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公認心理師カリキュラム等検討会を振り返る(第1回ワーキングチーム:平成28年11月4日)ーWT始動ー

 カリキュラム等検討会が2回開催され、ワーキングチームでその具体を詰めることになりました。2016年11月4日、厚生労働省専用第22会議室にて、第1回ワーキングチームが開催されました。

議事録や資料は下記の厚生労働省HPにて公開されています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-syougai_380707.html
私の過去のまとめ記事は以下になります。
第1回検討会【前編】【後編】
第2回検討会

ワーキングチームの進め方

 第1回なので、出席者の挨拶や今後の進め方についての確認が主になりました。

開催要領

開催要綱

構成員名簿

名簿

 資料の説明と構成員の挨拶があり、北村座長からは「国家試験を今から検討するのですが、国家試験の受験資格ということを決めているということは、試験さえ通ればいいというのでなく、ちゃんとしたカリキュラムなり教育を受けたことが担保されないと受験資格がない」と考え方が呈されました。
 そして、第2回検討会で取りまとめた「基本的な考え方について」が示され松本主査・北村座長より説明されました。

公認心理師のカリキュラム等に関する基本的な考え方について

基本的な考え方1

基本的な考え方2

 ここで丹野構成員より質問が出ます。
丹野構成員 「附帯決議において、公認心理師法第7 条第1 号の受験者が基本である。その第2 号の受験者の実務内容を検討する場合には、先に第1 号の内容を決めてから、それに応じて行う」について。付帯決議を見ると、この条項に関するのは附帯決議の4 番。受験資格について述べたもの。国家試験の内容を適切に定めることについては、附帯決議2 番。履修科目や国家試験に関しては、第1 号と第2 号受験者には差がない。
 心理師法第7 条を見ても、第1 号、第2 号、第3 号に関して、いずれかに該当するものでなければ受けることができないとしか書いていない。つまり、第1 号が基本で、第2 号は基本でないということは書いていない。なので、基本的には履修科目とか国家試験に関しては、第1 号、第2 号受験者は同等。こう考えてよいのか。
森公認心理師制度推進室長 法律上同等と定められている。ただ、附帯決議の4で第1 号を基本にすることと、国会のほうから求められている。
丹野構成員 受験資格に関しては大学院が優先されて基本で、第2号が従であるということだが、国家試験とか履修科目に関しては、どっちが基本になるというのは条文にも附帯決議にも書いていないような気がする。
森公認心理師制度推進室長 どちらにも書かれていないが、受験資格として第1 号を基本なので、能力的に受験する方が第1 号の能力を持つようにということと解釈。
丹野構成員 疑問は、第1 号が大学院で学んだ科目、第2 号は実務の経験から学んだこと、それが同等。そうすると、大学院だけで開講されていて、実務経験では得られない内容は、国家試験には出してはならないということにならないか。受験資格を決めるには第1 号が主で、第2 号が従だというようにはっきり附帯決議に書いてあるので、それなりに決める。国家試験を出題するときには、大学院だけで設定されている科目を、国家試験に出したら第2号受験者から強いクレームが来るのではないかと危惧される。
森公認心理師制度推進室長 どのような範囲で出題していくのかというのを、この検討会で決めていただければ。
北村座長 強いて言えば、基準は業のほう。基本的考え方の真ん中辺りに① から④まで公認心理師が業としてやることと書かれている。これをできるようなカリキュラムを作ってほしい。したがって、受験科目も①②③④をできるかという観点から作るべきであって、大学でこれは教えている、大学院で教えている、実務では学べないとか、そういうことではない。
川畑構成員代理野島氏 今の丹野先生の話は、学部レベルの試験にしないと、大学院のところまで含めると違うのではないかという趣旨だと思います。基本的にこれは大学院の資格だと考えれば、大学院で学ぶようなことが出題されるというのは当然。大学院教育の全てを実務経験のみでカバーするのは難しい。実務経験で学ぶとともに、自学自習して、そして大学院レベルのものを学びながらということで、やはり大学院レベルのことを試験で出すのが自然ではないか。
北村座長 大学院レベルも結構バラバラ。臨床心理士のカリキュラムの大学院はある程度一定しているが、それ以外に心理を扱う大学院というようにやれば、結構カリキュラムもバラバラ。
丹野構成員 4つの業が基本だと。大学院レベルで初めて達成されるというのはよく理解できる。ただ、国家試験の内容が大学院だけの出題内容になるというのはもったいない。法は6年教育と考えて、学部で基本的な心理学や、5 領域の知識を身に付けて、大学院では実務ないし実技の研修を中心にするというように分業していくと、学部の4 年間を無駄にしない。能力も6 年間かけて培うようになるので、より高いレベルの心理師が養成できるのではないかと思う。

