拗らせの果てのないものねだり

私は生まれる前に、男の子だと思われていたんだそうです。

おそらく胎内の映像が見られるようになった時代ではなく、まだ生まれてみるまで性別がわからなかった頃。予定日を3週間くらい過ぎてやっと生まれるまでずっと、男の兄弟の名前で呼ばれていたことが当時の記録にも残っています。家計簿兼日記みたいなのを母がつけていたんですね。

生まれてきた私を病院に見に来た父親は、「何だ、男じゃないのか」と呟いて当時はまだ看護婦さんと呼ばれていた方に激怒されたとか。あんた、五体満足で生まれてくるだけでも十分なのに何言ってるのって。そりゃまあ怒られて当然ですね…。実際に生まれてみるともうどっちでも良かったみたいではありますけど。

その話を聞かされて育ったせいか、私はずっと、「自分が男の子に生まれなかったこと」に罪悪感と、「自分が女の子に生まれたこと」への違和感を感じて生きてきたような気がするのです。


何歳くらいまでだったかな、小学校高学年だか中学生くらいまでだったでしょうか。私は「私」という一人称が使えなかったんですよ。何故かわからないけどすごく抵抗があった。だから「ボク」とか「オイラ」とか言ってたと思います。それでよく親とか近所のおばちゃんとかに怒られてた。父には「だったら男として扱うよ」とまで言われましたね。
ものすごく意識して意識して、一人称を「私」に切り替えていったのを何となく覚えてます。今はもちろんまったく抵抗ないですけど。でもたまに「俺様」とか「我輩」とか「やつがれ」とか言いたくなるね(笑)←知らんわ

女の子らしくしなさい、ともよく言われて怒られてた。私は料理とか裁縫とか、女子が好むとされるものが基本的に苦手でした。手先が器用じゃないので、上手く出来ずに楽しくなかったんです。
上手く出来ないので、母にはそれを嘆かれてばかり。自分がお前くらいの時は学校行ってから帰るまでにマフラー1本編めてたとか(それ授業聞いてないよね?って突っ込みたかったけど、笑)、お手伝いしろと言うから台所に立つと「邪魔」と言われてみたりとか。あんまり何にも出来なくてイライラしたのでしょうね。
私もだんだん、何もしない方がいいや自分は、と思うようになっていきました。不器用なのは嘘でも何でもなく事実だし、無理して失敗して誰かに嫌そうな顔をされるよりは、何にも出来ない駄目な人として笑われてる方が気楽だったのです。

だからと言って、格闘技が強くて筋骨隆々だったとか釣りが趣味だったとかそういう感じでもまったくない。特撮ヒーローも少年ジャンプも好きだけど可愛いものやぬいぐるみも好きだった。スカートを履きたくなかったとか髪を短くしたかったとかそんなことも全然ない。

ただ、自分を「女の子」と認識するのが何故か私にはとても難しかった。性別云々以前に自分の輪郭がよくわからなかったからかもしれません。

子供の頃の私は学校でいじめに遭っていていつも一人でした。クラス全員に無視される系のいじめで、存在を常に否定されていた感じです。特に酷かったのが容姿への容赦のない攻撃でした。成人するくらいまでは、すれ違っただけの赤の他人に罵られたこともありました。大人になってからはそんな人にはほぼ出会わなくなったけど、今でも他人から突然罵声を浴びせられるんじゃないかとびくびくしながら街を歩く自分が何処かに居ます。

容姿に対する口さがない言葉は実は身内からも多かった。それがいちばん多かったかもしれません。顔が悪いとかスタイルが悪いとか。私の母はとにかく他人の容姿をけなす人で、テレビに出てくる人を強く貶める言葉を聞くたびに耳を塞ぎたい気持ちでした。自分に言われているようでとても辛かった。けど、母に言わせればそれは悪口じゃないそうで、嫌味くらい自由に言わせろ、という話だったようです。

女の子は勉強なんかできなくても可愛くて気立てが良ければそれでいい、みたいな話は時々聞いたし子供心にもそれが美点で得とされていることは薄々感じていた。容姿も劣っていて気立ての良さにも欠け、女の子らしい趣味もまともに持てない私の価値って何だろう?と幼いながらに私は考えたのでしょう。
これでは女の子に生まれた意味は何もない。生きてる意味もない。そもそも男の子だと期待されてたのに間違って女の子に生まれてしまった。自分が女の子でいることがそもそも間違い。じゃあ女の子である自分を否定するしかない。そんなところだったのでしょうか。

確かに、「男に生まれてた方が楽だったんじゃないか」と感じることは多かった。私の顔立ちは男性ならもう少し見映えがしたかもしれないし、ちょうど実力に見合った学校は男子校で受験できなかったし。女の子を勉強させてどうする、なんて言われることもなかったろうし。性格も考え方も人に言わせれば自由過ぎるそうで、世間が求める「普通でまともな女の子」からは完全に外れてしまっている。男の子なら「面白い子」で済んだかもしれないけど。

