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大人の学びのNGは「年齢のせいにすること」と「他人と比較すること」

8月もお盆を過ぎた頃になると子どもたちが宿題に焦り始めるように、大人もふとお盆前を思い出しながら「休日の前は新しいことを学びたいと思ったのに、全然できなかったなぁ」などと思ったり。そんな反省を毎年繰り返してしまうのは、私だけでしょうか? 私は老若男女問わず、さまざまな場所でさまざまな学びの環境をデザインする仕事をしてきましたが、そんな私でも同じ反省を何度もしています。

ただ、もし実際に学べなかったとしても、そもそも大人になったら他にやらなければならないことや気になることはいくらでもあるので、ある意味良い開き直りをしています。本当にやりたいことであれば、時間がなくても必ず少しずつ向き合っていけます。

逆に、大人が学ばない理由でも、とても生産的とは言えない言い訳も存在します。私は次の理由だけは、絶対自分にはしないと決めています。それが今回のタイトルにもある「年齢のせいにすること」と「他人と比較すること」という理由です

学ばない理由を年齢のせいにしてはいけない

どこかで「今日が一番あなたが若い」というフレーズを聞いたことがあります。最初に誰が言ったのかは分かりませんが、全くもってその通りです。明日より今日の方が若いに決まっている。だから今日学ばない理由を年齢のせいにしてはいけないのです。

他の組織、例えば骨格や筋肉は年齢とともに衰えていきますが、日々適度な運動と栄養の摂取によって、衰え方をゆっくりにすることは誰にでもできます。

それに比べれると、脳や神経という組織はもっと効果がてきめんです。一日の消費カロリーの20〜25%も使う、すごく燃費の悪い組織ですが、使えば使うほど、その能力が高まっていきます。25歳の時より50歳の方が、人によってはより深い洞察や推論が可能になっているかもしれません。骨格や筋肉では覆すのは相当に難しいでしょう。

年齢のせいにするが非生産的な言い訳であるというのは、簡単に言えば自己に対する認識を否定し、今日より明日、明日より明後日はさらに悪くなるということを言っているのと同じです。これは学ばない理由ではなく、学ばなかった結果です。因果関係を逆転させてはいけないのです

自分を他人と比較してはいけない

何かを学びたいというとき、必ず現在の自分の姿と、学んだ結果実現するかもしれない自分の姿との差が生じます。その差を、学ぶことで埋めることができるだろうというポジティブな予測と、粘り強く学びに向かう姿勢はとても大事です。あくまで、自分の中で比較しているというところがポイントです。

一方、同じ時間座標で、現在の自分と、すでに実現している他人を比較するのは、論理的かどうか以前に、とても不毛です。もちろん、目標となる他人を見つけて、未来の自分と重ねるのはアリです。目標ではなく、他人との「差」に意識を向けすぎることにトラップがあるのです。

もしかすると、学校や職場で、同年代の人と共に時間を過ごした中で、集団の中での自分の位置(相対評価)を意識してきた人もいるでしょう。平均点との差や偏差値を、自分の価値と思ってしまった人もいるかもしれません。

でも、そもそも世の中の人はバラバラで多様です。いつ生まれたか、どこに住んでいるか、どんな経験をしてきたか、一人ひとり違って当たり前です。当然そこには能力の差も生まれます。でも、他人と比べて能力に差があったとしても、あくまでそれはある一側面の差であって、他の側面ではあなたの方が優っている可能性もいくらでもあります。全ての側面を取り出すことは不可能ですし、その側面も時間と共に増減を繰り返していきます。ある現在の能力の差を他人と比較することはそもそもあまり意味がありません。

学びには「側面を増やす」という要素がある

大人の学びの面白いところは「側面を増やす」という点にあると私は思っています。

例えば、学校なら国語算数理科社会といったように、科目があります。そしてその科目は有限です。この科目の数を側面と捉えてみてください。大人の場合、というより現実の中では、そもそも科目がありません。そしてありがたいことに、全てにおいて等しく優れた人というのは存在しません。

大人の学びは、ある側面を成長させるために行うものですが、価値としては、成長した分の差よりも、他の側面と組み合わせたときにこそ真価があるのではないでしょうか

年齢や他人との比較を学ばない理由にしてしまうのは、そういうチャンスを自分でみすみす逃してしまうことにつながると私は思います。もちろん、学んだ結果、どうしても自分には難しかった、うまく合わなかったということもあるでしょう(私はしょっちゅうあります)。けれど、それが見つかることもまた学びです。

今回の話は、あくまで一個人の見解にすぎませんが、これから何かを学ぼうと考えて、けれど最初の一歩を踏み出すことに躊躇している方の背中を少し押すことにつながれば幸いです。

最後まで読んでくださってありがとうございます!