【一旦ここまで】
 
丹野構成員からの質問、いったい何のことやら?といったところですけども、結局は「学部での学習範囲も試験に出題すべき」ということですね。どうやら大学院の範囲しか出題されないのではと危惧していたようです。それはそれで至極真っ当な意見だと思います。ただ、言い方が回りくどいよ。
 受験資格が学部+大学院の6年教育を基準とするのだから、試験問題を学部の範囲だけで済ませるというのは、それはそれでおかしな話。2号があるから大学院の範囲は出題できないと言ったら、3号は学部卒も規定していないので、大学の範囲も出題できなくなって、どこから問題出すの?となってしまう。まぁ、そういう意図ではなくて良かった、という所です。

続きの議論ーコアカリキュラムと実務経験プログラムー

北村座長 医学教育では、コアカリキュラムが今浸透している。81 医科大学で一定のことを、小中学校の学習指導要綱みたいに、必ずそこのところは教えるようにと。公認心理師でも、学びの段階である程度共通のものを学んでおいてほしい。内容だけでなく、教育方法、評価方法、カリキュラムというのは評価も含むという概念で、そこまで規定してください。
丹野構成員 コアカリキュラムに関して我々も同じ考え。、A大学とB大学では同じ科目でも違う内容をやっているというようなことのないようにする。
吉川構成員 野島先生に質問。学部の後、実務に加えての自学自習について。自学自習の在り方が非常に問われるところ。方法として、単なる実習指導、業務指導とは異なる、専門的なスーパービジョンも含めてお考えになっているか。
川畑構成員代理野島氏 例えば研究会へ出るとか、セミナーに出るとか、それから個別にスーパービジョンを受けるとか、幅広いものを想定。
北村座長 単にセミナーに出て判子だけもらうというのはやめたほうがいい。やはりスーパービジョンでしっかりディスカッションしたほうが。
中嶋構成員 実務経験に責任を持つのは、実務経験における指導者。実務経験を受けるところで、きちんとした研修を受けた指導者がいる上で、かなりきちんとしたプログラムをあらかじめ用意しておいて、そのプログラムに乗って実務経験を組むことで、公認心理師の受験資格が得られる。受験希望する人が、自主的にそういう経験を積むというような体制ではなく、実務を経験させる場所で、既にプログラムがなければいけない。実務においても実習においても同じ。

【ここでまた切ります】
 コアカリキュラム、つまり科目名が同じでもやってる内容が大学によって違う、ということはやめましょうね。ということですね。それをしたら養成課程の内容が大学によってバラつきが大きくなってしまう。
 それはそれで分かります。ただ、担当教員の研究内容に偏った講義内容、と言うと言い方が良くないですが、つまりその研究分野の最先端を学ぶ、という良さが無くなってしまうのは淋しくも感じます。どの大学に行っても学ぶ内容が同じというのは、大学の特色も出しにくくくなるので、大学側としても生き残りのための工夫が必要になってきそう。カリキュラム以外の所で特色を出す必要がありそうだなぁ。
 もう一つは、実務経験について。後に「Bルート」(移行措置期間のFルート)と呼ばれるところですが、この段階でプログラムが必要という話は出てきています。これは至極真っ当な話で、単に現場経験を積みましたよ、というのではなくてどんな経験を積んだかを担保しないといけない。大学院と同等以上となっているので、それに準じたものをちゃんと用意して指導者をつける。

続きの議論ースタートとしての資格ー

田崎構成員 国家資格はゴールではなくスタート。そこからそれぞれの領域で経験を積んで、支援を必要とする人たちに対するサービスを提供できるということになる。あくまで受験資格は受験資格であって、そこに至れば公認心理師という仕事を完璧にこなせるかというと、決してそうではないという視点でいくべき。実務経験を大学院の教育と整合性を取るため、中身をどう担保していくかをきちっと議論できれば。
北村座長 実務経験というのは本当に大事になる。法律では「国家試験は知識と技能を問う」と書いてある。国家試験で技能試験をやる選択肢はなきにしもあらずですが、現実的には大変。国家試験で問えるのは、主に知識とか技能の基になる知識ぐらい。技能そのものは問えない。実務経験で、しっかり指導者が技能等を教育し、評価していただかなければならない。
 資格を取ったら、人生これで上がりではない。医師で言えば臨床研修のような経験を積んで磨きがかかる。ただ、クライアントがいるので、資格を取った初日であっても、クライアントが安全・安心の検査なり指導が受けられるという、最低限のことは有資格者には担保しないといけない面もある。それがどのレベルかということは、今から議論していきたい。
増田構成員 1 番は国民の心の健康の保持・増進に寄与するレベルの公認心理師をどう養成するか。合格はスタートだから、その前の研修もしっかりした研修制度を整える。公認心理師になっても研修をしっかりとしていく仕組みを整える。そのことも視野に入れて、今回のワーキングの中で話し合えれば。
北村座長 公認心理師になってからどうするかというところまでは、なかなか決められないとは思う。ただ、公認心理師に一番大事な資格は、資格を取ってからもしっかり勉強を続けて、経験を積んでいってほしいという、たゆまぬ、ずうっと生涯にわたって勉強を続けるという姿勢を、本当は教えてほしい。理想の公認心理師はこうだ、だから試験でこれとこれを問うのだという、そういうのがOutcome-based 。生涯にわたって学ぶ姿勢などを試験で問いたいけれども、どうやって問うか分かりません。

