べてみると、どうやらレア・グルーヴ~フリー・ソウル名盤で知られるファンク・バンド、ストラット(Strutt)のメンバーのようなんですよね。こういうのって本当にこのコラムにしか書く機会がないので、音楽ファンとして共有してもらえると何よりです(笑)。

エピソードふたつ目は、昨年書いていなかったということに気づきましたが、ヴィンス・ガラルディのクリスマス・アルバムの3インチの話です。昨年のRSDアイテムとして発売されたのですが、ミニ・ポスターも付いていて、コレクション欲をそそるアイテムでした。4曲がランダムに封入されている仕様だったので、最初はとりあえず2枚買ってみました。お目当てはもちろん「Christmas Time Is Here」です。しかし、入っていたのは「Linus And Lucy」と「Hark, The Herald Angels Sing」。「Christmas Time Is Here」は欲しいのですが、とはいえ何枚も買いすぎると、どハマりして無限ループに陥るな、という気持ちにもなり、翌日追加でもう一枚購入。これが当たりでした。見事に念願の「Christmas Time Is Here」をゲット! 残るは「Skating」で、この曲も大好きなのですが、さっき書いた理由でダブりが増えていくのはもったいないと思い、3打数3安打という現状で打ち止めにすることにしました。今年はヴィンス・ガラルディ・ヴァージョンは入れていないのですが、クリストフ・ベック、マライア・キャリー、クルアンビン版を選んでいるので、名曲の名ヴァージョンをたっぷり楽しんでいただければと思います。

Winter & Christmas Selectionの終わりはいつも「今年最後の一曲です!」みたいなテンションで選ぶのですが(クリスマス後にBest Selectionもあるのですが、なぜか年の瀬気分になってしまいます)、今年はグレゴリー・ポーターの「Thank You」がその役割ですね。最初に聴いたときから、年末に使おうとずっと温存していました。3年前のWinter & Christmasでも彼の「Smile」をエントリーしたのですが、この人にはどことなく年末感というか、しみじみしたものを感じさせるところがあるのかもしれませんね。「usen for Cafe Apres-midi」の15周年を記念したコンピレイションCD『Music City Lovers』でも、小林恭さんが「Be Good (The Lion’s Song)」を選ばれていましたし。あまりストレートに感謝を述べるのが得意なタイプではないのですが、心から“Thank You! Thank You! Thank You!”ということで、2021年もよろしくお願いいたします。

画像17

Vladimir Tropp『Tchaikovsky-Les Saisons, Op37b / Rachmaninov-Morceaux de Fantaisie, Op3』
Terrace Martin feat. Alex Isley & Kenneth Crouch「The Christmas Song」
Joe Escobar「Christmas Time's Around The Corner」
Vulfpeck『The Joy Of Music, The Job Of Real Estate』
Seba Kaapstad『Konke』
Common『A Beautiful Revolution (Pt 1)』
Sen Morimoto『Sen Morimoto』
Gregory Porter『All Rise』

Lunch-time~Tea-time 水曜日12:00~16:00

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?