見出し画像

モンゴルのお祭り、ハワリンバヤルに行ってきました! 国際フェス体験記#2.5 羊だらけのモンゴルに、なぜ毛糸文化がないのか考える。

先日、都内の光が丘公園で行われたモンゴルのお祭り、ハワリンバヤルに行ってきました!
おいしい羊料理、華やかな民族衣装、移動式住居・ゲルなど、たのしさいっぱいのイベント…!羊に関係あるものがいっぱいです…!!
その中でふと「モンゴルには羊はたくさんいるけど、なぜか編み物や毛織物を見かけないな…」と気になりまして。
モンゴルになぜ編み物や毛織物といった毛糸文化がないのか、理由を探ってみました…!

※ちょっとカタイ話になりそうなので、「お祭りのことを知りたいだけなのに〜」という方は、よかったら#1〜3のイラストルポをご覧ください^ ^ノ

羊毛をフェルトにはするけど、毛糸にはしないモンゴル

遊牧生活を送る人々にとって、羊は衣・食・住すべてに関わる大切なパートナーです。
作物の育ちにくい厳しい土地柄でも、羊はわずかな草を食べて生きていけます。人々は羊を育てることで、衣・食・住をまかない、暮らしていくことができるのです。

モンゴルで遊牧生活を送る人々も、羊とともに生きてきました。
肉や乳を食すのはもちろん、羊毛をフェルトに加工し、移動式住居・ゲルの天井を覆う布として使用してきたという伝統があります。

ところが衣服についてはどうかというと、モンゴルの民族衣装・デールは絹や綿(最近ではナイロンも)で作られており、そこに羊毛は使われていないのです。
モンゴルの夏は日によって40℃近くに達する日もあるそうなので、当然と言えば当然かもしれません。

ですが、モンゴルの冬は極寒です。
冬にはデールの裏地に羊の毛皮をつけるそうですが、例えばブーツの中に毛糸の靴下を履いたり、首元に毛糸のマフラーをしたり…そういうことがあってもよさそうだと思いませんか??

毛織物についても疑問が湧きます。
モンゴルでは、ゲルの中で絨毯を敷物として使用しているにも関わらず、伝統的に織物をする文化はないようです。
同じ遊牧生活を営むところでも、トルコ〜中央アジアにかけてはキリムという織物文化があるのに、不思議だと思いませんか?

そもそも、私たちが羊の毛を利用するには、これを布状にしなければなりません。
羊毛を布状にする方法は大きく分けて2つあります。1つは圧縮してフェルト状にすること、もう1つは毛糸の状態にしてから編んだり織ったりすることです。
どうやらモンゴルでは、たくさんの羊に囲まれ、かつニットや毛織物を必要とする環境でありながら、後者の文化が育たなかったようなのです。

シルクロードの真ん中で

その理由を探るためには、一度地図を見てみる必要がありそうです。

ご覧の通り、モンゴルは東アジア北部に位置しています。
そしてここは、シルクロードの通り道でもありました。

シルクロードとは、中国からヨーロッパをつなぐユーラシア大陸の交易路。
そこでは様々な商品が行き来していました。
中国から欧州方面には絹が、中央アジアから中国には毛織物が輸出されていたそうですので、当然、その間に位置するモンゴルの人々は、羊毛と引き換えにどちらも手にすることができたのではないでしょうか。
わざわざ自分たちで加工しなくても、原料である羊毛を渡せば布が手に入ったのだとしたら、モンゴルで織物文化が育たなかったこともうなずけます。
羊毛を毛糸にしなければ、編むこともできないので、編み物文化も同様です。

近代以降、社会主義体制の中で、紡績技術や織物技術は産業として持ち込まれたようですが、それは伝統的な、生活に根づいた営みとはまた別のものだったでしょう。

このような地理的・歴史的背景があったため、モンゴルでは毛糸文化が定着しなかったようなのです。

手仕事の役割と豊かな生活

今回調べていく中で、モンゴルに編み物や織物文化を紹介しようという取り組みを見つけました。いずれも地域支援や自立支援という側面がある様子。

私も趣味で編み物をやっていて、その延長線で機織りにも手を出したりしています。
最初はちょっと暇つぶしに…くらいのつもりだったのですが、だんだん編めるようになってくると、靴下とかセーターとか、実用的な衣類に挑戦したくなるんです。
そしてそうなると、触り心地のいい毛糸を使いたくなり、反面、値段も気になってくる。と同時に、うまくできたら誰かにプレゼントしようとか、ちょっとしたフリマのようなところで売れないかな、とかたのしい妄想も始まります笑

何が言いたいかというと、編み物や織物といった手仕事は、趣味でありながら、実用的な生活手段にもなり、経済的な自立の助けになる可能性をも秘めている、ということです…!

今回書ききれなかったけれど、フェルト刺繍などモンゴルにはモンゴルの手仕事があるようで…

自分たちに必要なものを自分たちで作るか、他の人から手に入れるか…
自分のものを自分で賄えるということは、とても立派なことだけど、一方、必要なものを他者に頼るということは、その人の生活を支えることでもあるんですよね。

作る人、買う人、使う人、広める人…そういうことが丁度いいバランスで行われているところなら、皆が幸せに暮らしていけるような気がします。

【参考】
小金澤孝昭(2008)公益財団法人ユネスコ・アジア文化センター  ACCCニュースNo.370  ものづくりによる自立支援モンゴル編み物プロジェクト
http://cybozu.accu.or.jp/jp/accunews/news370/370_01.pdf

今岡良子(2021)生産と技術第73巻第2号 交流-羊毛を紡いで、織る-モンゴルのある事例より
http://seisan.server-shared.com/732/732-136.pdf


つらつらと長い記事になってしまいましたが、最後までありがとうございました!
またお会いしましょう^ ^







この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?