でも私は男の子じゃなかった。どう大きくなっても男の子にはならなかった。私が男に見える人はたぶん誰もいないでしょう。
でも、男の子になりたかったわけではないのです。男の身体になりたいと思ったこともないし、女の人を好きになったこともないし。これからもかなり間違いなくそうでしょう。人類が細胞レベルから現在の形とは異なる生物にならなければ、人類が種として存続していくためには男女の別は欠かせないものとして存続し続けるでしょうから、そこも否定してませんし無理に同じにすることに意味もないだろうと思っています。
ただ、私には意味がわからなかった。どうして自分が女に生まれなくてはいけなかったのか、意味がわからない。違和感とはそういう意味での「違和感」で、世間一般がイメージするような違和感ではないのです。ここがちょっと、説明が難しいのですけど。

そうですね、「男の子に生まれた方が良かったし本当はその予定だったのに、間違えた」という感覚です。うん、たぶんこれだ。違うかもしれないけど何となくこんな感じだ、たぶん。


こうなると、いちばん影響が出てくるのが恋愛だとか結婚だとかいった話です。私のブログやnoteをずっと読んでくださってる方には、ほとんどその辺の話が出てこないことに気付かれた方もいらっしゃるでしょう。そうです、私が避けてるからです。創作の形や他人の話なら多少抵抗が薄れるけど、自分の話をとにかくしたくない。だってこの手の話は「自分が女である」ことが大前提になってしまうからです。私はまだ、自分のことを上手く認識できていないのかもしれないです。

子供の頃からずっと避けていたので、私が男嫌いだと思ってる人も多かったみたいです。確かに色々嫌な目にも遭ったし(いじめとか痴漢とかさ…)得意ではないけど、自分がそういう話題の中心になるのがとにかく嫌だった。自分は自分を受け入れられないのに、女の子扱いされてもいないのに、突然女の子であること前提の話をされるわけですよ。頭がついていかない。

『人魚姫』を読んでギャン泣きするメンタルの幼稚園児だったくせに、そういう部分は基本隠して生きてました。知られたら酷い目に遭うんじゃないかって恐怖感を抱いていたような気がします。

誰かを好きになったことも好きになられたことももちろんあるけど、徹底的に隠すようにしていた。嘘を吐くのが死ぬほど下手なのでバレていた事態も多々あったでしょうが、とにかく嫌だった。
自分の心が動く場合は自分でそれを叩き潰せばいいのでまだいいけど、人から好意を向けられた時がどうしていいのかわからない。私は女としての価値がないのに、この人は何を言っているのだろう。騙しているようで申し訳ない。散々無価値な扱いをしてきた身内をはじめとした周囲が今更ニヤニヤとそういう話に首を突っ込んでくることにも耐えられなかった。結果、嫌じゃなくても嫌な振りをしてしまったり。これで何回棒に振ったかな…。ぜつぼう。

身内や友達の無責任と言うか無邪気と言うか、それらにもうんざりしてました。その年で彼氏がいないのはおかしいとか、お前みたいに結婚も出産もしない奴に自分の気持ちはわからないとか、〇歳過ぎて未婚の人間には人格に問題があるとか、散々馬鹿にされてることはよっくわかってたけど、この人たちに自分の心の内は見せられなかった。この人たちは私の心に土足で踏み込んできてめちゃくちゃにしてしまうだけだから。馬鹿のふりをして馬鹿にされてる方がまだ楽だと思ったのです。

根が深い。年齢とともにだんだん違和感も解消されると思ってたのに根が深い…。
何処かで強引にでも縁があれば、その人物の手によってスパンと解消されてたような気がするのですけどね。そこまで強引なものはなく、結果拗らせるだけ拗らせて今に至った感じです…。とほほです。そうでなくても性格的にツンデレに近い何かですからな。ぜつぼうだよ…←遠い目

何年か前からずっと、とある手相鑑定で同じことばかり言われてたのですよね。これがその運命じゃないのだろうか、ともう信じるしかないようなことも起きてるんですよね。手のしわになぜそんなことがわかるのか…。
でも、拗らせるだけ拗らせてる私はその運命が怖くて受け入れられない。確証がないからかもしれないけど、私はとても自分に自信がなくてそもそも自分の輪郭がよくわからないので、自分のこととして認識できてない気がする…。もし手相鑑定に行ってなかったら覚悟が出来ずに完全に逃走してたと思うからこれでもまだマシなんじゃないかな。これでもかい…。

とてもとてもとても大事に思っているけれど、もしかしなくてもこの人そうなんだろうなって思ってるけど、どうしたらいいのかわからない…。もう頭の中がいっぱいいっぱいで何も手につかないので白でも黒でもいいからスッキリしてしまいたいけど、達人とかに聞いたらいいんですかね…。

とにかくもう、私の手のひらが嘘吐いてないことを祈るよ。嘘が苦手な私の手のひらなんだから嘘吐くのなんかお止めなさいよねー!ああもうわけわからん。まとまりのないまま終わりますごめんなさい(泣)。

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主にフィギュアスケートの話題を熱く語り続けるブログ「うさぎパイナップル」をはてなブログにて更新しております。2016年9月より1000日間毎日更新しておりましたが、現在は週5、6回ペースで更新中。体験記やイベントレポート、マニアな趣味の話などは基本的にこちらに掲載する予定です。お気軽に遊びに来てくださいね。

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