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【03_写真について】


 写真について、語るのはあまり好きではない。

 SNSなどでも写真の話をせずに、旅の話ばかりしているのは、わざと写真の話をしないようにしてるからである。

 写真に関して、とてもではないけれど、その思いや考えを言葉で表しきれるものではないと思っている。言葉にした時点で、ありきたりなものになったり、どこかの誰かが言った言葉のように聞こえるのが嫌だし、何より、まだまだ自分は写真について語れるほど、写真のことを理解できていないと思ってるところもある。


 自粛期間中、撮影に出ることが出来ず、正直苦しい時間を過ごした。そんななかで、もし次に撮るならどんな写真を撮りたいだろうかと考えたとき、やっぱりポジティブなものを撮りたい。

 考えて撮るのではなく、手法に頼るのではなく、差別化のための写真ではなく、ただ単純に人の心を大きく揺さぶるような、それもポジティブな方向に揺さぶるようなもの。

 30代前半の頃の写真は、気持ちと技術と体力がリンクし、それをある程度実現できていたような気がするけど、この数年は、どこかズレがあったような気がする。

 もしこれから新たに写真を撮る機会が与えられるなら、自分も含めて、見た人の世界が広がるような、前に向かうようなものを見てみたい。
 でも世の中はどこか遠くへ行って写真を撮りに行くことを許すような状況ではない。

 ならば、僕がいま見たいと思っている光あふれる世界を、これまで撮ったもののなかから選び出して、一冊の本にまとめようと思うようになっていった。


 ろくでもないニュースばかりの2020年に、ひとつだけ明るい世界を構築してみようと思ったのだ。閉じていく世界に対して、開いた世界を作り上げてみよう。ささやかな抵抗を試みることにした。

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