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さよならネスト。とあるコミュニティスペースの3年間。

2021年夏。地元の学生たちが、全国から集まった同世代や、海外で働くおとなと、わいわいと食卓を囲み、たわいもない話から悩みまで語るリビング。

「こんなところがあったらいいな。」

高校卒業までを過ごした旭川に戻ってきた3年前、妄想していた景色がそこに。

高校卒業後は、国際協力の道を志し、ニュージーランドの大学へ。そこからは、アフリカ、東京、東南・南アジアと北欧まで、1、2年ごとに違う土地で暮らす、そんな生活が10年ちょっと続いた。まさか、地元に戻ってくるとは夢にも思っていたかった。

都会でも田舎でもない、なんとなくパッとしない旭川市。

積極的にUターンしたわけでもなかった自分には、そんなイメージが残っていた。「東京はおもしろい人がたくさんいるからいいよね。」というフレーズは何度か聞いた気がするが、せっかく住むのだから、旭川もめっちゃおもしろい人ばかりで最高だよ、と言える場所にしたいなと気張っていた。

当時、東京でお世話になっていたリバ邸の発起人、家入一真さんの挑戦する人たちの居場所づくりに共感し、旭川にもそんなところがつくれたらいいな、と漠然と考えていた。そんなときに、一足先に旭川にUターンし、空き家再生をしていた高校の同級生がちょうど取得した元歯科医院を見せてもらったのが2018年の初雪のころ。

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築60年を越えた元歯科者さんは、機材や業務用の家具も散乱していて、廃墟っぽさもありながら、少し品のある建物だった。あとから聞くと、早稲田大学の大隈講堂なども設計した戦後の名建築家、佐藤武夫氏が旭川市役所と同時期に設計したらしいとのこと。調べると、青年期を旭川で過ごした彼は、母校の前身となる旧上川中学に通っていて、なんだか縁もあるような気がしてきた。なんとかなりそうだ。

…が、しかし、これまで、パソコンの前に座って偉そうに仕事をしてきたおかげで、DIYスキルはゼロ。しかも200平米以上と、リノベするにはとてつもなく広い…!

ひとりでは到底できなさそうだし、自分と同じく、DIY試してみながら学びたい人もいるかも?ということで、リノベ・ワークショップを開催することに。いろんな人の手を借りながら、2Fのシェアハウス部分、1Fのイベントスペース部分と少しずつ形になってきた。

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コンセプトは、安心できる居場所でありつつも、いつか飛び立っていくような「ネスト(鳥の巣)」。

さらさら流れる水の音、風の匂い。旭川市のシンボル「旭橋」を渡り切って少し足を進めた場所に、nest はあります。

昨日の幸せになるための常識が常識でなくなった今日を、どう生きるのか。何かに挑戦するということは、そんな答えのない問いへの手がかりを得るひとつの方法かもしれません。そして、結果の見えない挑戦を楽しめるのは、いつでも「ただいま」と言える居場所があるから。

安心できて、挑戦したい時にはそっと背中を押してくれる。そんな巣のような場所でありたい。nest にはそんな願いを込めています。

急速に変化する時代に、想いを実現しようともがく人々が自由に羽を伸ばし飛び立てるよう、次世代教育やビジネスの創発の場を、地域の方々と共に創り上げていきます。

振り返ると長かったようで、あっという間だった3年間。

はじめて運営するシェアハウスで、水道凍結と闘ったり(笑)

子どもから大人までみんなで一緒にごはんを作って、食卓を囲んだり、

かっこいいデザイナーさんがエキシビジョンを開いてくれたり、

世界中の人と出会い、つながったり

ちょっと落ち込んだ日に、みんなで散歩してみたり、

世界を旅する高校生が毎年、1ヶ月間暮らしながら学んだり、

人生の新しいフェーズに北海道を選んでくれた移住者が集ったり、

中高生から大人までがたくさんの人が新たなチャレンジをはじめたり、

たくさんの記憶が詰まったこの場所…ですが、寒さの厳しかった昨冬には度々の水道凍結と漏水に見舞われました。たくさんの方に助けていただいてなんとか復旧しましたが、避けられない建物の老朽化…。

むずかしい決断でしたが、ここ旭町のネストとは、2021年8月いっぱいでお別れすることになりました。初めに訪れた時は、まるで廃墟だったこの場所も、たくさんの出会いと人の想いに溢れ、いつしか魂がこもったような気がしています。

「また、次戻るときに寄っていいですか?」

そんな風に想ってくれる人がたくさんいるネストは、幸せものです。
これまで、ネストに関わってくれた、支えてくれたみなさん本当にありがとうございました。

そして、ネスト、たくさんの出会いをありがとう。そして、さようなら。

LIFULL HOMES 「元歯科医院をセルフリノベーション。「Nest Asahikawa」の安心して挑戦できる居場所づくり」
COLOCAL 「旭川市〈nest co-living〉名匠・佐藤武夫が設計した歯科医院をコワーキングスペースへ」
北海道庁ホームページ「旭川で「挑戦」という名の小さな火を灯す」




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