見出し画像

馳走の朝ごはん-朝ごはん定食イベントを開催しました

2023年最初の土曜日、1月7日(土)に地元・葉山の素敵な古民家複合施設”楚々葉山”さんをお借りして、朝ごはん定食を提供するイベントを開催しました。

これは単発の試みではなく、月1回くらいのペースでしばらく継続し、いろんな試みをし、よい場を築いていきたいと考えているので、今回はその第1回の記録と、開催までの経緯を記録に残しておこうと思います。

2022年の言葉を問われたら、
答えは「不完全燃焼」の一言に尽きる

2022年は私にとって「料理・生産者・地域・関係づくり」のキーワードが常に頭から離れず、考えてはやってみて、不完全燃焼感がずっと拭えない1年でした。

いろいろな方や場所と出会いにも恵まれ、さまざまな新たな取り組みもでき充実してはいたものの、なにかずっと残る不完全燃焼感…。
空亡は2月に明けたはずなのに、なぜ…。
そんな心情だったので、私はいつも何かに焦り、もやもやとしていました。

私は仕事柄、いろんな地域に行く機会があり、生産者さんとも出会います。
2022年の秋とある地域に出向き、ある方と話していた時に私の地元・葉山の話になった際、ふと「地元と言っているけど、私は葉山で関係づくりをちっともしていないな」ということに気付かされます。

そんな地元とも関係をつくれていない私が、住んでもいない地域と関係づくりなんて、なんか嘘っぽいなとも思い、なんだか頭を打ちのめされた感覚。

そういえば葉山に越して2023年で10周年になるし、葉山で何かやってみる、というのもありなのかも…?そこを中心に各地域とも関係をつくることも可能なのでは…?そんな想いがふとよぎりました。

楚々葉山さん(写真は楚々葉山さんのWebから拝借)

同じ頃に友人に教えてもらい、我が家のすぐ近所に新しくオープンした”楚々葉山”さんを知り、地元・葉山で「料理・生産者・地域・関係」のキーワードを形にしたいという想いがバババッと固まり、気がついたら”楚々葉山”さんにインスタDMを送っていました。

この時2022年11月10日。
何か、いても立ってもいられずに衝動的にインスタDMを送ったのを覚えています。

楚々葉山”さんにキッチンがあるのか。
楚々葉山”さんで食事を提供することができるのか。
私に有償で食事を提供することができるのか。
キャパは?1人でやるの?いくらで?……そんなことは全部考えずに。

すぐに”楚々葉山”さんで企画相談させていただき、先方でも同じような企画を考えていたということもあり、その後はとんとんと話が進みました。

ホント、細かいことを考えすぎず、まずは話してみるって大事。

コンセプトは
週末のはじまりが心地よくなる「馳走の朝ごはん」

今回のイベントで配布させていただいたメニューには、以下の言葉も記載させていただきました。

コンセプトを記載したメニュー表

皆さまの休日の始まりが、
おいしくて心地よいものになりますように。


この度は"馳走の朝ごはん”に足をお運びいただき、ありがとうございます。

"馳走"の語源は"走り回ること"。
その昔、大切なお客様の食卓を用意するためには
食材を集めるためにほうぼうを走り回る必要がありました。

地元葉山のもの、神奈川のものをはじめ
全国のおいしくて、地球にもひとにも心地よいものを。

つくり手である影山由美子が走り回って出会った生産者の食材を
"朝ごはんの定食"という形でお届けします。

馳走の朝ごはん at 楚々 葉山

毎日の料理を楽しみにする
よい食材には、その力があると信じています。

暑苦しいとは思いつつ、この言葉も掲載しました。

当日盛り付けを担当してくれたメンバー

私は料理の会社であるクックパッド(株)に所属しています。
クックパッドのミッションは"毎日の料理を楽しみにする"です。

これは勤務先のミッションであると共に
私の人生のミッションでもあります。

料理とは、日常で楽しめるクリエイティブな活動です。

料理をするようになると人は、その食材がどこの誰の手でどのように育まれたものか想いを馳せるようになります。
その環境やつくり手のストーリーを知ることで、料理のつくり手は食材の多様性を知り、料理の多様性を知り、クリエイティブな活動として料理を楽しめると、私は信じています。

そして、おいしくて心地のよい食材は料理をとてもシンプルにしてくれます。
料理を楽しむ人が増えると生産者にも幸せな未来が訪れるのではないでしょうか。

今回も、おいしくて心地のよい食材を集めているので、"馳走の朝ごはん”の調理方法はとてもシンプルです。
もし、レシピをお知りになりたい方は、ぜひお声がけください。

"馳走の朝ごはん”が、皆さまの料理の楽しみの一助になれば幸いです。

馳走の朝ごはん at 楚々 葉山

私が目指すゴールは、私が料理を提供することではなく、それを通じて食材の多様性を知って頂き、料理を楽しむ人が増えることです。

2023年1月7日(土)のメニュー表

メニューを決めるのが本当に難しかった…!
内容もさることながら、原価計算や前日の仕込み、当日の提供オペレーション…気になることはたくさんあって、イベント開催2日前までFIXしませんでした。

