LIVEハウスは見つからない

帯広を出発し、次は函館に向かった。

2002年から2006年まで私はURBANRANCHと書いてアバランチと読む、何とも覚えにくい名前の3ピースバンドでドラムを叩いていた。
道内各地を周っていたが、ここ函館も遠征LIVEを行った思い出の土地。
なので出国前にもう一度訪れ、あのLIVEハウスを見てみたかったのである。

『たしか五稜郭タワーの近くだったな』
正午過ぎに駅へ着き、今にも雪が降りそうな曇天の中、朧げな記憶を頼りに歩く。
正直、街並みから思い出される事は特に無い。
なにしろ、あの日は釧路から車で10時間位かけて移動し、着いて早々30分の演奏をして、企画者の家に泊めてもらい終了したので観光などする余裕は無かったのだ。

それでも最高に楽しかった。
移動中のメンバーとのくだらない会話
初めて会う対バンとの出会い
完全アウェイでのLIVE
泊めてもらった家で川の字になって寝た夜
ずっと笑っていた気がする。

しばらく五稜郭の周りを歩き続けたが、あのLIVEハウスは見つからない。
タワーを見上げ現在地を確認していると、空が白くチラついてきた。
3月に雪が降るのは北海道にはよくあることだ。
フードを深めに被り、目を細めて更に歩く。
次第に吹雪となり、アスファルトに落ちては融ける。
街灯がともり始め、横殴りの雪を一層目立たせる。
その中を服を濡らし早足で4時間探し歩いたが結局、見つからなかった。

ホテルに着き、インターネットで検索してみる。

あのLIVEハウスは20年近く前に閉店していたようだ。

たしかに、歩く前に検索していれば疲れることも濡れることも無かったのだが、先に答えを出したくなかった。
なるべく偶然を楽しんで世界を旅したいのである。
今回は残念な結果だったが、それも醍醐味として受け止めていきたい。

冷えた体をシャワーで温め、体を拭いて外を覗くと、空には星がチラついていた。

2023年3月から世界中を旅して周り、その時の出来事や感じた事を極力リアルタイムで綴っています。 なので今後どうなるかは私にもわかりません。 その様子を楽しんで頂けましたら幸いです。 サポートは旅の活動費にありがたく使用させて頂きます。 もし良ければ、宜しくお願いいたします。