ストレスと価値観、その関係
前置き
前回は人の善悪、価値と価値の毀損について触れた。
人は価値と価値の毀損を経験してその判断力を養うが、価値の毀損を認識することは本人にとって大きなストレスとなる。
今回はストレスというものを価値観の視点から再確認して、その対処を考えてみるものである。
ストレスとは
ストレスは個体が外部からの要求(ストレッサー)に適応しようとする過程で生じる身体的および心理的な反応である。
進化の観点から捉えると、ストレス反応は生存と適応に不可欠な機能と言える。
ストレスは、外部の脅威やリスクから個人の身を守り、適応するための即時的な反応を可能にする。
しかし、現代社会においては、ストレスの原因が複雑化し、長期にわたるストレスが様々な健康問題を引き起こす原因となっている。
価値観との関係
価値観との関係から見ると、ストレスは、個人自らの期待や個人が所属する社会からの期待と、個人の内面的価値観との乖離によって生じる心理的緊張であると言える。
この緊張は、価値の追求という人間の根本的な目的と直結している。
価値観は、我々が日々遭遇するストレッサーにどのように反応するかを決定づける。
人間の行動の優先順位は、人の価値観の体系によって左右される。
価値観と社会適応
個人がその価値観を基準にする一方で、歴史的に見て社会もまたその規範、価値観を育ててきた。
人類は社会的知識の継承によって進化を遂げてきたが、個人は個体の死によって価値観が断絶するため、個人の価値観と社会的価値観の間には必然的に緊張関係が生まれる。
社会を形成する個人の意識には偏りがあり、また、そこから形成される規範としての社会的価値観も未熟な側面を持つ。
個人においては、その社会的価値観と自身の内なる価値観との調和が課題となる。
個人が自己の価値観に基づいて行動することは、社会適応の基礎を形成する。
自己の価値観に忠実であることは、自己実現と満足感を得る上で重要である。
それは同時に社会における役割を果たす上での自信と安定感を与えるが、しかし、この過程はしばしばストレスを伴う。
ストレスと成長
ストレスの主な原因となるのは、個人の価値観と社会的価値観や現実環境の実際との矛盾、不一致である。
強烈なストレスは、その個人の価値観を歪ませることがある。
それは、その個人のストレスへの適応とも言える。
しかし、この場合においては、原因となる問題は解決されず、後々にまで影響を及ぼすさらなる原因となる。
一方で、価値観と現実との、その矛盾の解消がストレスの根本的な解消、問題解決の決め手となる。
価値観と現実との矛盾を解消する際に必要となるのは、その矛盾の構造の正確な理解である。
その理解に基づいて、その矛盾を解消する方向へ自らの価値観の認識を調整することが、その個人の成長へとつながる。
ただし、ここで注意が必要なのは、社会的価値観がその個人にとって真に善となるとは限らないということである。
人間の価値観の共通となる原型には前回で触れたが、その根本に逆らってはならない。
場合によっては、社会的価値観にこそ変更の必要があると言える。
社会は未だ未熟であり、進歩の余地を大いに残している。
終わりに
このように、ストレスと価値観との関係を簡単に見てきたが、人が知性を求めるのであれば、そこに必要なのはストレスというものの正確な理解である。
ストレスというものを恐れ、拒絶するのではなく、あくまで人間の一部として御することが、個人の成長、ひいては価値の追求、幸福への近道となる。
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