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エンジニアとしての『プロフェッショナル』を極める

組み込み設計から完成品開発までこなすモノづくり企業ユー・エス・イー(USE Inc.)。ベテランエンジニアにインタビューし、エンジニアの魅力や、エンジニアとしての仕事の流儀、今の若手エンジニアへのメッセージをお届けします。


5回目は、定年を迎えても尚、プロ意識の塊と社内でも評判のエンジニアのインタビューをお届けします。

プロフィール:松尾浩補
エンジニア歴:37年
USE歴:24年


定年を迎えるまでの37年間で、開発『網羅』してきたものは?

近年に出荷台数がまた増えてきているガラパゴス携帯

松尾さん、お忙しい中お時間ありがとうございます。本日はよろしくお願いいたします。まず、エンジニア歴、USE歴からお伺いできますでしょうか?

「よろしくお願いいたします。エンジニア歴は37年、USE歴は24年ですね。今年ちょうど定年を迎えました。」

―現在は延長雇用で勤務されているということですね。前々回インタビューの鳥井さん(日本のモノづくりを支えてきたエンジニアが語る35年のエンジニア人生)に声をかけられての入社とお聞きしております。

「そうですね、大阪事務所立ち上げの際に声をかけられました、『携帯電話を一緒に作らない?』と。それまで携帯電話のサーバー側の開発をしていて、次は携帯電話の端末を作ってみることにしました。」

―なるほど、入社前から携帯電話には携わっていたのですね。最初に作った製品は覚えていらっしゃいますか?

「最初は白黒画面で、漢字やカタカナ変換といった日本語に対応した、今から考えると非常にシンプルなものでした。その後折り畳みができるようになり、カラー表示になり、カメラ機能がつき、ショートメールなどメールができるようになり……と、どんどん機能が追加されていきました。10年間携帯電話開発に携わり、いわゆるガラパゴス携帯(※1)はほぼ作ってきましたね。

※1 日本独自の機能や関連サービスが発達した携帯電話端末。略してガラケーとも言われる。

鳥井さんは『国内の音のなるもの網羅』河野さんは『純正CarPlay網羅』とお聞きしております。松尾さんは『ガラパゴス携帯網羅』なんですね。携帯電話事業はものすごく忙しかったと聞きますが、松尾さんご自身もそうでしたか?

春・秋・冬と年に3モデル出すというメーカーさんのサイクルがあったので、とにかく常に忙しかったですね。複数モデルの開発を並行していたので、次から次へと開発する必要がありました。夜中に不具合が出たからとメーカーさんから連絡がくることもありましたし、家に帰れないことも珍しくありませんでした。寝る間も惜しんで開発するという状態が10年ほど続きましたね。非常に大変ではありましたが、そんな働き方をしていたのも今となっては良い思い出になっています。

最後は取引のあったメーカーさんが携帯電話事業を売却することになり、終了しました。別会社の携帯電話を作り続けるという選択肢もありましたが、もうやりきったなという感覚もありました。」

―携帯電話開発の次は、どんなことをされていましたか?

「次は、カーナビですね。火を噴いて(業務上でトラブルが発生して)いたブルーレイ搭載カーナビ開発のプロジェクトがあって、鎮火させるために参加することになりました。それがいつの間にか、リーダー的立ち位置になって結局10年くらい携わりましたね。

その間にプラットフォームが変わるという大きな変化がありました。システム化されてLinuxプラットフォームになったので、それに合わせてのモデルチェンジが大変だった記憶があります。」

―こちらも10年携わったのですね。現在はどんなことをされているのでしょうか。

「今はe-BIKEのシステムツールの仕様書を作っていますね。実際にe-BIKEに乗るわけではありませんが、ある程度の機能は把握した上で、仕様書を作っています。」

『できて当たり前』のプロフェッショナルになるには

エンジニアとして「プロ」をどう定義する?

―松尾さんにぜひお聞きしたいと思っていたのが、『プロフェッショナル』についてです。数年前に全社会議の際に『私たちはプロです』というお話をされたというのをお聞きしました。松尾さんにとって、プロの定義とはどんなものでしょうか?

「そうですね、プロというのは『できて当たり前』というのが大前提にある人達です。『できない』もない、『諦める』もない、『投げ出す』もない。絶対に終わりがあります。その『終わり』にうまく持っていくことができる人がプロですね。

開発の世界なのでどうしても解決しない不具合もありますが、『できない』ままで終わるのは、仕事先にも製品のユーザーさんにもとても失礼だし、プロのエンジニアとして恥ずかしい話です。状況は同じだとしても、自分自身も周囲も納得して終わらせることができる人、これがプロだと考えています。

―なるほど、終わり方が大事ということですね。

「そうです。『終わりよければすべて善し』という言葉もありますしね。

『終わりにどう持って行くか』、やり方に正解はありません。どんどん新しいものが出てくる世の中なので、常に学習して自分の知識を増やしていく必要もあります。新しいものを身に着けて自分のものにしていくためには日々仕事をしているだけでは不十分で、仕事外の学びの時間も必要でしょう

さらに技術だけでなく、モノの考え方など全てにおいてブラッシュアップして、高みを目指していく姿勢も必要だと思っています。そして、その学び方は人それぞれのやり方があります。ですので、私としてのプロフェッショナルの定義はありますが、プロフェッショナルになる方法は人それぞれで、教えることはできないと考えています。

―なるほど、プロフェッショナルになる方法は人それぞれという考えなのですね。松尾さんが、こういったプロフェッショナル像をご自分の中で確立したきっかけはありますか?

