深夜のコンビニにて
深夜の散歩は日課のようなものだ。
誰もいない道を控えめに歌いながら歩く、
片手にはハイボール。
エモーショナルな曲を聴きながら、
知らない道を知らない人のふりをして歩く。
この時ばかりは、私は私ではない。
見知らぬ街の住人として歩きつづける。
深夜、といっても0時過ぎ。
片手の友、肝臓のパートナー、ハイボールを飲み切ってしばらくたってコンビニに遭遇した。
まだ飲める。
様々な成功と失敗を経て、それくらいは身をもって熟知しているつもりだ。
コンビニに入ると、おじさんともおじいさんともつかぬ男性がレジに立っていた。
どこか眠そうだった。
缶のお酒とつまみを選んでいるうちにレジはどんどん混んできた。
まるで、客全体が示し合わせたようだ。
私は、レモンサワーとブリトーを持って最後尾に並ぶ。前の人はストロングゼロを5本も買っている。ストゼロは良くも悪くも思考を溶かすとストゼロ好きの友人が言っていたのを思い出した。
おじさんともおじいさんともつかない店員さんはおぼつかない手つきでレジをこなしている。
イヤホンで怪談話をきいていると、
レジの順番が回ってきた。
その店員さんは「うーん」と伸びをしてから、
「すいませんねぇ」と私に眉をハの字にして詫びた。
「いえ。」
続けてお疲れ様です、と言いたかったが言いそびれてしまう。単純に勇気がない。
お会計を済ませて、また徘徊を続けようと思ったが、ブリトーが温められていないことに気づいた。チーズ入りだから余計に温まっている状態が理想的だ。
コンビニ備え付けのレンジがあれば自分であたためたが、ここの店にはにはなかった。
でも、眠そうに疲れた様子でレジをしている店員さんにもう一度声をかけるのもなんだか気が引ける。
そのとき、奥から私と歳の近そうな店員さんが出てきたのでできるだけこっそり伝えることにした。
「すいません、ブリトーを温めてもらってもいいですか?」
「あ、すいません。わかりました」
「あ!」
さっき会計をしてくれた店員さんに気付かれてしまった。
「すいませんねぇ、温め忘れて...」
「いえ、大丈夫ですから」
二回りかそれ以上歳の離れた私のような客にペコペコと頭を下げてくれて、その様子はどこかアニメーション的だ。同時に切なくなった。
いつからだろう、お年を召した方が働いている姿を目にするようになったのは。
昔はこうじゃなかった気がするのだ。
意識していなかっただけかもしれないけれども。年金やら、雇用やら、色んな問題があって皆色んなことを言うけれども。人それぞれだけれども。祖父母や両親の具合を思えば夜勤は特にしんどそうだなと思う。かくいう私も、老いても働き続けることになるんだろう。それが本意あるいは不本意だとしても。
受け取ったブリトーは熱くて、食べ始めるのに時間がかかった。
すっかり人通りがなくなった住宅街は耳鳴りがするくらい無音で、歩けど歩けど家までたどり着かないような気がした。
サポートの分だけ強くなりたい。 アスファルトに根を張る大根のように。