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技術力はお墨付き 今も開発を楽しむエンジニアの原動力となるもの

組み込み設計から完成品開発までこなすモノづくり企業ユー・エス・イー(USE Inc.)。ベテランエンジニアにインタビューし、エンジニアの魅力や、エンジニアとしての仕事の流儀、今の若手エンジニアへのメッセージをお届けします。


ソフトウェア開発部門技術統括を務め、技術力の高さに定評のある金子のインタビューをお届けします。

金子直人
USE歴27年
エンジニア歴27年


最初からエンジニアになろうと思ったわけではなかった

学生時代はゲーム作りを楽しんでいたが、当時のエンジニアへのイメージは

―金子さんは普段常駐先にいらしてなかなかお話する機会がないので、本日は楽しみにしていました。よろしくお願いいたします。まずUSE歴、エンジニア歴から教えていただけますか?

「よろしくお願いいたします。中途採用でUSE歴、エンジニア歴共に27年ですね。」

―入社前はエンジニアさんではなかったのですね。てっきりずっとエンジニアをされていたのだと思っていました。

「理系出身で学生の頃からプログラムを組んでゲームを作ったりはしていたので、エンジニアに興味はありましたが、就職する際に『エンジニア(プログラマー)35歳定年説(※1)』があったり、当時はソフトウェア産業の歴史も浅かったりして、長くは続けられない仕事というイメージがあったので別の仕事に就きました。けれどやっぱりモノづくりをしたいという気持ちが湧いてきて、USE Inc.に入社という経緯です。」

※1 エンジニア(プログラマー)が仕事をできるのは35歳まで、という都市伝説のように流布する話。現在も耳に(目に)することもあるが、USE Inc.の組み込み開発現場において、主力はむしろ35歳以上のエンジニア。

―なるほど、そうだったのですね。学生時代からゲームを作っていたというのは……?

「雑誌に掲載されたソースコードを自分でPCに入力したり、オリジナルのゲームを作ったりしていました。ちょうどファミコン世代なので、ゲームはとても身近な存在なのです。自分で作ったゲームを仲間内で一緒にやってみたり、お互いに批評しあったり……という感じで楽しんでいました。」

―そうですか、エンジニアとしての下地は十分にあったのですね。USE Inc.に入社してからはどんな開発を行ってきましたか?

「PCを使ったゲーム作成と組み込み開発とは(同じプログラミングとはいえ)違うところも多いので、最初はペリフェラルやマイコン機能の使い方、ハードウェアの知識含めてかなり勉強しました。実際に開発をするようになってからも私は1つのジャンルの開発に長く関わるというよりも、多種多様な開発に関わってきました。USE Inc.が開発してきたものは、ほぼ網羅していると思います。

オーディオ、車載メーター、ラジオやTV、携帯電話、CarPlay、アプリなどなど、1年~1年半くらいのスパンでプロジェクトが変わっていきました。ちょうど飽きてきた頃に開発するものが変わるので、気持ち新たに開発に取り組むことができていましたね。プラモデルを1つ作ると次のプラモデルが貰えるような感じです。入社して27年間転職こそしていませんが、開発するものが変わっていくので、気持ちをリフレッシュしながら今日まで続けられていると思っています。」

―確かに社内でも「金子さんといえばこのジャンルの開発」というイメージではなくて、「技術力の高さや改善などのツール開発」のイメージがあります。ツール開発含め、印象に残っている開発のお話を聞かせてください。

「そうですね、印象深いのはいくつかあります。

1つは、今でもお付き合いのあるベネッセさんの仕事を受けたばかりの頃です。教育玩具の開発を行っていた時に、PCで効率良く開発できるようなフレームワークを作りました

通常は実機がある状態でソフト開発をするのですが、その時は時間がなくて肝心の実機が手元にない状態でソフト開発を始める必要がありました。そこでフレームワークを作ってPC上で実機と同じように動作確認ができる環境を構築し、実機が完成した段階で実装するという新しい方法で開発をすることになりました。実機の製造とソフトウェア開発を並行して行うことで時間短縮にもなりましたし、実機ができてからもわざわざコンパイルして実機でプログラムを実行して動作確認する必要がなかったので、無駄な手間なく開発ができて、お客様だけでなく現場でもとても重宝されました。USE Inc.とベネッセさんのお付き合いもそれ以来ずっと続いています。

ツール関係でいうと、社内用の工数集計ツールを作ったこともありました。誰がどれくらい稼働しているか、どんな業務に関わっているかを、手軽に視覚化できるものです。こういう集計って大事なことですが、手間がかかるし、毎週発生するものですよね。社内で『なんとか効率良くできないか』と相談をうけて作ってみたものが、プチヒットしたことがありました。(※2)
※2 現在は社員数も多くなり、工数管理は外部システムを使用している。

―業務だけでなく、社内向けにも開発されていたのですね。金子さんにとって、こういったツール開発はどんな位置づけですか?

ツール開発とゲーム作成には共通点があるというが……?

この共通点がわかるのも、金子ならではの視点

「そうですね……、ちょっとおかしな表現に聞こえるかもしれませんが、ツールを作る時って、昔ゲームを作っていた時の感覚ととても似ているのです。」

―ゲーム作りですか?

