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🇫🇮 等身大のフィンランド vol.11 アヌさんと辿る冬戦争の記録(14)

アヌ・カーリナさんの祖父アルヴィさんは、ソ連が宣戦布告なしでフィンランドを国境を越えて攻撃し、1939年11月30日に始まった「冬戦争」の時代を生きました。

等身大のフィンランド第11回 は、アヌさんが追いかけたアルヴィさんの足跡を一緒に辿ってみたいと思います。

今回は 第14話 を紹介します。

前回(1939年12月13日)のお話はこちら



 
アヌさんの記録から
1939.12.14

12月14日、朝8時に再び集中砲火がはじまりました。

敵をコッラー川の東岸から追い払うため、祖父アルヴィの部隊から、あるチームがプオランテ中尉と一緒に出かけていきました。アアルネ・ユーティライネン中佐が率いる部隊の男性たちも一緒でした。その道中、第34歩兵連隊第6中隊のフーッポネンが見つかります。

「 彼は丸3日間森の中にいた。不幸なことに、撃たれた足がもみの木の下敷きになって冷たくなっていた。 」

コッラー湖の北端では、部隊の司令官やヘイノネン少尉の部隊の接近を防ぐために封鎖作戦がとられていました。

朝食は一時配膳が中断されました。すぐに「敵との接触」があったためです。
しかしながら夕方にはそこで夕食が振るまわれました。冬戦争の記録1334ページによれば、その日の夕食には缶詰食、乾物、お茶が配給されました。

Anu KaarinaさんのInstagramを翻訳



兵士を発見


アヌさんの記録をそのまま訳しましたが、前回までのお話から、森の中で発見されたのはフーッコネンではなく、ムーッコネンではないかと思います。HとMの打ち間違いかな。

さて、森の中で兵士が発見されました。情報官の記録には、12月8日の時点でフィンランド軍の兵士が行方不明になったとあったので、12月14日に発見されたとすれば、空白の時間は「丸6日間」です。

一方で、祖父アルヴィさんの部隊の記録では、12月12日に「フィンランド語を話す敵兵」との戦いがありました。情報官の記録にも、この戦いで兵士が負傷した状態で部隊の後方に取り残されたとあります。

仮に、情報官の記録を信じて考察すると、こんな仮説が浮かびました。

▪︎ 12月8日の時点で何らかの事情があって兵士の行方がわからなくなった。

▪︎ 彼はしばらく敵の捕虜とされていて、12日の戦いで「撃たないで」と叫んだのはその兵士だった。

▪︎ 一瞬油断したその隙をついて、敵軍はフィンランド軍を攻撃。戦線の混乱に乗じてフーッコネンもしくはムーッコネンは逃げ出した。3日間森の中で姿を隠して、ようやく14日にフィンランド軍によって発見された。

情報官の記録の一部が間違っていたとすると、12日の戦いで負傷した兵士がそのまま森の中で姿を隠して、ようやく14日に発見された。こんな風に考えることもできます。

でも、前日の記録にもあるように、部隊は神に救いを求めるほどにパニック状態だったわけです。非常事態下で、情報官も部隊の兵士たちも冷静でいられるわけがありません。



兵士たちは何を食べていたの?


今回の記録では部隊の食事の内容が紹介されました。

ヘルシンキ大学のアンネリ・プランッティラさんが、1939年から1945年にかけて、戦時下のフィンランドの兵士たちの食事事情を論文にまとめています。

その内容を2018年8月にフィンランドのタブロイド紙 Iltalehti が取材しました。記事の一部を翻訳して紹介します。

原文はこちら


(彼女の論文を)要約すると、戦線での食事は穀物製品が基本でした。
パンは乾いたライ麦パン、それから全粒粥、スープはじゃがいもが不足していた場合は、穀物やエンドウ豆などの豆類、マカロニなどで代用されました。
(当時の)野菜というのは、じゃがいも、秋には蕪、人参、キャベツ、玉ねぎを意味します。

2018年8月24日に公開されたIltalehtiの記事を抜粋翻訳

この記事の中には、1942年から43年にかけての食事表が載っています。

2018年8月24日に公開されたIltalehtiの記事から抜粋


1942年9月20日と1943年4月3日の1日の食事を比較してみましょう。

📅 1942年9月20日
Aamupala:korvike , sokeri , voi , leipä , pulla , keksi
(朝食:コーヒーの代用品、砂糖、バター、パン、プッラ、クラッカー)
Loinas:mannavelli , mehu , juusto
(昼食:セモリナ粥、ジュース、チーズ)
Päivällinen:liha–hernekeitto
(夕食:肉とエンドウ豆のスープ)

📅 1943年4月3日
Aamupala:tee , sokeri , voi , leipä
(朝食:お茶、砂糖、バター、パン)
Loinas:kaurapuuro , juusto , hunaja , mehu
(昼食:全粒粥、チーズ、蜂蜜、ジュース)
Päivällinen:hernejauhekeitto
(夕食:エンドウ豆の粉末スープ)

この表では、秋にはほとんど毎朝飲んでいたkorvike(コーヒーの代用品)が春になると1日置きになって、肉を使った料理が登場しなくなります。

また、秋の昼食で飲んでいたmaito(牛乳)が春の献立には見当たらず、peruna(じゃがいも)を使った料理が増えました。

次回に続きます。


戦争博物館の記録から
1939.12.14


Viestikoiria.
Summa. 1939.12.14
【SA- kuva-arkisto】


ハミナの西部スンマで撮影されました。伝書鳩ならぬ、伝書犬だそうです。どんな役割だったのか、あとで調べてみたいです。

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