『四谷快談』とは

小学生の頃、私は同級生と近所の公民館で生け花を習っていました。でも私は生け花にほとんど興味が無く、適当に活けて公民館の本ばっかり読んでいました。何故習っていたのでしょう(笑)。生け花、あれめっちゃセンスと握力がいるよ。木が切れない。あと剣山が痛い。私にはまっっっったく向いていなかったです(笑)。假屋崎さんめっちゃ凄い。

その公民館の棚に、短編マンガを集めた分厚い本がありました。様々な漫画を分野別に収録した本だったと記憶してますが、シリーズのうち二冊くらいしかその公民館には置いてなかったと思います。全何巻なのかは知らない。タイトルも覚えてないし。
その本を今読み直したら、きっと「ああこれ読んだわー」と思い出すマンガがたくさんあるのでしょうけど、その中でも一作、特に印象に残った作品があるのです。

それが、手塚治虫先生の『四谷快談』でした。

大人になってから、ぼんやり覚えていたタイトルと内容から収録されているコミックスを探し出し(『雨ふり小僧』だったかな)、手元に置いていたのですけど、その文庫本を友達に貸したまま連絡が取れなくなってしまいまして(泣)。もう何年も前のことなので諦めて買い直すつもりが、結局貧民過ぎて探す元気もなく…(泣)。
そんなわけで、もう何年も読み直していないため、細かいところまで覚えていなかったりします、すみません。その前にネタバレになるので詳しい内容を書くのは控えますけど。

タイトルからして、有名な怪談をモチーフにした作品というのはおわかりいただけるかな、と思うのですが、確かにモチーフだけど全然違う話です。まずお岩さんがめっちゃ明るくてかわいいから(笑)。太平洋戦争終結後から数年くらいの話、だったかな。主人公は隻眼の少年です。

手塚治虫らしいギャグが挟み込まれつつ(時に話に全然関係ないギャグがさらっと混ぜ込まれている手塚先生の手法が私はとても好きだったりする)、笑ってドキドキして、大泣きして、ラストの余韻に何とも言えない気持ちになって…。
「物語はこうやって作るんだ」と初めて思った作品だと思います。小学生の私には衝撃の出会いでした。私が好む作品など、様々な思想や趣味の根底にこの作品が眠っているような気がするほどです。

これまでにテレビアニメなどで作品に触れていたはずの手塚治虫という人を、改めて認識したのもこの作品でした。この人すごい、と思った。それまでは手術シーンが気持ち悪くて読めなかった、祖父の家にあった『ブラック・ジャック』を、確かあれも手塚治虫じゃないかと思い出して本棚から引っ張り出して読んだところ、あんなに気持ち悪いと思ってたことを心底後悔したほど面白い。夢中になって読みました。どの単行本にも未収録の作品以外はだいたい読んだと思います。自分用にも収集しましたが、セリフの改変が嫌だからってわざわざ昭和の版で集めているというこだわりっぷりです(笑)。そんなことやってるせいか実はまだ全巻揃ってないのだった(汗)。ちなみに、いちばん好きな話は『報復』だったりする。

『ブラック・ジャック』を読んで医者になろうと思った、という人の話はよく聞きますが、私は医者にはほとんど憧れることはなく、「手塚治虫と仕事がしたい」と思いました。小学生なのにね(笑)。でも、その時には手塚先生はもう鬼籍に入られていたと思います。私の夢は、抱いた瞬間から叶わない夢だったのでした。

書かれている作品が多すぎてすべては読めていないですけど、作品の幅が広すぎてびっくりする。『奇子』なんて大好きですけど、『鉄腕アトム』あたりしか知らない人には衝撃的だろうなあ(笑)。『青いブリンク』とか『三つ目がとおる』とか見てたねえ、アニメ。あんまり覚えてないけどさ。

中学の頃の友達に、妄想家だった私が色々物語の種を思いついて語り出すと、「よく聞く話だね」って絶対に言う子がいたんですよ。それはその通りだったかもしれないが、私はその言葉が大嫌いだった。それを言われてしまうと、聞いたこともないような突飛な話じゃないと物語を作ってはいけない、という気持ちになってしまう。だんだんと、私は物語を色々考えていくことを止めるようになってしまいました。

でも、大人になった今思うのは、「こんな話書きたい、と思ってもだいたい手塚治虫が描いてる」というまことしやかな事実である。100%そんなことはないだろうが、結構な確率のような気がする。手塚治虫以外にも、人類の歴史には偉大なストーリーテラーがたくさんいるわけで、「聞いたこともない話」なんてもはや滅多なことでは生まれないんじゃないだろうか。

手塚先生の作品の中では知名度は低いと思いますが、何かの機会に是非読んでみてください。手塚先生はラストシーンが非常に上手い作家だと思うのですが、この作品のラストも私は大好きです。『ブラック・ジャック』の『二つの愛』のラストのコマとかね、もうあれは神だよ…。

これを書きながら思い出したのですが、藤子不二雄のSF短編集が三冊くらい家にあって(いとこにもらったよーな…)、あれも大好きだった。何度も何度も読んでた。めっちゃ読み直したくなってきた。かなり影響受けてそうな気がする…。

子供の頃に読んだ作品って、ものすごく印象に残るものですね。名作なんだけどトラウマになっちゃうことも時にはありますが、あの頃に読んだ作品たちは、今も私の糧であり、大切な思い出になっている。その源流にある作品のひとつが、『四谷快談』だろうと私は勝手に思っております。
お財布に余裕ができたら(いつできるのか知らないが…)またコミックス探そう。


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