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雨の奥[十五]


「あれは…夏期講習のバイトで忙しかった夏も終わり、ようやく外が涼しくなってきた頃でしたかね、私は、研究室で倒れました。

やっぱり少し無理をしすぎていたようです、あの頃ほとんど寝ていませんでしたから。

連絡を受け、だいぶ大きくなったおなかを抱えて病室に駆け込んできた澄子さんの顔も、なんだかものすごくものすごく久しぶりに見たような気がしました。

でも彼女の姿を認めた瞬間、心からほっとして落ち着いて、無機質な白の空間さえもが溶けて私を包んでくれているように感じたのを覚えています。

そんな彼女に、私は甘い慰めの言葉を期待していたのでしょうか。もしくは、心配から生まれた叱り、優しさの裏返しのそっけなさ、そういったものなんかを。でももはや、どれでもよかったんです。そのあと彼女が言った言葉以外なら。

『私たち、別れましょう。』」

<つづく>




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