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本日のウニ:バフンウニ⑦16細胞期

8細胞期の胚がもう一度割れて16細胞期になります。この16細胞期はウニの発生の中で最も特徴的であり、その形態やその後の細胞運命決定機構に対する重要さから、多くの研究者を魅了してきました。8細胞期までは”等割”といって、卵割により生じる割球の全てが同じサイズでした。しかし、8から16細胞期になるための第4卵割で、ウニは発生の中で初めて”不等割”を経ます。つまり、同じサイズでない割球が生じるわけです。8細胞期に4つあった動物極側の割球は経割により8個の中割球を、植物極側の4つの割球は緯割を経て4個の大割球、4個の小割球を生じます。植物極側は緯割ですが、小割球が植物極に集中するため、少し斜めに見えます。

過去に行われた細胞系譜追跡実験で、中割球は外胚葉(体の表面を覆う上皮や神経の細胞など)、大割球は内胚葉(消化管など)中胚葉(筋肉や色素細胞など)と少しの外胚葉、小割球は中胚葉のひとつである骨片細胞へと分化することが知られています。4細胞期まではひとつの割球が体の全てを作る能力を持っていたのですが、そこからたった2回割れただけで、将来の運命が限定されてしまうということです。細胞の中にある、将来の運命を決める情報がどのように分配されていくのかという仕組みを解析するのも、またおもしろいですね。

小割球は自身が骨片に分化しますが、直接接している細胞組織の運命を内胚葉へと分化させる能力を持っています。つまり、両生類の胚で見られるオーガナイザー的な役割を果たすことができます。実際に、小割球を単離して、他個体の動物極、つまり、中割球層の上に移植してあげると、そこから2個目の原腸が陥入します。この実験も実体顕微鏡と細く引いたガラス針と「忍耐」があれば実習で可能ですので、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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