写真提供:当日足を運んでくださったお客様
メインディッシュのプレートは楚々 葉山さんにお借りし、それ以外は我が家のうつわコレクションを持ち込みました。

朝ごはん定食 1,500円(税込)
1:ごはん 選べる白米
 ・KURUMAYA FARMさんの特別栽培 はるみ(神奈川県小田原産)
 ・八十八夜さんの自然栽培 縄田米 森のくまさん(熊本県玉名市産)
2:ごはんのお供
 ・チキチータファームさんの平飼いの"あずさ"初卵(神奈川県横須賀市)
 ・Seven Baysさんの有明海産 佐賀海苔(佐賀県有明海産)
 ・北伊醤油さんの特醸もろみ醤油(福岡県糸島市)
3:湘南のおさかなのおかず 鮮魚の漬け
 ・定置網かんすけさんが水揚げしたワラサ、スズキ(神奈川県横須賀市)
  楽しみ方は3種類)
  ・ヅケをそのままで
  ・溶いた卵にヅケを入れて、宇和島鯛めし風で
  ・アラでとったダシ汁をかけて、ヅケ茶漬けで
4:お野菜の副菜
 ・安田養鶏場さんのかぶ(神奈川県横須賀市)
 ・加藤兵太郎商店さんの味噌(神奈川県小田原市)と
  風土農園さんのササシグレ米麹(岩手県遠野市)で
  つくった 味噌麹ディップ添え
5:香の物
 ・安田養鶏場さんの三浦大根(神奈川県横須賀市)
 ・葉山町産 柚子
6:お味噌汁
 ・風土農園さんの搗き立て玄米餅(岩手県遠野市)
 ・加藤兵太郎商店さんの味噌(神奈川県小田原市)
 ・神奈川県産 春の七草

小さい追加のおかず -サバの味噌煮- 250円(税込)
 ・定置網かんすけさんが水揚げしたゴマサバ(神奈川県横須賀市)
ごはん おかわり 200円(税込)/杯

馳走の朝ごはん at 楚々 葉山

価格付け…本当に難しい。

このイベントを開催するに当たり、一番迷ったのが価格付けでした。
お客様に提供する、と考えると
・この価格を高い!と思われないか?
・この価格に見合うものを提供できるのか?
などなどを考えてしまい、
つい「価格という数字」だけにビビってしまう自分がいました。

今回のコンセプト「馳走の朝ごはん」は
”地球にもひとにも心地よいものを”を集めること。
決して原価は安くない。

預かる食材の価値を伝えるのであれば、価格も含めて理解して、適正な価格で提供した上で食べ手に理解してもらえなければ意味がない。
私が赤字で我慢すれば良いって話ではなく、生産者と適正な価格で取引し、私も継続可能なコスト計算にし、その価値を理解していただける方に食べていただければ良い。

当たり前の話ではあるんですが、これを当事者として身を持って設計し世の中に出すということは、割と勇気のいることでした。
世の中の飲食店経営者の皆さまを始め、世の中の価格決定者の皆さんを尊敬します。

前日1月6日(金)は食材調達、仕込み

この日は会社を休み、早朝から食材調達、午後から仕込みでした。

朝6時半の神奈川県横須賀の佐島

今回、お魚は地元・葉山の女性漁師あきらさんにお繋ぎいただき、神奈川県横須賀市大楠(漁協)の定置網のかんすけさんから買わせていただきました。

船が着いたら、てきぱきと仕分けする皆さん
贅沢に氷漬けではなく、活けの魚を購入

この時期に相模湾で穫れて、私がさばけて、漬けにできる魚…ということでスズキとワラサを購入しました。

サバも大漁!

ふと横を見ると、まるまると太っておいしそうなサバが…。
つい堪えきれず、ゴマサバも追加で購入してしましました。メニュー表の「小さい追加のおかず」は、私の衝動買いによって生まれました(笑)。

今回の初卵を生んでくれた、あずさ

魚の次は卵。こちらも神奈川県横須賀のチキチータファームさん。平飼いの放牧飼育の新鮮な卵が買えます。

当初、卵は味玉にしようと思っていたのですが、チキチータファームさんの卵が仕入れられるとなって急遽、生食での提供にしました。
生食であることを伝えたら「それなら初卵で用意しましょう」とおっしゃってくださり、あずさという品種の初卵を仕入れました。

