初めての感情
2024/5/9〜2024/5/10
さすがに昨日は歩き過ぎたのだろう。
足の疲れが取れないどころか、頭痛まで…。
自分の体力に限界を感じ、この日はただじっと回復に努める。
実は今日チェックアウトする旨を昨夜に伝えていたのだが、私は延泊する事にした。
中庭に差し込む爽やかな陽射しの中で、もう少し佇んでいたくなったのだ。
そう伝えると彼女は驚き
「オォ、ノープロブレムッ」
と笑顔で喜んでくれた。
そして翌日。
アルメニア9日目の朝。
頭痛も解消され、また動けそうだ。
リダの家にも長くお世話になったし、そろそろ出ようと荷物を整理する。
高齢のリダの声はか細く、あまり活発に動けないのだが
『それでも、何かしてあげたい』
いつしかこのコーヒーから、彼女のそんな気持ちを感じるようになっていた。
時刻12:00。
「そろそろ行きます」とリダに挨拶。
彼女は
「オォ〜マサキッ、ノープロブレム」
と、私にハグをしてくれる。
「お元気でいてくださいね」
「また会いましょう」
アルメニア語に翻訳したその文字を見せると
「ノープロブレムッ、ジャパン カム」
ほとんど英語が話せない彼女の
「えぇ、日本人は大歓迎よ」という気持ちが伝わる。
私が滞在中、とうとう新しいゲストが来ることは一度もなかった。
かつては多くの日本人で賑わっていたそうだが、これも時代の流れなのだろう。
彼女が発したその最後の言葉には、優しさと寂しさが入り混じっていた。
玄関のドアを開けてリダと握手をし、背を向けて歩く。
曲がり角まで数十メートル。その途中、何度振り向いても彼女はずっと私を見て手を振ってくれていた。
そしていよいよ、私は帽子を取って一礼し、既に小さくなったリダに両手で手を振り返し、お婆ちゃんの家を去る。
後ろ髪を引かれる私の中に浮かんだ
初めての感情
“お婆ちゃん”
次の行き先も決めずに出たものの、さて、これからどうしたものか。
ヒッチハイクで名所もまわり、アルメニアにも満足だ。
そして1週間後、私はクタイシからデンマークに飛ぶ事を決めている。
なので、あとはジョージアに戻るタイミングだけなのだが、ひとまず近くの宿を取って休む事にした。
そこでは日本人のバイカーとも出会い、暫し談笑。彼もこの後ジョージアに入り、それからトルコに抜けるらしい。
すれ違いだったが、また会える事を願う。
そしてなんと、トビリシの宿で一緒だったブラジル人女性マルセラと此処で偶然の再会!
彼女はその宿で初めて私に親しく接してくれた人だった。
こんな旅らしい瞬間は何度経験しても興奮するものだ。
そのマルセラもジョージアに戻るとの事。
しかも出発日は明日だ。
「じゃあ明日、一緒に行こうよ!」
その彼女の言葉で私も決めた
よし
明日ジョージアに帰ろう
2023年3月から世界中を旅して周り、その時の出来事や感じた事を極力リアルタイムで綴っています。 なので今後どうなるかは私にもわかりません。 その様子を楽しんで頂けましたら幸いです。 サポートは旅の活動費にありがたく使用させて頂きます。 もし良ければ、宜しくお願いいたします。