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直前情報!住宅ローン金利と金融政策の関係を知る①~変動金利編

迫ってきた日銀の金融政策決定会合

 2023年最初となる金融政策決定会合が1月17,18日に迫ってきました。
前回の金融政策決定会合では、金融緩和政策の修正?とも受け取られる決定が行われました。
 これを受けて「住宅ローン金利はどうなるの?」という疑問や不安が、一斉に巻き起こりました。
 そこで、日銀の金融政策と住宅ローン金利の関係を、基本から解説します。これを読んでおけば、金融政策決定会合の結論を即座に読み解き、対応を考えることができるようになります。

住宅ローン金利は、「仕入れ値」で決まる

 基本的な事ですが、住宅ローンを扱う金融機関は、自分のお金で融資をしているわけではありません。魚屋は魚市場から魚を仕入れて、利益を上乗せして店先で売っています。住宅ローンも同じです。住宅ローンを扱う金融機関は、お金という「商品」を仕入れてきて、利ざやを上乗せし、「変動金利型」、「固定金利型」などとして販売しているのです。
 お金の仕入れ先が金融市場です。金融市場は期間が1年以内の短期金融市場と、1年以上の長期金融市場に大別されます。
 短期金融市場からお金を仕入れてくるのが、変動金利型の住宅ローンです。期間1年以内のお金を仕入れてきて、期日が到来する度に仕入れ直しを行い、5年、10年、20年と継続してゆきます。仕入れ直しの度に、新しい金利が適用されることから、住宅ローン金利も定期的(年2回が一般的)にも見直されることになります。
 一方、固定金利型の仕入れ先は、長期金融市場です。長期金融市場の取引期間は1年以上ですが、中心となっているのは10年です。この間、仕入れ値は変わりませんから、売値である住宅ローン金利も、10年間は固定することが可能となります。
 さらに長い20年、30年の住宅ローンの場合は、当初から金利を高めに設定し、10年目以降の金利変動リスクを金融機関が負うことで、固定金利を全期間に適用するパターンが多く見られます。また、取引量は少ないものの20年、30年物の国債の金利を参考にしたり、10年間の固定金利が終わった後に仕入れ直しをして、金利を再決定するというパターンもあります。どちらの場合も、仕入れ値の基準となっているのが、期間10年の長期金利なのです。

仕入れ値を左右する日銀の金融政策

 住宅ローンの仕入れ値である金融市場の金利ですが、これを事実上決めているのが日銀です。しかし、その方法は、短期金融市場と長期金融市場では大きく異なっています。
 短期金融市場の金利は、日銀が直接決めています。私たちが銀行に口座を持っているのと同じように、全ての金融機関は日銀に口座を持っています。「日銀当座預金」です。
 この口座に適用される金利は「政策金利」と呼ばれていて、これを金融政策決定会合で決めています。一般の銀行が自行の普通預金や定期預金の金利を、経営判断で決めているのと同じですね。
 日銀当座預金は日銀が供給する資金の出入り口であり、銀行間決済にも使われていることから、そこに適用される政策金利が短期金融市場金利の基準となります。つまり、政策金利=短期金利=仕入れ値となり、これに一定の利ざやを上乗せしたものが、変動金利型の住宅ローン金利となるのです。
 では、政策金利はどのように決定されているのか。金融政策決定会合の公表文「当面の金融政策運営について」で、直接確認してみましょう。
 
政策金利について書かれているのは、「2.金融市場調節方針、資産買入れ方針について」の以下の部分です。前回の公表文にはこう書かれていました。

(1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)
①次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。
短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用する。

 日銀当座預金には、残高に応じて3つの金利が適用されています。その中の「政策金利残高」に適用される金利が「政策金利」で、金融政策決定会合でその水準が決められているのです。
 2013年4月からはゼロ(いわゆる「ゼロ金利政策」)となっていましたが、デフレがなかなか改善しないことから、2016年1月から、現行のマイナス0.1%が継続されてきました。
 この政策金利が、短期金融市場で資金を取り入れるときの金利、つまり住宅ローンの仕入れ値になります。
 実際の変動型住宅ローン金利は、金融機関ごとに違っています。それは利ざやの大きさや、融資条件などが異なるためで、仕入れ値は全ての金融機関に共通する政策金利なのです。
 黒田日銀総裁は金融緩和政策の継続を表明してきました。ですから、今年4月までの任期期間中は、現在の政策金利が維持されると見られています。 
   仕入れ値が変わらないのですから、販売価格である変動型の住宅ローン金利も、基本的には変わらないと予測されています。
 しかし、黒田総裁の任期が切れて、新しい日銀総裁が選ばれると、これまでの方針が転換される可能性が出てきます。現在のような高いインフレ率を考えれば、政策金利がマイナスからゼロに、そして、0.1%、0.5%・・・と引き上げられてゆく可能性が高いと考えます。
 変動金利型で住宅ローンを借りている人、これから借りようとしている人は、まずこの政策金利の動きを確認してください。
 金利が上昇するなら、固定金利型への乗り換えを検討する人も出てくるでしょう。しかし、固定金利型の仕入れ値である長期金利は、すでに上昇し始めています。グズグズしていると、乗り換えのチャンスを失う恐れもあるのです。
 では、長期金利はどのように決められるのか?固定金利型の住宅ローンの仕入れ値である長期金利の決まり方は、短期金利とは大きく異なっています。短期金利が日銀によって直接決められるのに対して、長期金利は間接的にしか決められないのです。
 日銀がどのように長期金利を決めようとしているのか?これを知ることは、固定金利型の住宅ローン金利の動向を探る上で、必要不可欠な知識です。これについては、次回の「直前情報!住宅ローン金利と金融政策の関係を知る②~固定金利編」で、詳しく解説しましょう。


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