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海外の広告における過激な笑い表現②

海外の映画やアニメを観ていると、時折「そんなのアリ!?」と驚いてしまうような過激な笑い表現を目にすることがあります。「ショーン・オブ・ザ・デッド」や「ゾンビランド」「ハングオーバー」などの海外映画ではグロテスクだったり、下品だったりする表現がギャグとして描かれていて、不快なものというよりも笑えるものとして受け入れられています。

そういった表現は日本のエンタメ業界でも「表現の自由」として認められていますが、実は、国によっては広告においても日本ではありえないような過激な笑い表現を取り入れています。今回は、そういった海外の事例をご紹介していきたいと思います。

前回の記事でも同様の事例を紹介していますので、併せてごらんください。


かわいい絵柄からは想像もつかないブラックな展開

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一つ目にご紹介するのは、ドイツの映画館のCMです。壁に絵画をかけるために男性がドリルで穴を開ける様子がポップなアニメーションで描かれます。しかしそこに「28.4% OF ALL FATALITIES OCCUR AT HOME.(死亡事故の28.4%は家の中で起きている。)」という何やら不穏なコピーが表示。実はドリルは隣の部屋まで貫通しており、椅子に座って本を読んでいた隣人の脳天を貫通していたのです。そして、「IT'S BETTER IF YOU'RE NOT THERE.(家にはいない方がいい。)」=「映画館に行こう。」というメッセージに繋げています。

「かわいらしい絵柄から一転して、展開が変わる。」という手法自体は日本のCMでも古くから使われていますが、ここまでポップなトーン&マナーからブラックな展開への振れ幅が大きい広告は早々ありません。衝撃的な展開ではありますが、現実世界では絶対に起きない事故を描き「死」をあくまで例えとして描くことで、ブラックではありながらもクスッと笑えるクリエーティブとなっています。

また、この作品のようにたった2つのコピーと企業のロゴだけで伝えたいことが分かるノンバーバルなコミュニケーションは近年の日本のCMではなかなか見られません。あえてノンバーバルな表現に特化したクリエーティブを作るのも、数あるCMの中で目立つための手段のひとつかもしれません。


不快すぎるがちょっぴりハートフルなコロナ禍のCM

2つ目は、コロナ禍で放映されたベルギーのラジオ局のCMです。舞台はお世辞にもキレイとは言えない公衆トイレ。トイレが狭いあまりに、見知らぬ男性と汗をかいた腕が触れ合い、腕毛の一つ一つが絡み合う様子がまじまじと映し出されます。しかも、BGMは小便が流れる音という不快を極めたような映像。しかし、男性のひとりはその状況をこう語ります。「コロナのせいで1年以上、ライブやフェスが開かれていなかったが、ようやくみんなで音楽を楽しめるようになった。そんな今は、見知らぬ男との肌のふれあいですら愛おしく感じる。」不快な状況を描いているように見えて、実はコロナ収束の喜びを描いているCMだったのです。

コロナ収束を願う系のクリエーティブのほとんどは、人々の心情を美しく描いているものが多いかと思います。その中で「こんな不快な瞬間でも、コロナ禍が明ければ、素晴らしいものに感じられる。」というメッセージはとても新しく見えます。人は不快に感じる事柄やネガティブな感情から目を背けたくなるものですが、不快な状況だからこそ発生する感情やインサイトこそ、新しくて笑えるアイデアへとつながるのかもしれません。


本記事では、日本の広告ではありえない海外広告の過激表現をご紹介しました。もちろんこういった過激表現を日本の広告でそのままやっても生活者からは受け入れられないでしょう。しかし、「汚い」「痛い」「かわいそう」といった状況からあえて目を背けず、そこにユーモアを取り入れることで見たことがない面白い表現を作ろうとする海外のクリエーターの姿勢には学ぶものがあると思います。


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