初卵とは、孵化した鶏が初めて産む卵のこと。ヒナの頃から蓄えてきた栄養を含むといわれており、栄養価が高い卵です。とても貴重です。

産みたての卵

チキチータファームさんの卵は小売で1個100円します。
所謂、スーパーで売っている卵とは全く違う価格設計です。

でもそのとても安い卵が、なぜそれだけ安く提供できているのか?
その生産の現場を知った上で買っている人がどれだけいるのか、と私は思います。低価格という値段の後ろには、誰かの、または動物や環境の、無理の上に成立していることも多いのです。

私が伝えたいのは、低価格のものが悪い、と言っているわけではありません。伝えたいのは、それしか知らずに疑いなくそれを買う、のではなく、自分が口にする食材のことをルーツから知り、知った上で自分でそれを選び口にしてほしい、ということです。

1個100円の卵は高いのか?
これは今回の食材調達で私が一番、自分の価値観も問われたことでした。

きれいな顔!

野菜なども調達して、家に帰ったら早速、調達した魚のさばき大会です。
旦那さんと協力して大きな魚たちと格闘しました。

目の輝きが違う!

もうこのツヤを見てください。目も澄んでいてキレイ…!
この日は0時近くまで仕込みをしていましたが、遠足の前日状態の興奮していたからか全然寝付けれませんでした笑。

ひとりも来なかったらどうしよう…と思っていたけど
え?!オープン前から行列ができている…!

さて、いよいよ迎えた1月7日(土)当日。
数日前まで雨マークだった、気になっていたお天気は晴れ!
私は常々自分は晴れ女だと思っていたけど、今回も無事に晴れてくれました。

楚々 葉山さんのエントランス

当日のメンバーは私と旦那さん+2名のメンバーが来てくれました。
朝8時に集合し、9時半の営業開始まで一気に料理の仕上げと、お客様を出迎える準備を行います。

お気に入りのお米や味噌、玄米餅、海苔、卵などの物販もしました。

今回使った食材の一部も、物販しました。

オープン前のイベント会場

コンセプトとメニュー表を置いて、お客様が入る前の会場。
このときは「誰も来なかったらどうしよう〜」とか「余った食材はどうやって食べよう〜」なんて呑気に考えていました。

いよいよオープン!

この日、たまたま”楚々葉山”のオーナー恵さんもいらしてたんですが、突然キッチンにいた私のところにきて「もうお客様、外で並び始めてます!」と…。

え〜!?では、予定より10分早いけど、寒い中待たせるのもアレなのでもうオープンしちゃいましょう、とお客様をお迎えしたら初っ端から満席でした…。

皆さん、お集まりいただいてありがとうございました

楚々葉山”さんのファンの地元葉山の皆さんを始め、私の前職や現職クックパッドの同僚、友人、お久しぶりの皆さんなどなど、鎌倉や東京から(前日、箱根旅行に行っていたはず なのに箱根から直行してくれた人も!)たくさんの方がいらしてくださいました。

1人も来なかったらどうしよう〜、なんて思っていたのは杞憂に終わり、結果としては予定よりはるかに早く11時にはラストオーダー、完売となりました。

来ようと思っていたのに、完売で入れなかった…という方もいらっしゃったようです。せっかく足をお運びいただいたのに、本当にすみません。

皆さんともっとゆっくり話したかった…

不慣れな点があり、お席に通されるまでお待ちいただいたり、お料理をお出しするのが遅かったり…もういろんな点が至らないことが多かったのですが、葉山や”楚々葉山”さんの空間がそうさせてくれるのか、こういうイベントに興味を持つ方々がそもそもそういう方なのか、皆さんおだやかにおしゃべりしながらお待ちいただき、「おいしかった!」と言っておかえりいただきました。ご来場いただいた皆さん、広い心でありがとうございました。

突然の満席スタートで、我々チームがテンパりバタバタしている中、”楚々葉山”のオーナー恵さんがお客様のご案内を仕切ってくださり、本当に心強かったです…!笑顔で少年のようにイキイキとされていて、守護神のようでした。恵さん、”楚々葉山”のスタッフの皆さんも、超絶サポートありがとうございました!!!!

次回は2月11日(土)9時半スタート、の予定です

今回は初回ということで、課題もたくさんたくさんあったのですが、結果としては大成功だったなと思っています。

生産者さんはもちろん、当日に足を運んでくださった皆さま、楚々 葉山さん、当日協力してくれたメンバーに旦那さん。
いろんな方々のお力を借りた上での、大成功。

私がこの取り組みでやりたいことはまだまだたくさんあるので、課題は改善しながら、そして新しい取り組みを取り入れながら、葉山でよい関係づくりをしていきたいと思います。

次回は2月11日(土)9時半スタート、の予定です。
場所は同じく、”楚々葉山”さんをお借りします。
私は気持ちを切り替えて、もう次回のメニューづくりを始めています。

今回お越しの方ももちろん、はじめましての方も、
ぜひお待ちしております。

※イベントの告知はIGが一番早いです。

https://www.instagram.com/yumico_kageyama/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?