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デジタルネイチャー時代の将棋:AIと人間が共存する新たな局面

AIによる将棋

現代将棋ではAIが何億もの手を読み、最善手を導き出す。それまでの棋士たちは、最善手の勘所やあたりをつける。言わば、経験からの発想による感覚である。これが羽生善治九段が言う「人間の指す手」である。
対局は人間同士の指し合いであるため、「人間の指す手」以外はなかなか出てこない。言い換えれば、「人間の指す手」以外は考えないのである。AIによる研究は盛んに行われているが、AIが出した最善手では、その後、人間には指しにくい場面がある。結局、AIによる検討は行われるものの、現段階ではAIと人間が共有するには限界がある。

次の時代のデジタルネイチャー

筑波大学准教授・落合陽一氏が提唱するデジタルネイチャーとは、人間とコンピュータの区別なく、それらが一体として存在する新しい自然観とその性質を指す。物質とVRの境界線がなくなり、相互の関係も上下関係ではなく共生関係になっていく。

また、落合氏はデジタルネイチャーに訪れる世界について以下のような例を挙げている。
・物質かVRか区別がつかなくなる。
・モノや生体の内部構造までモデリングするようになる。
・究極的にはDNA構造までモデリングする。
・SNSや日々の行動歴から人格までもが複製される。
これらは全て、デジタルとアナログの境界が曖昧になったデジタルネイチャーの世界で起こりうることである。

デジタルネイチャーと将棋

藤井聡太竜王は、羽生九段の「人間的な指し方」というより、AIとも思わせるほどの正確無比な指し方である。これがデジタルネイチャーだと言わざる得ない程の強さである。しかし、藤井竜王であっても、一億手以上の手筋を読むことは不可能である。どこかに勘所があるはずである。

まとめ

現代将棋ではAIが指す手、人間が指す手、そしてAIが改めて発見した人間とAIの中間の手がある。AIだけが指す手を考えても、対人間である以上、お互いがAIと同じような手を指し続けることはできない。疑人間だけが指す手は、研究が進んでいて膠着状態になりやすい。中間の手ほど、研究されていないことが多くて、勝機の可能性が上がってくる。これは、将棋に限ったことだけでなく、これからのAI検索やVRなど、テクノロジーの分野で、ますますデジタルネイチャー化していくだろう。また、人間のできることも、新たに拡がっていくだろう。


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