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化粧品の手土産を要求するワイナリー

友人宅でワインを飲むことになり、駅前の酒屋に寄る。店長の年齢は60代後半だろうか。シニアソムリエと唎酒師の資格を持っている。先日の何気ない会話でそれを知り、感嘆と称賛を伝えずにはいられなかった。

同時に少し心配にもなり、「体調は大丈夫ですか?」と訊いてしまった。彼は苦笑いしながら「もうボロボロです」と答えていた。

この日もいつものように、新しく入ったワインを勧められたり、こちらが気になったボトルの個性を教えてもらいながら購入を決める。

何日か前にワインの新興国に触れたドキュメンタリーを見たところだった。そこでは酒を飲まないムスリムの風習を持つ部族が葡萄の生育に携わっている。特に面白く感じた場面だったので、会計を終えた後尋ねてみた。

シニアソムリエだけあって、店長もそれを知っていた。取引を考え、ワイナリーを何度か訪れたこともあるそうだ。

けれども先方からの要求、たとえば××堂の高級化粧品を送れとか手土産で持ってこいといった要求があり、嫌気がさしてやめたと語っていた。

商売を知らない素人の自分としては、へぇ、そんなことがあるんですか、、と驚くばかりだった。もちろん、向こうからすればそれを理とする事情があるからこそだろう。妥当と受け取るかは別として。

海外販路拡大のため、付き合いのある蔵元と一緒に渡航したこともあった。けれども税関で想定外の足止めに遭い、日本酒がダメになった、、そんな話もしてくれた。ワインと同じく、その国でのビジネスは諦めたそうだ。

店内には彼が訪れ、親交を結んだ様々な国のワイナリーの写真が飾られている。手土産のやりとりがあるのかは分からない。仮にそうだとしても双方が納得する範囲内に収まっているのだろう。

話はどこまでも広がりそうだったが、他の客が来たタイミングで切り上げることにした。自分が興味を持っている世界のずっと先にいる人の話を聞くのは楽しい。


ワインの名産地、ボルドーで



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