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エンドポイント・セキュリティで注目のクラウドストライク決算発表(2021年2~4月期)

2020年以降、新型コロナウイルスの感染拡大で、多くの人が好むと好まざるとにかかわらず、テレワークに移行しました。
自宅などからリモートで会社のシステムやデータベースにアクセスしたり、オンラインで会議や商談をしたりするケースが増えてきました。
その場合に懸念されたのがセキュリティの問題です。

これまでのセキュリティは、個別にアンチウイルスソフトやアプリを導入するというのがスタンダードでした。
しかし、今や多くのビジネスがクラウドベースで行われるようになり、もちろん常時ネットワークにつながっています。セキュリティも、クラウドベースが主流となっています。

クラウドでセキュリティサービスを提供する企業はいくつかあります。そのなかで、後発ながら注目を浴びているのがクラウドストライク・ホールディングス(以下、クラウドストライク)です。

クラウドストライクってどんな会社

クラウドストライクの創業は2011年で、まだ誕生して10年という非常に若い会社です。

共同創業者でCEOのジョージ・カーツ(George Kurtz)氏は、1999年にセキュリティ製品・サービスを提供する Foundstone社を設立。Foundstone社が2004年にマカフィー(McAfee)に買収された後は、マカフィーの最高技術責任者(Chief Technology Officer)を務めています。
2011年に他のメンバーと共同でクラウドストライクを設立しました。

クラウドストライクは、「Falcon」と名付けたプラットフォームを展開しています。

「Falcon」プラットフォームの特徴は、ネットワークに接続されたサーバやPCなどのエンドポイントを保護するという点にあります。

エンドポイントのセキュリティに関しては、元グーグルで、シリコンバレーのベンチャーキャピタリストである山本康正氏が、著書「2025年を制覇する破壊的企業」の中で、こう述べています。

エンドポイントのデバイスを常にクラウドからチェックすることが有効だということは、以前から知られていました。しかしそれを実現する技術を持つ会社は数少なく、顧客会社側もコロナになる前に需要に気づくことも少なく一般に提供しようとする会社も少なかったことです。クラウドストライクのすごいところは、それを実現してしまった点です。

「Falcon」プラットフォーム

「Falcon」プラットフォームの概要をざっくりと表すと、次のようになります。

・それぞれのエンドポイントには、単一の軽量エージェントがインストールされ、脅威の検出・防止などセキュリティの機能を提供する。

・エンドポイントから脅威のデータを収集し、プラットフォーム内に共有。収集したデータをAIで処理・分析し、即時にセキュリティに反映させる。

・現在、ワークロード・セキュリティ、脆弱性の管理、ID保護、運用管理、ログ管理など19のクラウドモジュールを提供している。

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最新の決算動向

クラウドストライクは、6月3日に2021年2~4月期の四半期決算を発表しました。

   (万㌦)     売上高  営業利益   純利益 1株当たり利益
  2020年2~4月期     17,807  -2,257   -1,922    0.02㌦
2020年11月~21年1月期  26,492  -1.580   -1,900    0.13㌦
  2021年2~4月期     30,284  -3,134   -8,287    0.10㌦

売上高は3億284万㌦で、前年の同じ時期と比べ70.1%増と大幅に増加し、3月に公表した見通し(2億8780万~2億9210万㌦)を上回りました。
これは、四半期ベースの売上高としては過去最高となります。

内訳は、
・サブスクリプション収入:2億8122万㌦(前年同期比73.4%増)
・プロフェッショナルサービス収入:2161万㌦(前年同期比36.3%増)
となっています。

大半を占めるサブスクリプション収入は「Falcon」プラットフォームのサブスクリプション料金と、クラウドでサポートされる追加モジュールの料金で構成されています。
プロフェッショナルサービスは、インシデントレスポンスやフォレンジック、マルウェア解析などが含まれます。

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支出面では、
・販売関連費(Sales & marketing):1億3513万㌦(前年同期比53.3%増)
・研究開発費(Research & development):7818万㌦(同92.7%増)
・一般管理費(General & administrative):4237万㌦(同69.2%増)
と、コストも大きく増加しました。

また、クラウドログ管理のHumio社買収に伴う税金費用を4880万㌦計上した結果、純損失は8287万㌦と大きく膨らみました。
調整ベース(Non-GAAP)の1株当たり利益は0.10㌦となり、3月の見通し(0.05~0.06㌦)を上回りました。

顧客数は順調に増加

データが確認できる2019年4月末時点以降のサブスクリプション顧客数は順調に増えています。

とくに新型コロナウイルスの感染が広がり、リモート対応が本格的に必要となった昨年5~7月期以降は、増加のペースが上がっています。

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F1メルセデスチームをサポート

クラウドストライクは、2019年2月に、自動車レースの最高峰であるF1のメルセデス・ペトロナスチームとパートナーシップを締結しています。

メルセデスチームは、週末の1回のレースで1台の車から収集するデータが平均で500GB、チームのファクトリーで生成されるデータは週に5~10TBにもなるなど、膨大な量の情報を取り扱っています。

レースは世界各地を転戦し、その間も常にファクトリーなどとの情報のやり取りが行われるため、サイバー攻撃などの脅威にさらされやすい状況にあります。こうした脅威からチームを守るというのが最大の目的です。

また2021年は、メルセデスが同じくF1でレースカーを先導するセーフティーカーを供給することとなり、その車体にはクラウドストライクのロゴが掲載されています。

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今後の見通し

2021年5~7月期の収益見通しが発表されています。

<2021年5~7月期>
売上高:3億1830万~3億2440万㌦(前年同期比60~63%増)
1株当たり利益:0.07~0.09㌦(前年同期比2.3~3.0倍)

また、2022年1月期の年間見通しについては、3月発表時点の数値を据え置いています。

<2022年1月期(年間)>
売上高:13億4700万~13億6570万㌦
1株当たり利益:0.35~0.41㌦

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まとめ

・独自のエンドポイント・セキュリティプラットフォームに特徴
・2021年2~4月期の売上高は前年同期比70.1%増加
・費用も増加、合併による税費用計上し、純損失拡大
・調整ベース1株当たり利益は0.10ドルで前年同期比5倍
・21年5~7月期も大幅増収見込み、年間見通しは据え置き



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