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【小説】『私、分かりません』

中学生の頃、よく悔しくて泣いていました。

理不尽なことがあった友達のために、悔しくてよく泣きました。

でも、途中から何がなにやら分からなくなっても、泣いていました。

理不尽なことにあったと相談してくれた子が、先生を呼んできて、みんなで泣いている私を慰めてくれました。

「あなたは、心が優しいから」

「そんなに泣かなくても、大丈夫だよ」

「感受性が強いのね」

そう。私は優しくて、心が温かい人なのです。感受性も人一倍強くて、悲しいことや辛いことが、人より苦しくて、泣いてしまうんです。

バスケットボール部に入っている私は、負けることが嫌いです。

身長はさほどないけれど、持ち前の機敏さを活かして、チームで活躍しています。

体育の授業も得意で、女子だけど、男子に混じってやったことのある、サッカーも男子たちに競り負けませんでした。

なにしろ、小学生の頃にみんなが、体育の授業だけでなく、休み時間も私の取り合いで喧嘩になったことがあるくらい。足も速いし、小柄だからこそ身軽で、且つ持久力もあるから。

ある時の体育の授業で、許せないことがありました。

いつも体育で足を引っ張る鈍臭い子が、私の大好きなバスケットボールの授業で、私と同じチームになったのです。

それだけでも腹立たしいのに、その子は試合になっても、ぼーっとゴール前で立っているだけで、コートの中を走ろうともしません。

その上、ゴール前のその子にボールをパスをすると、サッとボールから逃げてしまうのです。だから、ボールは簡単に相手チームに取られ、失点しました。私たちのチームは、その子のせいで負けたようなものです。その子がサボったから。

体育の授業なんだから、まじめにやってほしい。試合なんだから、ふざけないでほしい。

私間違っていますか?

私は悔しくて、泣きました。

その子を指さして、泣きました。

みんな「分かってるよ」と頭を撫でて、慰めてくれました。

みんなその子が悪いんです。私はまじめに頑張って活躍したのに、その子が足を引っ張るから。

心が辛いんです。

バスケットボール部の私がいて、みんなの応援もあったし、みんなの期待もあったのに、チームは負けてしまった。

悔しいのは、怒りが止まらないのは、ねえ、当然でしょう?

私は正義感が強くて、心が優しいから、泣いてしまう。

でも、その後が最悪だったんです。

その鈍臭い子が泣いたんです。

泣いたんです。

ありえないでしょう?

わがままがすぎると思いませんか?

その子は、ぽたんぽたんと涙を流して、一人で泣いていました。

誰も慰めません。

私は泣きながら、少しだけお腹がスッとしました。

私は慰めてもらえるけど、その子には誰も近寄りもしない。遠巻きに見られていました。

自業自得ですよね。

そう思っていたのに、先生が気付いて、その子に駆け寄ったんです。

「また頑張ろう」って、励ましたんです。そしたらみんな、わらわらとその子に近寄っていって、「大丈夫だよ」とか、「今度は私がフォローするから」とか、「授業なんだし、そんなに真剣に考えないで」とか言うんです。

私は一生懸命やっているのに。

鈍臭いその子の、図々しいその子の何が、慰められるポイントになるんでしょう?

その子は、小さい声で「ごめんなさい」と言って、鼻をすすりました。

私は気付いたら、一人で泣いていて、なんだかものすごく惨めでした。

悔しくて、心が叫びました。

こんなのは、絶対おかしいんだって。

先生は、次に泣いている私に近付いてきて、「かわいそうだから、そんなに泣かないであげて」と言いました。

びっくりして、辛くて、心臓が止まるかと思いました。

私が責められてるの? なんで? どうして? 私が、何をしたの? 私が悪いの?

一生懸命、頑張ってやったのに?

世の中には、報われないことだらけだけど、こんな理不尽はありえません。

私、分かりません。

分からないんです。

私が悪いんじゃないのに。

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【余談】
昔から、こういう話ばかり書いています。人物に共感もしにくいし、身勝手過ぎて嫌悪感を持たれるような話。人間は身勝手な生き物だと思うので、こういう人物が気になって書くのですが、もっと書く力をつけて、この一歩先を書けるようになりたいです。

この人物が、思春期あるあるだったら、いいなぁ(なわけないか)。

【今日の英作文】
「夢の形は変わっていい。」
"You can change your dream's direction.''

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