【ここで一区切り】
 国家試験で何を問うか。検討会の方でもありましたが、国家試験ということで情報開示に応える責任もある。客観的な評価基準というのがどうしても必要になってくるので、なかなか技能とかを問うのは難しい。なので最低限の技能については、受験資格を得る段階で、大学院なり実務経験施設なりで担保してもらう。そんな議論でした。
 もう一つは、資格取得はゴールではなくスタート。資格を取った後も一生をかけて研鑽を積まないといけない。それができることが一番大切な資質。いわゆる卒後研修、職能発達モデルに沿った教育ですが、そこまではこのWT(あるいはカリキュラム等検討会)だけでは作れない。けど、そうした姿勢を持てるような教育養成カリキュラムは作りたい、ということでした。

ワーキングチームの検討事項について

 続いて「ワーキングチームの検討事項」について、松本主査から説明がありました(本記事の最初の画像、『開催要綱』の「2.検討事項」)。
 その後、ワーキングチーム及び検討会のスケジュールについての確認も行った後、少し議論がありました。
 経過措置の基準(科目の読み替え等)、科目名でなく学ぶ内容の整理、ブループリント、試験の禁忌肢などについての話がされていました。

各構成員から一言

 最後の30分程、構成員から一人ひと言話す時間的余裕があったようです。

奥村構成員 言葉の問題ということで、例えば学習という言葉に関して、基礎的な心理学では非常に操作的に定義して、これこれの手続を取ったものを学習というと言って、統計の調査等をする。それは、生涯学習を続けていく資質という場合の学習という言葉とは、意味が全然違う。
【勝手に補足】心理学用語と日常用語で意味が異なることもあるので、カリキュラムを検討していく際も定義をしっかり確認するのが大切。と言いたかったのだと思います。

川畑構成員 臨床心理士は、学部はなくて大学院の2 年間だけだった。(公認心理師は)学部プラス大学院の6 年間を使ってやるというところに非常に期待。臨床心理士は認定協会が決めた科目をやっているが、内容は大学院でバラバラ。科目だけでなく内容を一定のものに煮詰めるのは大事。

黒木構成員 2年ほど前の研究班で、心理専門職がどんな領域どんな仕事をしているか。医療40%、教育30%…という構成だった。公認心理師の(受験)資格を得るための実務経験を、現状に合わせた配分にするのか、それともイーブンに経験を積むようにするのか、あるいはそれぞれの今後のキャリアを考えた選択にするのか、そういう所も大事。 臨床心理士以外の心理の資格についても調査した。かなりあり過ぎて120、130 ぐらい。どのように経過措置で線を引くのかということは正直頭の痛い問題。
北村座長 演習と実習、実務経験の違い。私の理解では、例えば、学生同士が模擬に心理テストをやり合うのは演習。現場に出て先輩の臨床心理士が何かやっているのを後ろで見る見学型実習とも言いますが、これも実習ですか。それとも、これは実務経験に入るのか。
黒木構成員 実習と思う。
北村座長 自分が全面になってクライアントとお話して、それを後に指導者にフィードバックがかかるというようなものが一番狭い意味の実務経験。それがどれだけ担保できるか、見学だけで終わっては困る。失礼しました。

沢宮構成員 ようやく出来た悲願の国家資格。まずは国民のニーズに合うような、国民に求められる公認心理師を育成するという視点から、裾野の広い人を集め、質の保証をどのように担保していくかを考えていく。そこがいろいろなことの出発点。

田崎構成員 精神医学とこの心理職の方たちの業務は深いつながりがあるし、現場で仕事をしていく上では、非常に重要な素養だと考えており、学部教育の中でも精神医学をしっかり学べるような枠組みができればと考えている。

