🇫🇮 等身大のフィンランド vol.11 アヌさんと辿る冬戦争の記録（12）

アヌ・カーリナさんの祖父アルヴィさんは、ソ連が宣戦布告なしでフィンランドを国境を越えて攻撃し、１９３９年１１月３０日に始まった「冬戦争」の時代を生きました。

等身大のフィンランド第１１回は、アヌさんが追いかけたアルヴィさんの足跡を一緒に辿ってみたいと思います。

今回は第１２話を紹介します。

前回（１９３９年１２月１１日）のお話はこちら

 
アヌさんの記録から
1939.12.12

このように毎日少しずつ祖父の記録を読み進めていますが、まるでクリスマスのアドヴェントカレンダーのようですね。さて今日は、昨日の記事の最後に触れたムーッコネンの事件について明らかにしましょう。


「１９３９年１２月１２日、朝８時、敵の砲兵が四方八方へ砲弾を放つ。ニーロ・ハルコネンが体の３箇所を負傷し、ライフルが切断された。」


幸い、ハルコネンは撃たれたとき、穴を深く掘った場所にいたので、ほんの少しの怪我で済みました。


「コッラ湖周辺に固まっていた部隊では、第１連隊の援軍に派遣されたメッラヌオラが負傷した。」

＊

そして私たちはようやくムーッコネンの謎にたどり着きました。


戦争日誌によれば、祖父アルヴィの部隊に近づいてくるソ連の部隊には、フィンランド語を話す兵士がいました。彼は一晩中ムーッコネンと連絡をとって、人質を捕まえようと叫んでいたといいます。

冬戦争の記録１３３４ページには、ムーッコネンの叫び声を静かにするため、「部隊の隊長が発砲した」と書かれています。

つまり、ここで私たちが確認したいのが、叫び声をあげたのはムーッコネンではなく、兵士であったということです。彼はムーッコネンの名前を利用し、何らかの理由で、フィンランド人の兵士を呼び出していたのです。

情報官パロランピの記録「ムーッコネン」によれば、この事件が、敵側に残されている兵士の事件に関連していると考えられています。

第3中隊35連隊は敵に欺かれました。パロランピの記録では、１２月８日の出来事として紹介されています。

「撃たないで、私たちは降伏します！」

当然のことながら彼らの願いは聞き入れられず、すぐにフィンランド軍による砲撃が開始されました。


事件の様子は第３４連隊の『冬戦争の記録』１３２０ページにも描かれています。
１２月８日１４時２５分の出来事でした。

「アハデが砲撃しているとき、敵の誰かがフィンランド語で叫んだ。『私たちの部隊を砲撃しないで。』私たちの誰かが軽はずみに近づき、結果、壊滅的な被害がもたらされた。」

ここに登場するアハデは１枚目の写真に映っている人物のようです。

パロランピによると、このとき、１人の兵士が負傷した状態で後列に取り残されました。

ひょっとしたらこの事件に関連しているかもしれない記録を１２月１４日の日誌に見つけました。それについてはのちほど詳しくご説明します。

Anu KaarinaさんのInstagramを翻訳

アハデの写真はこちらです。

Pataljoonan komentaja, kapteeni Ahde antaa ohjeita lähtevälle partiolle rautatien eteläpuolella. Kollaanjoki 1940.01.01  【SA- kuva-arkisto】

コッラー川で１９４０年１月１日に撮影されました。大隊の司令官、アハデ隊長が鉄道の南側にいる隊員に指示を出している様子です。

兵士が行方不明に
いつの出来事？

この日の投稿では、まずは冒頭で１９３９年１２月１２日の記録を紹介し、残りは、アヌさんがようやく見つけた「ムーッコ事件」に関する１２月８日の出来事を振り返っています。

１２月８日の投稿でアヌさんは、情報官パロランピと祖父アルヴィの部隊の記録とを照らし合わせたときに、「ある事件」を巡って情報に誤差があることを指摘していました。

彼の記録では「この時点で」何人かの兵士たちが敵の陣地で行方不明になり、彼らは数日後に発見されたと考えられています。しかしながら、それらは、祖父の部隊（第３４歩兵連隊第５中隊）の戦争日誌には、一週間後の出来事として記録されています。

Anu KaarinaさんのInstagramを翻訳

「ある事件」とは、何人かの兵士が敵の陣地で行方不明になり、数日後に発見されたという出来事です。

パロランピの記録には１９３９年１２月８日の出来事として記録されていますが、アルヴィさんの部隊の日誌に登場するのは１週間後。アヌさんが見つけた１２月１４日の日誌の内容がそれに該当するのでしょうか？

ムーッコネンの怒声
いつの出来事？

そして、これらの出来事と関連していると考えられているのが「ムーッコ事件」です。

「敵兵が」何らかの理由でムーッコネンの名前を利用し、叫び声をあげて騒がしくしていたようですが、記録には「ムーッコネンが」叫び声をあげていたと書かれています。

ムーッコ事件がいつ起こったのか。日時が分かると、一連の出来事に何らかの筋書きが見えてきそうです。次回に続きます。

戦争博物館の記録から
1939.12.12

Tämä oli niin sanottu makkarakahakka. Ryssiä kaatui noin 20. Tuntematon 1939.12.12 【SA- kuva-arkisto】

ソ連軍によってフィンランド軍の砲火台があるエリアが攻撃されました。その戦場を誰かが撮影した１枚です。

写真の前景には、小さな雪玉のようなものがいくつも並んで見えますよね。これはフィンランド軍の砲火台です。写真の後方、沼地になっている道の両側に控えていたソ連軍の大隊に向けて発砲されました。

この戦いは「マッカラの乱」と呼ばれていて、フィンランド軍は２０人のソ連兵を倒したそうです。

戦いの場所は、トルヴァヤルヴィとヴァルティラの中間地点にあって、それぞれとおよそ５km離れていました。トルヴァヤルヴィはラドガ湖の北東、ヴァルティラは湖の北西部、フィンランドとの国境付近にある町です。それぞれ、ヨエンスーよりも少し緯度が低い位置にあります。