幻に霞む答えを、握りしめたくて

この世のすべては、科学的に説明できるものだと思っていました。
幽霊も小人も先祖も見たことないし、異世界に意識も飛んでいかないし、UFOにもツチノコにも会ったことはない。不思議なものには生涯縁がないと思い込んでいました。
昔から勘の強い方ではあったと思います。でもそれに、特に深い意味は感じていなかった。

それなのに。

いつの頃からか、私は予知夢を見るようになりました。予知夢と言っても、天変地異や世界の情勢を見るわけではありません。自分の半径数メートル以内の、自分の日常と非日常の範囲内のことがほとんどです。

大ファンの人がこれから行う仕事とか、今後手にする結果とか。自分がすっかり諦めていたイベント等に結局行ける場合に、それを示唆するような内容とか。夢に見るのは、その程度。
しかも、あらかじめ予知夢だと気付くことはほとんどありません。確信するのはせいぜい前日か、当日。
最近は夢のパターンに慣れてきて、これは予知夢かもしれない、と疑ってかかることも多々ありますが、本当に予知夢だったとしても、自分の思った通りの形ではなく別の形に収まることもしばしばです。

気付かない理由は、夢がたいてい遠回しだからです。知らない風景が知っている風景の姿を借りて出てくることもあれば、現実で重要なキーワードとなる何かが、夢の中では別の形に変わって出てくることも多々あります。
たとえば、あるフィギュアスケートのショーで、出演者たちがワイヤーアクションのごとく吊られて登場する、というよく分からない夢を見たことがあります。現実で、私はとあるショーにとても行きたかったのですが、経済的に難しく落ち込んでいました。せめて映画館で開催されるライブビューイングに、と思ったもののそちらも難しいのでは、とますます落ち込んでいたら、色々な偶然が重なって何とかライブビューイングには出向くことができたのです。「ワイヤーアクション」は私の中で映画のイメージだったようですが、少々遠回しですよね…。

一方で、とてもストレートに出てくる場合も存在します。大ファンの人物がある国にいる夢を見て、何故だろうと不思議に思っていたら、確か次の日に、本当にその人がその国にいるという情報を見て驚いたこともありました。


最初の数回は、ただの偶然だと思っていました。けれど、2、3回どころではなく何度も続くのです、未来を察していたとしか思えないような夢が。たとえ内容はたいした未来ではなかったとしても、あまりにも続くので私は怖くなってきました。いえ、怖くなったと言うよりも、確かめたくなったのだと言うべきなのかもしれない。私は何故こんな夢を見るのか、その理由とメカニズムは何なのかと。

インターネットを始め、様々な情報に当たりました。雑談のように他人に聞いてみたこともありました。けれど、何を見ても聞いても、私の納得するような解は得られなかった。

悩んだ末に、私は占い師に相談してみることにしました。
それほど当たるとは思っていなかったのに、何故か惹かれて、時々鑑定に赴いていた占い師の方がいたのです。その方が鑑定場所を変えても、何となく探し出してずっと心の片隅に今もとどめている方です。

その方は、私に言いました。
あなたは元々スピリチュアルな能力が高かった。それが、ある人との出会いで目覚めたのだと。

「ある人」とは、特に夢に登場する頻度の高かった人物のことを指します。その人は夢によく出てくるだけでなく、ほかにも気になることが色々起きていた人物でした。私はその意味がわからなかった。この少し不思議な出来事は私の思い込みなのかそうでないのか、白黒つけてスッキリしてしまいたかったのです。

占い師は続けました。
でも、私の力はその人のためじゃない。次に本当に出会う人のためのものだ、と。

私はこの話をまったく信じていませんでした。何故その人がきっかけでそんなよくわからない力に目覚めるのかさっぱりわからなかったし、いいように丸め込まれてしまったような気さえしたのです。
けど、その言葉は不思議と耳にこびりついていました。ほかに言われた言葉はほとんど忘れてしまったのに、その言葉だけは、はっきりと。

まったく信じていなかったこの話が、実は真実だったのではないかと、私は今思っています。
ずっと悩んでいたその人と入れ替わるように、今にして思えばまるで入れ替わるようなタイミングで現れた、とある人物。まるで繰り返すように起きていく、少しだけ不思議なこと。

この人が「次に出会う人」だったのか、まだ答えは出せていませんが、きっとそうだろうと、私は何となく予感しています。もちろん、間違っているかもしれませんけど。

「きっかけになった人」がいなければ、私は「世の中には説明のつかない出来事も起こりうる」ということを、きっと今でも信じようとはしていなかった。私がどんなに怖いから嫌だと抵抗し続けても、ささやかな予知夢を見せ続けることで、私が決して逃してはいけない大切なことに気付かせようとしてくれる誰かがいるのかもしれない。

それは縁とか、運命とかいった名前で呼ばれるものなのかもしれません。


相変わらず、意味があるのかないのかよくわからない予知夢は続いています。変な夢を見ると、ついつい面白くて友達にメールなど送るのですが、それが後々証拠になるので、はっきり覚えている夢を見た時はできるだけ何らかの形で記録するようにしているのです。もちろん、すべての夢が予知夢になるわけではないです。

ずっとずっと昔、とても不思議な夢を見ました。とても温かくて、とても優しくて、最高に残酷で切ない夢でした。目を覚ましてから、薄暗い部屋の中で泣き続けたことを昨日のことのように思い出します。たぶん、一生忘れることはないでしょう。
私はいつかこの夢に象徴されていた光景に出会うために生きているのかもしれない。この夢を忘れないために、夢に興味を持つように仕向けられているのかもしれない。

「本当に出会う人」はきっとその光景にも関わってくる、大切な大切な人。
私の思い込みでなければ、たぶん。

私が探し続けてきた答えに出会えるかどうかは今日もわからないままです。もしかしたら一生わからないのかもしれない。
変なことばかり言っている人間だと、後ろ指を指されているのかもしれないと思うと、不思議なことを受け入れられなかった頃の私に戻りたくなる時もあります。

それでも私は目覚める度に、記憶の片隅に夢の残り香を探すのです。そこに未来と、希望とを、見つけたくて。

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主にフィギュアスケートの話題を熱く語り続けるブログ「うさぎパイナップル」をはてなブログにて更新しております。2016年9月より1000日間毎日更新しておりましたが、現在は週5、6回ペースで更新中。体験記やイベントレポート、マニアな趣味の話などは基本的にこちらに掲載する予定です。お気軽に遊びに来てくださいね。

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