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【映画】ミッドナイトスワン わたし的解釈その4

海外の雑多な街並み。場面は病院に移る。ナギサは病院着を着ている。
あぁタイに来たんだな、性転換手術受けるんだなと思った。
なかなか衝撃的な手術のシーン。想像しかできないけど、死ぬほど痛いだろうなと思った。

コンビニの前でたむろする中学生。やさぐれたイチカの姿もある。
赤い車がコンビニの前で止まり、イチカに乗るように促す。赤い車を運転する男性は、母サオリの彼氏だと思った。
自分が居ないと母が生きていけないと思って、東広島に帰ったのに、彼氏を作ったからやさぐれたんだな。と解釈した。

家に着くと真っ赤な洋服を着たナギサが居た。母は変わり果てた息子の姿にショックを隠せない。
ナギサはイチカに気付き、一緒に東京に戻ろうと言う。
サオリは激昂し、ナギサと掴み合いになる。間に入ったサオリの彼氏に突き飛ばされ服と下着が破れ、胸が露わになるナギサ。
母は泣き崩れ、サオリは「バケモノ!」と言い放つ。見ているだけの私でも息が出来なくなる。
「私女の子になったの、だからお母さんにもなれるのよ」というナギサの言葉に若干の狂気を感じた。
イチカは必死でナギサについて行こうとするが、サオリに止められる。
はだけた洋服を隠し、赤いトレンチコートの前をぎゅっと握り早足で去って行くナギサに胸が張り裂けそうだった。
身体を女の子にしても、まだ女として扱われない絶望。お母さんになれない絶望。

仰げば尊しを歌うイチカ。場面は卒業式。サオリも派手なスーツで参列している。式が終わり、一緒に写真を撮ろう、遊びに行こうと誘う友達も素朴で育ちが良さそうだ。イチカの変わりっぷりに驚く。
バレエの練習があるからと友達の誘いを断るイチカ。公民館のようなところでバレエのレッスンを受ける。先生は馴染みのあの先生。
東京からわざわざ通っているの?イチカが落ち着いたのは、バレエを続けられているからなんだなと理解した。

中学を卒業したら、東京に行く事をサオリと約束したらしい。
夜行バスで新宿に向かうイチカ。迎えのナギサの姿はない。

ナギサのアパートに向かうイチカ。郵便受けには、郵便物が溜まっている。中に入ると、血が着いたゴミが散乱しており、台所も片付けられていない。「遅かったじゃない、早くオムツ変えてちょうだい」と言うナギサはキャミソールとオムツというあられもない姿で横たわっている。
近くに来たイチカに気付き、恥ずかしがる。
「せっかく女の子になったのに、さぼっちゃった」血のついたオムツをはいたナギサが言う。目もよく見えていないようだ。

東広島での一件の後のナギサは自暴自棄になったのではないだろうか。お酒に溺れ、適当な食事をし、病院にも行かない。
耳に開けたピアスの穴ひとつだって化膿してただれることもある。あんなところに穴を開けて平気でいられるはずがない。

元々は自分のために女になりたかったはず、だけどそれよりも、イチカの母になりたいという思いが強くなった。
身体さえ女になれば、母になれると思い込んでしまったんじゃないだろうか。そこまでして手に入れた女の身体が意味の無いものになってしまったら…

イチカによって綺麗に片付けられた部屋で、イチカの作ったハニージンジャーソテーを食べる2人。
ナギサは海に行きたいと言う。私は死に場所を海に決めたんだなと思った。
バスに揺られ、明らかにしんどそうなナギサ。イチカに支えられながら、やっとの思いで浜辺に腰を下ろす。
小学校の時、男の子の海パンを穿くのが嫌で入れなかった海。ナギサにはスクール水着を着てはしゃぐ自分が見えている。
幻覚が見えているナギサに、イチカは病院に行こうと言うが、ナギサは頑なにイチカに踊ってみせてとせがむ。

海を前に踊るイチカ。それを幸せそうに眺めるナギサ。ナギサはそのまま事切れる。幸せな気持ちで旅立ったのだろうな。そうだったらいいな。

踊り終わり、ナギサがもうダメな事に気づくイチカ。そのままズンズン海に入って行く。私はイチカは死んだと思った。

海外、ナギサのトレンチコートを着て風を切って歩く後ろ姿。劇場に入って行く、留学したイチカ。「見てて」と一言、舞台の上で踊りだす。

私の周りに手術をしたトランスジェンダーの人は居ない。テレビなどメディアに出ているトランスジェンダーの人たちは、暗い過去を背負っていても、自ら掴み取った本来の性にある程度満足し、キラキラしている様に見えた。
だから、少し考えたらわかりそうな手術の壮絶さや術後の大変さなどには考えが及ばなかった。ショッキンングな映像で突きつけられた現実に胸がえぐられた。

この文章書いていて、私はイチカに感情移入をしているんだなと思った。イチカが生きていく世界、過酷すぎる。ナギサも大概だと思うけれども、中学生で親友と第二の母が半ば自分のせいで死んでしまうとか生きていけない。海に入って行くシーンは本気で死のうと思っていたのではないかと思っている。

この映画はきっとトランスジェンダーが〜って映画なのだろうし、実際そうなのだけれども、
私にとっては改めて、人が生きて行くって綱渡りみたいなもので、足元のロープを構成している希望とか、自信とか、人間関係とか、ブチブチって切れたら死ぬんだな。全部切れなくてもバランス取れなくなったら死ぬんだな。と、死について考えさせられる映画でした。

とにかく、みんなに見てほしい。そしていろんな人の感想を聞きたい。

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