おにいさまにファンレターを書きたい人生だった

本日は昔々に放送されていたアニメについて語ってみようかなと思います。最近になって改めて全話見たところ、あまりにも面白過ぎたので…。ネタバレにならないよう気を付けて感想を綴っていきますが、ネタバレになってしまっていたらごめんなさい。

その作品のタイトルは『おにいさまへ…』。池田理代子の中編漫画が原作であると聞いているのですが、そちらは未読です。気になって随分探したのですが、見つけられなかった様子。

放送はBSだったと記憶しています。しかもNHK。当時からNHKとは思えない内容でしたが、今見てもやはりそう感じますね。ただ、逆にNHK以外では無理な題材かもしれないな、とも思いました。


舞台はおそらくそれなりの家柄の生徒の通う女子校。この学校の高等部には「ソロリティ」と呼ばれる特権階級が存在し、その候補として主人公の御苑生奈々子が何故か選ばれる、という少女漫画の王道的展開で物語は劇的にスタートを切ります。
どちらかと言うと地味で冴えなかったりと、ごく普通の女の子である主人公が、突然イケメンに求婚されたり突然お金持ち学校に転校したり、こういった展開はおそらく永遠の王道ですね。

もちろん奈々子の選出は誰にとっても意外であり、そのために平穏な学園生活を送るはずだったのであろう奈々子の毎日は一変します。序盤から容赦なく見せつけられる剥き出しの嫉妬。強烈な展開ですが、これはまだまだ序の口なのですよ…。

本当に日本なのだろうか、と疑うような豪華な建築物にきらびやかな名前や見た目を持つ登場人物は、いかにも昭和の少女漫画や宝塚を思わせるゴージャスさです。登場人物の多くは若く美しい女性で、女子校における女性同士の素敵なひとときなどを期待して見ようとする方もいらっしゃるかもしれません。もちろん多少はそういった面も味わえますが、それだけを期待していると確実に返り討ちにあいます。
この作品はそんな甘い物語じゃありません。人間の心の奥深くまで抉るように描き出し、心から血を流しながらぶつかり合う人々の、震えるほど繊細で醜くて、いとおしい魂をアニメーションという形で表現し切った、非常に骨太な作品です。そうでなければ、私の印象に長年残ることはなかったでしょう。


非常に不安定で、理解不能に見えた登場人物たちにも、本人なりのれっきとした行動原理があり、それが徐々に判明していく過程は実に見応えがあります。ホラーやミステリーと見紛うかのような展開を見せることもありますが、どの登場人物にも答えと結末が用意されており、そこまで破綻なく紡ぎあげられていく物語は圧巻の一言です。全話見終わる頃には、どの登場人物のことも可愛く思えてきてしまうのですね。実に上手い…。

大人になってから見ると、マリ子にいちばん共感しちゃいましたね。子供の頃なら共感し過ぎて痛くて見られなかったかもしれない…。昔視聴した時にはマリ子のエピソードはほとんど見てなかったっぽいんですね、どうも。マリ子、ファッションも可愛い。紫系が多いのね。

薫の君とサンジュスト様のイケメンぶりには多くのファンがときめいたことでしょうが、二人とも主人公の通う女子校の生徒です(笑)。かわいいワンピース着ててもイケメンにしか見えないサンジュスト様…。
蕗子様の喋り方はつい真似したくなりますね。お上品。時々お召しになっていた赤い花柄？の黒いスカートが素敵で憧れたわ。絶対似合わないけど(笑)。あんな巻き髪にしたいけど、髪が細くてすぐパーマ取れるから無理って「お蝶夫人みたいにしたい」と美容院で言って笑われた私には無理ですわ…。奈々子の学園祭ファッションも可愛かった。

印象に残ってるのは28話？のマリ子父の台詞。展開的に感心してる場合じゃないんだが、色々悩んでいた頃に見たので刺さりました…。あと30話？にも泣いてしまった。どの登場人物にもちゃんと決着がついていく展開が素晴らし過ぎて。
それから、声優さんの演技が素晴らしいので、感心してテロップ見たら大物ばっかり出てた…。30年くらい前のアニメだしそうなるか。いや、それにしても超豪華かもしれません。


子供の頃は飛び飛びにしか見ておらず、よくわからないままに強く印象に残っていた作品でしたが、全話飛ばさずに見てみると、あまりの面白さに震えました。これ、1話でも飛ばすといかん話だったんだな。この作品の存在を覚えていたおかげで見直す機会が持てて本当に良かったです。これは確かに子供が見ても理解しきれんわ…。それでも、自分の中に強い印象を植え付けた作品であったことを再確認できた感じです。

タイトルが何故『おにいさまへ…』なんだろう、と昔は少し不思議に思っていたのですが、これ、『おにいさまへ』じゃないといけないんですよね。それがだんだんわかってくる演出や、ラスト数話の切なさも見事です。こんなにドロドロした、ずっとナイフの切っ先を突き付けられ続けているような作品が一体どのように終結するのか。機会があれば、是非全話通して見てみてください。

今テレビで放送されたら話題になりそうなのですけど、色々うるさい時代なので限りなく不可能そうですね…。主にサンジュスト様あたりが…。劇中で流れるピアノやヴァイオリンの曲もとても素敵ですよ。
公式に配信してくださってありがとうございました。お金できたらDVD欲しいです…。原作ももう一度探してみようかしら。

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