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爆音の正体

ゴオオオオオオオ、ガガガガガガ、ブンブン、カシャ、ゴオオオオオオオ

7月のある晴れた朝、日本全国津々浦々、一人残らずすべての人が飛び起きた。

雷の10000倍ほどの騒音が、突如鳴り響いたのである。

しかしそれは、雷のように単一の音ではない。たくさんの様々な音が交じり合った紛れもない騒音だ。

空から日常に降り注ぐ爆音に人々は混乱し、口々に何かを叫んでいるがその声はもはや誰にも届かない。

学校は休校、会社は休み。皆、イヤホンや耳栓を耳にはめ、それでも足らず耳に布をあてがっている。

街中に人々の声はなく、あるのはひたすらに響く爆音のみである。

夜になっても鳴りやまない騒音に、夜9時、日本政府がやっと対策案を示した。

騒音を録音して重なった音を分解し、それぞれについて専門家協力のもと分析を致します。分析結果は、明日の午後4時、会見を開いてお伝えします。

迎えた午後4時。日本中がテレビ中継を無言で見つめる。

ただいまより分析結果を報告致します。

「騒音を構成する主な音は以下の4つ。

①ゴオオオオオオオ

②ブンブン

③カシャ

④ガガガガガガ

であります。

さらにこれらについて詳細に分析致しますと、

①掃除機

②自動車

③スマートフォン内蔵のカメラ

④洗濯機

の音に酷似していることが判明致しました。

これらの音に共通するのは、「静かであればあるほど歓迎された音」であるということ。

つまり、我々の無音を求める意識によってこれまで削減され、蓄積された騒音がこのたび爆発して、今回のような事態を招いてしまった。

これが専門家会議における見解であります。

以上より、今後の対策として次のことを決定致しました。

・静音性追求製品製造禁止法を制定する。

・騒音愛護協会を設立し、騒音の権利を保護する。

皆さま、ご理解ご協力のほど、どうぞよろしくお願いいたします。」





<おわり>








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