高知県移住大作戦 7
〜調査編〜
有楽町国際フォーラムで開催された「新・農業人フェア」では、一直線に黒潮町のブースへ。
黒潮町に移住したいと考えています、黒潮町で新規就農したいです、私は53才ですが55才までは行政支援を受けられるのですか?
まぁ、こんなに直球ストレートではないけれど、お訊きしてみた。
黒潮町のブースにはお二人の男性がいらして、若いほうの方が主に対応してくださった。彼も移住したクチで、地域おこし協力隊なのだそうだ。
朗らかにお話ししてくれる若い彼に反して、スーツを着た黒潮町役場職員の方は、ほとんど私と目を合わせてくれない。お名前をお訊きしても、ちょっとシブシブな感じで名刺を出してくれた。
やはり黒潮町の農業インターンは慣行栽培で、しかも施設栽培なのだそうだ。施設栽培=ビニールハウスね。
つまり、JA(農協)から種苗を買い化学肥料を買い農薬を買い、ビニールハウスや農地を買うには自己資金が足りなければJAから融資を受け、そのうえ時期によってはビニールハウスを温める燃料代もかかる。
せっかく移住しても、毎日毎日JAのために働くの??
そして、私がやりたいのはそういう農業じゃない。土壌を汚して土壌の生物を殺して化石燃料を炊く農業じゃない。
どうすっかなぁ。。
私の年齢だと行政支援を受けつつインターンになれるのは黒潮町くらいだし、なにより黒潮町は魅力的だしなぁ。。
他の高知県のブースはどうなんだろう。
ぐるっと裏側に回ってみた。
四国の他の県の向こうにも高知県からのブースがあった。そこに、他とは異なる雰囲気のブースが一箇所。
Tシャツ姿の一人の男性が、人を寄せつけない空気でじっと前を見据えて座っている。机の上にはパンフレットやチラシの類いが一切なく、会場側の用意した看板が掲げてあるのみだ。
「小田々農園」
ビビって一度通りすぎかけて、いやでもせっかく来たのだからお話ししてみようと思い直した。
失礼します、よろしいですか。
前に座って正面から目を見た時、醸していた空気とうらはらに、疎通できる人だと感じた。
小田々農園さんは単独の企業として出展していた。
私は、先ほど黒潮町のブースでお話ししてきたのだが黒潮町の農業は慣行栽培で私のやりたい農業ではなかったこと、有機栽培を学びたいこと、黒潮町の役場の方はあまり来てほしくなさそうな感じだったけれど53才から始めるのは難しいのだろうかなどお伝えした。
「ウチ、有機栽培やっとるよ、ほとんど誰もやってなかった40年前からね。
黒潮町の役場はまともな奴が多いからな、移住して借金背負わせるなんてさせたくないのだろう。周りを見てみろ、他の役場から来てる奴らは気軽な東京出張くらいにしか思っとらんよ。
わたしは農業以外にもやってることがあるから、ウチの農業部門を切り離して別会社にして、そこの社長をやってくれる人間を真剣に探しに来ている。もちろん社員として働くこともできるが、それなら自分で独立して法人化することをオススメする。バックアップするノウハウもある。」
「アンタ、スマホは使えるか。このQRコードを読み取って開き、その中のこの記事を読んで、思ったことなんでもいいから言ってみてくれんか。」
読み終わり、スマホ画面から目を上げて、
「作るだけじゃダメなんだ。。」
と独り言のようにこぼれた。
目からウロコだった。
私が思い描いていたのは、農業でなく農民だったのだ。
ファーストワンマイルとラストワンマイル、ほんとそう、確かにそう。
私は借金まみれの農民になるところを救ってもらった。
つづく
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