寒い朝にも魔法はあたたかい

「あなたのその明るさが、うちの職場には必要なんです。だから、笑ったり喋ったりしてていいんですよ」

あることをきっかけに、職場での自分の振る舞い方を悩んでしまった。どうしたらいいのかわからなくなってしまった。
どうしたらいいのかわからなくなりすぎて、私はフリーズしてしまった。とりあえず、黙っていようと思った。

言葉が黙っていると、表情も黙ってしまうものらしい。急に笑わなくなった私を、職場の人は怪訝な顔をして見ていた。でも、そうしなきゃいけないんだと思い込んでいた。

いつも集団からこぼれて、世界から浮いてしまう私は、誰とでも何処ででも「ちゃんと」やれる、普通の人間にならなければ、と必死だった。お喋りで自由な私では嫌われてしまう。普通にならなきゃ、ならなきゃ。

その状態で一週間くらい過ぎただろうか。ある朝、年下の上司が話しかけてきた。そして、あの言葉を言ってくれたのだ。

あなたのその明るさが、うちの職場には必要なんです。だから、笑ったり喋ったりしてていいんですよ。

私はぼろぼろ泣いてしまった。私は私のままでもいいんだ、無理しなくていいんだ。心を縛っていた氷の魔法が、一瞬で溶けた。

このままでは大変なことになる、と上司は見抜いて、動いてくれたらしい。若かったけど、とても仕事のできる人だった。「仕事ができる」とは、決して事務能力だけの話ではない。

私はまた、いつもの私に戻って、大変な日々ではあったけど楽しく働けるようになった。
上司が去った職場は、まるで同じ職場とは思えない場所に変貌していった。彼女がどれだけ職場を支えていてくれたのか、はっきりわかる話だったと思う。

誰かを救うのは、薬でも医者でもシステムでも行政でもない。ほんの少しの優しさや愛情に、それらのすべてが勝つことは決してない、たぶん。きっと。

あの日の言葉を、今も時々思い出す。あの人のしてくれたことは、きっととてもささやかなことだった。でもそれが、どれだけ私を救ったか。
本当にありがとう。あなたがどうしているのか、今はもうわからないけれど、心から幸せを願っています。


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