「ユーザーがこれを使う時にどう感じるかを常に想像しながら作っていく点が同じなのです。誤解を恐れずに言うと、ゲームって実用的な機能を求められるわけじゃなくて、ユーザーがどう感じるかが全てですよね。ゲームの場合はユーザーが楽しいと思うかどうかだし、ツールの場合は使った人が使いやすいとか便利と思うかが大事ですよね。

あと、アイディアが重要という点も似ています。シンプルでも核となるアイディアが良ければ楽しんでもらえるし、役にも立ちます。逆にアイディアがが良くないといくら作りこんでも良いものにはならないんです。」

―確かに作る人じゃなくて、使う人が主役になっていますね。

「そうなんです。ちょっと難しい言い方をすると、ソフトウェアの品質特性(※3)のうち、普段の開発では、機能性が重視されています。求められる仕様や要件があって、その機能をどう実装していくかというところから考え始めて、開発を行っていくわけです。反対にツールやゲームの場合だと使用性がメインになります。使いやすさや使った時の感覚が最も大事なんですよね。学生の頃のゲーム作成の中で自然に考えていた経験が、仕事としてのツール開発に活きているのかなと思っています。」

※3 ソフトウェアの品質を評価する基準となる規格。
国際規格ISO/IEC 9126(JIS X 0129)において、機能性,信頼性,使用性,効率性,保守性,移植性の6つの特性と、それぞれの品質特性をさらに細分化した21の副特性が定められている。

いくつかの開発の作法で目指しているものは、ただ1点

―ゲーム作りは、金子さんにとって開発の原点ですしね。金子さんにとっての開発の作法のようなものはありますか?

設計は時間をかけて考えておくということですね。事前に納得いくまで考えてキレイな形を描いてから、作り始めるようにしています。深く考えずに手を動かしてしまうと、早く完成することはあっても、結局メンテナンスや不具合修正に時間がかかるんですよね。

メンテナンスは必ず発生しますし、不具合はない方が良いとはいえ開発においてはつきものです。設計のように開発工程の前段の完成度はその後の工程への影響が良くも悪くも大きくなるので、あとから苦しむことがないように設計を重視しています。設計を丁寧に考えて規則性があるものにしておくと、他の人に渡す時も楽になるんです。その規則性さえ伝えれば良いわけですから。

あと、『きちんと設計をする』と共通するかもしれませんが、事前準備をすること納期に先行した開発をすることも個人的には大事にしています。これは自分が楽しく開発するためでもあるのですが、納期に追いつかれてしまうと焦ってパニックになり効率が悪くなるし精神的にも辛くなります。また、なにか突発的なことが発生すると間に合わなくなってしまいます。納期に余裕をもって開発を進めておけば、その時間で普段見れない別の資料を見てみるとか知識を深堀してみるとか『より良くするため』に時間を使うことができるんですよね。競馬で例えるなら先行逃げ切り型のレース展開、というのが昔から開発しながら幾度となく思い浮かんできたイメージです。」

エンジニアは給与以外にも報酬を受け取ることができる

会社や社会に不安を感じるエンジニアへ送るエール

―なるほど、設計や準備も全て「開発を楽しむ」ことに繋がってくるのですね。金子さんの部署にも後輩エンジニアがたくさんいますが、なにかメッセージをいただけますか?

「わかりました。私自身も道半ばなのであまり偉そうなことは言えない、という前提を基にお伝えしますね。

今はどんな会社であっても『入ったから安泰』という世の中でもないし、エンジニアとして働く中で『このままで良いんだろうか? 』と考え悩むこともあると思います。私にもそういう時期はありましたし、誰でもあります。けれど、開発を通じて経験してきたことは自分を裏切ることはないし、どこまでも自分の糧になってくれるので、地道に経験を積み上げて、会社のためではなく自分のためのエンジニアライフを送ってほしいと思っています。

うまくいくプロジェクトだけでなく、うまくいかなくてうんざりするようなプロジェクトもありますが、どれも必ず終わりがあります。そして、また次のプロジェクトが始まります。また、エンジニアという仕事は、『自分の力で達成した充実感』や『楽しさ』というお金とは別の報酬も受け取ることができるやりがいのある仕事だと思っています。

私はあと10年はエンジニアとして仕事をしていくつもりですが、この先の10年も今までの経験を糧にして自分が楽しく納得できる開発をしていこうと思っています。」

―金子さん、ありがとうございました。


編集後記

いわゆる「優秀なエンジニア」にどんなイメージをお持ちでしょうか?
「寡黙で、困ったことがあるとすっと助けてくれる人」、私はこんなイメージを持っていました。そのイメージにぴったり当てはまるのが金子さんでしたが、お話をきいていると、とても少年っぽさを感じました。様々な種類の開発を楽しむ気持ち、締切に追われるとパニックになってしまう気持ち、使用する人の反応を想像して開発をする感覚、開発を楽しむために準備を整えること……、今までインタビューをしてきたどのエンジニアさんよりも、そんな少年の気持ちを大事にして開発をされているように聞こえました。

聞いた分だけ実のあるお話が聞けそうでしたが、お忙しい方なので今回はここまで。また別の切り口でお話を聞く機会があればお届けします。

インタビュー実施:2024年2月
常駐先の窓の大きなオフィスにて
Interview & Text 渡部美里

USE Inc. お問合せ先
https://www.use-inc.co.jp/contact/

USE Inc. 採用情報 
\独学知識からエンジニアを目指したい人 チャンスあります/
https://www.use-inc.co.jp/recruit/


vol.1 歴37年のエンジニアが若手に求める3つのスキル
vol.2 子どもの頃からの夢を叶えた生粋のエンジニアが薦める”興味を広げる”勉強法
vol.3 日本のモノづくりを支えてきたエンジニアが語る35年のエンジニア人生
vol.4 技術が代名詞になるほど専門性の高いエンジニアになる方法とは?
Vol.5 エンジニアとしての『プロフェッショナル』を極める
vol.6 エンジニアとして覚悟を決めた時
vol.7 技術もマネジメントも「伝える」「伝わる」エンジニア


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