丹野構成員 黒木先生もおっしゃったように、心理師の資格には、臨床心理士だけではなくて、ほかにたくさんの資格がある。次回のヒアリング資料を見ると、臨床心理士に偏り過ぎではないか。
奥村構成員 臨床心理職推進連絡協議会と、医療心理師国家資格推進協議会、日本心理学諸学会連合、この3 団体としてお話をするようにと、私は承っている。

中嶋構成員 ヒアリングを受けてカリキュラム案がいろいろ出ると思う。良いところ取りして詰め込み過ぎると、現実に実行が不可能になってしまう可能性も。実行可能性を踏まえた落とし所を探るという形に。
 実務経験等を考えるときに、全ての領域いろいろな経験が本当に必要かどうか、ちょっと考えなければいけない。恐らく基本の大学時代の教育も踏まえた形で実務経験を1 領域でやっても、受験資格に足りる分の経験はできるのではないか。

中根構成員 学校現場からの実情を踏まえて、どんなスクールカウンセラーが求められているかいえば、人間性に尽きる。チームで取り組めるとか、あとは先生方と上手に連携ができるとか、そういったところが大事。

増沢構成員 児童虐待のケースを抱えているニーズというのが、必ずしも今まで学んできた主臨床理論あるいは技法という枠組みから、なかなか太刀打ちできないという状況が多々起きているのが福祉の領域。子ども及び家族のニーズということをきちんと、本当に先ほどからアウトカムをベースにということ、それから現場に役に立つということ。治療契約というのがベースになるような心理療法の展開も契約が取れない、結べないという親御さんもたくさんいますし、継続して通えないという親御さんは山ほどいる。カリキュラムの中にもっと実践的な領域を入れ込まないと、本当に現場のニーズに応えられる臨床家にはなれないのでないか。

増田構成員 専門性については、汎用性と深いものと両方が必要で、そして実践に使える。クライアントにちゃんと向かい合える、そして治療契約のない中でもしっかりと自己をぶらさずに社会に貢献できる公認心理師をどう育てていくのか、どう国家試験をしていくのかということを、ここの中でいろいろ議論させていただけたら。

宮脇構成員 大学教員の前は、精神科医療で25年、福祉で9年。その中で、学部の中の教育というのが大事と感じてきた。心理学の基礎を学んでいると応用も利く。実務経験は大事、そのときも初めは見学から入りますので、実務経験というのは見学から入るのだと御認識いただけたら。

吉川構成員 学びの課程において基礎心理学が重視されることによって、学問の基盤に立つ足腰の確かさが、私たち臨床心理士プラス公認心理師に求め
られていることも自覚できることも期待される。
 丹野先生に聞きたいのは、心理学の専攻あるいは心理学部で、年間卒業する学生が一体何人いるのかという数。臨床心理士の大学院だけで年間約3,000人。経過措置がどういうものであるのか考えるときに、非常に重要な問題になると思う。また、これから心理学科や大学院を出て資格を取っても職がないということになると学生が集まらなくなることに大学当局は敏感に反応する。社会のニーズに関しても、ある程度のめどを立てながら、経過措置も考えていかざるを得ない。
 奥村構成員には、ほかの資格のうち、何パーセントかの方が既に臨床心理士と両方の資格を持っていると思いますので、そのような人数や割合も報告いただければ、経過措置においても非常に参考になると思います。

 ということで第1回WTは終わりました。次回は関係団体有識者からカリキュラム等についてヒアリングを行う予定ということです。

第1回WTのふりかえり(私的雑感)

 最初の集まりなので、今後の進め方の説明と確認、ということでスムーズに進んだように思います。
 方向性としては、理想の公認心理師像があって、資格はそのスタートとしての最低基準。そこまでをどう育てるかが養成課程カリキュラム。学部+大学院の6年が基準となって、学部卒後の実務経験はそれと同等になるようなプログラムが必要。という感じでしょうか。今後はこれらを細かく詰めていく。
 あとは統一シラバスというか、科目ではなくてその中身についてですね。確かに同じ科目で開講されていても、大学や大学院によってその内容はバラつきが多いというのは聞く話です。職能養成としてはキチンと統一されてないとマズい、と考える一方で、どこに行っても内容に差がないというのは大学の魅力を大きく損なってしまうような気もしてしまいます。これまでも学部の心理学科等は、臨床心理士などの心理支援職を目指して進学する人よりも、そのまま一般就職する人の方が多いくらいだったので、公認心理師を目指すわけではない学生のことも考えて欲しいなとも思います。医療系資格の養成学校は、たいてい資格を取るのを目指して入学していると思うので、心理学科は必ずしもそうじゃないんだという話がどこかで出てもいいと思ったのですが。

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