「特別な出来事があったわけではありませんが、『人に負けたくない』という想いが強かったのだと思います。人ができないことを自分ならできるとか、新しい技術に対応できるというのはかっこ良いですよね。さらに提案した方法で仕事がスムーズに進んだり不具合が収束するなどの結果につながったらもっと嬉しいですよね。」

言われたものをただ作るのは、モノづくりではない

プロフェッショナルを目指すエンジニアが身に着けるべき力は

―温和に見える松尾さんから『人に負けたくない』という闘志メラメラの言葉が出てくるとは、ちょっと驚きました。USE.Incには50名を超えるエンジニアが在籍していて、開発歴の浅い若手も多いです。これからのエンジニアがプロフェッショナルな仕事をするためにどんな力が求められると思われますか?

「そうですね、まず1つ目は『要求分析力』。要求をかみ砕く力だと思います。

設計書に書かれたものを作っていくのがエンジニアです。しかし、設計書通りに作れば良いというのではなくて、『なぜその仕様になっているのか?』という背景を理解した上で、その意図を設計書に書き加えながら作っていってほしいのです。全て設計書に書いてあるわけではないのですよ。

『言われたことをただやっている』『指示されたものをただ作る』というのは、そもそもモノづくりではないんですよ。作るものは1つでも、その作り方はいくつもあります。その作り方にいかに想像力や知識を活かすか、ということです。

今われわれが関わっているe-BIKEを例にすると、とてもわかりやすいと思います。開発したソフトがe-BIKEに組み込まれて製品になると、それに乗る人がいる。つまり人の命に関わるものを作っていることになるわけです。PCに向かって仕事をしているとつい目の前の事に集中して、その奥に広がっているものを忘れがちにはなりますが、実際に使う人がいる、人の命に関わっているといったことまで考えて『ソフトを作る=モノづくりをしていく』という意識は持っていた方が良いと思います。

―ソフトを作る仕事との認識だと、確かに人の命に関わっているというところまでは意識しづらいかもしれないです。専門的な技術の他に、作る製品に対しての理解を深めていくことも重要ということですね。

「そうですね。『製品に対しての理解を深めて、実際に使う人の事を考えた上でのモノづくり』こそUSE Inc.のモノづくり精神だと思っています。USE Inc.の1つの製品に長く関わっていくという開発スタイルも、その精神で開発をしてきたからだと思うんですよね。

2つ目は、『自分の仕事のルールやポリシーをもって取り組んでいく』ということです。ちなみに私のルールは、『人に縛られない』です。そのために、人に負けないように、またスピード感をもって仕事をするようにしています。」

自分で考えてこそ仕事も楽しめてアイディアも浮かぶ

モノづくりのおもしろさ、仕事のおもしろさ

―ここでも『人に負けない』が出てくるのですね。確かに人ができないことができていれば、人に縛られることもないですよね。

「そうです。USE Inc.ではそういった働き方ができていました。

3つ目は、『何でも楽しむ気持ち』だと思います。1つ目にも通じることですが、指示されたことを指示されたようにやるだけでは、仕事の楽しさはなかなか感じられないものです。指示の背景や理由を考え、それに合わせたアウトプットができるよう自分なりに考えていくことで力はついていくし、自分で考えるからこそ仕事も楽しめるようになっていくと思います

その先に『こんなものを作りたい』とかアイディアが浮かぶようにもなってきますよね。そういう事ができるのが、モノづくりの楽しさなんですよ。

―『自分で考える』ことが仕事を楽しむ姿勢やモノづくりの楽しさに繋がっていくということなのですね。松尾さん、ありがとうございました。


編集後記

エンジニアであるということに、非常に誇りを持っている方だなと感じました。「ただ作る」のではなく、要求されたことに対して、常に一歩も二歩も踏み込んで考える、その上で作り方や表現方法を変えていくというのは、エンジニアだけでなく『仕事がおもしろくなる姿勢』として参考になりますね。

火を噴いているプロジェクトの鎮火のために……と聞いてから、頭の中にはいざという時に頼りになる江戸時代の火消しの親分像がずっと浮かんでいました。お話を一通り聞いてみると、「考えることの大切さ」を教えてくれる懐の深い親分像がプラスされました。

これまで社長、執行役に続いて、3名のベテランエンジニアのインタビューをお届けしてきました。時代を象徴する製品のマイコンを開発し、モノづくりの第一線を走り続けてきた弊社のエンジニアたち。

現在USE Inc.では、本気のモノづくりをしたいエンジニアを募集しています。

USE Inc. 問合せ先
https://www.use-inc.co.jp/contact/

USE Inc. 採用情報 \本気のモノづくりをしたいエンジニア募集中/
https://www.use-inc.co.jp/recruit/

インタビュー実施:2023年9月大阪オフィスにて 
Interview & Text 渡部美里

vol.1 歴37年のエンジニアが若手に求める3つのスキル
vol.2 子どもの頃からの夢を叶えた生粋のエンジニアが薦める”興味を広げる”勉強法
vol.3 日本のモノづくりを支えてきたエンジニアが語る35年のエンジニア人生
vol.4 技術が代名詞になるほど専門性の高いエンジニアになる方法とは?


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