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キャンプは不便でめんどくさい。でもそれが楽しい。

私たち家族は人の多いところが苦手です。イベントや街が苦手です。私はディズニーランドに行くと、夢の国にエネルギーを吸収されてしまい、疲れが取れるのに1週間もかかってしまう。そんな人間です。

一方、キャンプはとても充実感を感じます。コロナ禍以降は一度も行くことができていませんが、その前は朝霧高原の草原、伊豆の森の中、富士五湖の湖畔など、毎回テーマを変えながら楽しみ方を模索したりしました。

なぜキャンプを楽しいと感じるのか。これは私なりの考えですが、キャンプは不便でめんどくさいんです。それが楽しいと感じる人もいれば、絶対無理!という人もいるでしょう。私たち家族はちょうど前者の人間だったようです。最近はグランピングといった選択肢もありますが、私がそれに心を惹かれないのは、単に自然を感じられるだけがキャンプの楽しみではないと感じているからだと思います。

衣食住の不便さがイベントに変わる瞬間

私が思うキャンプの醍醐味は、不便でめんどくさいというところにあると思います。しかも、時間や手間がかかるという意味ではなく、通常人間が安心して暮らせるための三要素である衣食住が平等に不自由になるという点がポイントです。

たとえば、焚き火。

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写真映えしますが、この写真を撮るためには、当たり前なことではあるのですが、焚き火台を用意し、薪を買い、それを細く切り分け、火を起こさなければなりません。服には煙の匂いがつきます。火を使ってバーベキューすると、美味しいお肉とセットでススまみれの鉄板がついてきます。火の不始末を忘れたら最悪焼死しかねません。ガスコンロやIHでは味わえない行為です。

しかしキャンプは、この一連の流れにある不自由さ一つひとつのプロセスが楽しく、そして愛おしさを感じます。また、キャンプにガスコンロを持ち運ぶ場合も、運べる道具は制限されます。けれど、いつもの何倍も時間をかけて作った料理が何倍にも美味しく感じられます。

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テクノロジーと自然の調和を問いただす機会

不便になるのは食だけではありません。まず家がないですから、テントやタープが必要です。風が吹けば寒いし、暑ければ虫に刺されます。状況によってはそれも命の危険があります。何を着るか、どのように対策するのか、これらは経験と想像力を駆使して事前に考えておきます。

衣食住が不便になる一方で、キャンプは非常にテクノロジーとの相性も良いという側面があります。テントやジャケットといったギアに使われているファブリックは特殊な合成繊維でできており、普段の生活では有り余る機能を備えています。

また、私たち家族のキャンプでは電子機器のデトックスは行いません。スマホやWi-Fiルーターも使います。限りのある電気をうまく使いながら、その瞬間にしか撮れない映像を記録します。そして、共有します。他の方の写真も見ながら、次はどこで何をしようかと、想像力が湧いてきます。

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キャンプは不便でめんどくさいことをやる一方で、限られたリソースの中でテクノロジーを駆使してその楽しさを最大化しようとします。キャンプというと、あまり行かない人にとっては自然を愉しむものだと考えがちですが、自然の中に入るための道具は人間の知的活動が高度に具現化されたものだと言えるでしょう。

自然との対話の中で人間らしさとは何かを考える

衣食住の不自由さ、テクノロジーの利用があって初めて、私は自然とのコミュニケーションを身体でじっくり感じることができると思います。景色はもちろんのこと、川のせせらぎや風で草木が揺れる音、匂い、そして食事。五感が研ぎ澄まされていくのを感じます。

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衣食住の不便さによって一つひとつの行為に時間がかかり、身体は程よく疲れています。むしろそんなときの方が身体の感覚はいつもより鋭敏になっているような気がします。

自然の中に身体を委ねたとき、自然とは何かを心と体で感じると共に、その中で自分を振り返る時間が生まれます。そのせいか、流れる時間の速さもゆっくりになったような、そんな感覚が生まれてきます。自然と対話をしながら、実は自分との対話が心の中で進みます。

キャンプは人それぞれのあり方と楽しさの自由度が広い

私たちインドアな家族の場合は、キャンプの中で仲間と賑わいながら沢登りをしたりハイキングしたりといった活動はあまり多くありません。腰をかけ、時間の経過と共に変化する景色を楽しみながら読書したりすることもあります。それは、我が家にとってはキャンプは心の充電だと考えているからです。

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一方、よりアクティブに何かしたい人にはそれぞれの楽しみ方もあります。魅力的な映像を作ろうとカメラを回す人もいるでしょうし、ナイフを使ってよい道具をその場で作ってしまう人もいるでしょう。どれくらいの不自由さとテクノロジーを使うかを選ぶことができるのも、キャンプの面白さの一つでしょう。

時々そういった趣向の違う人たちと混じって新しいキャンプの楽しさを見つけていくというのも魅力的かもしれません。キャンプは自然を楽しむものだけれど、とても人間的な活動だと思います。

おわりに

今回の記事は「#キャンプの話をしよう 」の企画を見て書かせていただきました。キャンプの魅力を多角的に見ることができる機会になるので、他の方は何を書いているのかとても興味が湧いてきます。

私の視点はキャンプを人の知的で内省的な活動から考察しました。この記事を読んで、また違った見方、新しい認識が生まれていったらいいなと思います。

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