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マカロニえんぴつはなぜ売れたのか?〜音楽性の変遷より考察〜(約4500字)

オトハルの山本です!
宮本さんのnoteを拝見し、音楽マーケティングに興味を持ったため、最近話題の『マカロニえんぴつ』を分析してみました!
今回は、施策の分析というより、どんな過程で強みを磨き上げてきたのかという、マカロニえんぴつの強みの分析がメインになっています。

音楽性の変化がヒットにつながった好例かと思いますので、少し長いですがぜひ読んでみてください~!

1.コンセプトの変遷〜玄人音楽から、メッセージ性の獲得まで〜

分析するにあたり、インタビュー記事を複数読んでみて、
マカロニえんぴつのコンセプトは、レーベル移籍前後で少し変化したのではないか?
そのコンセプトの少しの変化が、活動に大きな影響をもたらしたのではないか?
と感じたため、本章ではまず、マカロニえんぴつのコンセプトの変遷を、インタビューを追いながら明らかにしていこうと思います!

ちなみに、マカロニえんぴつのHPには、以下のような紹介文があります。

「2012年はっとり(Vo/Gt)を中心に神奈川県で結成。メンバー全員音大出身の次世代ロックバンド。はっとりのエモーショナルな歌声と、キーボードの多彩な音色を組み合わせた壮大なバンドサウンドを武器に圧倒的なステージングを繰り広げる。全国にマカロックを響かせるべく都内を中心に活動中!」
マカロニえんぴつHPより)


また、自分たちで「全年齢対象ポップスロックバンド」とも称していますね。

これらから導き出せる、音大出身エモさ、大衆性といった要素はキーとなってくるので、覚えておいていただくと読みやすいかもしれません!

それでは行きましょう〜。


1−1.ユニコーンと玄人音楽

「僕は憧れているものがあって、それを追いかけているだけ。やっている自分が好きだからやっているんです」
――"憧れているもの"とは?
ユニコーンと奥田民生さん、そして僕が好きな全ロックバンドです」
エモい! 胸を締め付けられる! 今、話題のバンド「マカロニえんぴつ」のフロントマン”はっとり”ってどんな人?:あのコの夢を見たんです。より)

よくインタビューで語られるように、はっとりさんはユニコーンと奥田民生さんが大好きで、その憧れを追い続けることが音楽のモチベーションになっているようです。そのユニコーンについて、以下のように語ります。

――"はっとり"というお名前は、ユニコーンのアルバム「服部」が由来とのことですが、数あるアルバムの中からなぜ「服部」を選ばれたのですか。
「『服部』はいわゆるキメ盤。当時としてもバンドブームの中で異質なことをやっているし、後々のバンド界、音楽界にも多大な影響を与える実験的なことをやっているアルバムです。ユニコーンの作品を見渡しても、緻密なアレンジをしている。そこに遊び心、ユーモアを忘れていない。ロックバンドとして僕のやりたいことの全てが詰まっているアルバムです。」
(エモい!胸を〜以下略、より)

はっとりさんは、ユニコーンのような「実験的で音楽界に影響を与えるような音楽」をつくりたいと考えているのではないでしょうか。
また、他のインタビューでは、「いかに玄人を唸らせる楽曲を作るかに重きを置いていた」という発言も見かけられました。

そして実際、メンバーが音大出身なため、玄人を唸らせるような凝ったアレンジが実現可能だと思います。

これらから、「ユニコーンという憧れを追いかけつつ、音楽界に影響を与えるような、玄人に好まれる音楽を創り上げる」ということが、はっとりさんが音楽を始めた理由の一つだと考えられます!

1−2.グッドミュージック

また、マカロニえんぴつは結成当初から、「グッドミュージック」という言葉を度々口にしています。(マカロックともよく言いますね!)
残念ながら「グッドミュージック」という概念について、メンバーが直接語っているものは見つけることができなかったのですが、メロディへの意識、こだわりについては、下記インタビューから窺い知ることができます。

―もともと持っている「楽曲重視」という側面が、今では「マカロニえんぴつっぽさ」になってるのかなと思います。パフォーマンスや楽曲の機能性が重視されたライブ / フェスの時代を通過して、ストリーミングの影響力が増してきた中で、今はまた楽曲そのもののよさが重視されるようになってきてると思うから、マカロニえんぴつが支持を集めていることには時代感も感じます。
はっとり:当初からメロディー重視っていうのは変えずにやってきたので、そこは運がよかったというか、結局時代は回っていくってことだと思うんですよね。1990年代はみんなが口ずさむ歌が「J-POP」って呼ばれて流行ったわけで、今はそこ今はそこがまた見直されてるだけなのかなって。
マカロニえんぴつ・はっとりが歌に託す「ひたすら優しい歌を」より)
「涙を流す直前の、ぎゅっと胸が締め付けられる瞬間が好きなんです。僕は楽曲にもそれを求めていて、"エモい"部分を大切にしています。よく"泣きのメロディ"といいますが、グッとくる"泣きのコード進行"があって。泣かせたい、感動させたい、胸を締め付けたい、という思いで曲を作っています。」
(エモい!胸を〜以下略、より)

これらのインタビューから、はっとりさんは、クセのある音楽をつくるというだけでなく、泣かせるメロディや、みんなに口ずさんでもらえる楽曲をつくることも大切にしているとわかります。

このように、「グッドミュージック」という概念は、マカロニえんぴつを語る上で欠かせない要素となっています!
(僕が好きなミニアルバム「s.i.n」を載せておきます!)

1−3.murffin discsへの移籍〜ライブバンドへの進化とはっとりのメッセージ〜

―アップダウンを経験する中で、オーディエンスとの向き合い方も変わっていった?
はっとり:そうだと思います。一個大きかったのは、今所属してるmurffin discsに移籍して、ここの仲間と一緒にライブをするようになったことで。
それまでは楽曲重視というか、楽曲のアレンジをいかに面白く、遊びを取り入れつつ、玄人を唸らせるか、みたいなことに重きを置いてたんですけど、murffin discsはステージ上でのお客さんとのコミュニケーションを重視してるバンドばっかりで(SUPER BEAVER、sumikaなどが所属)。僕らのそれまでのライブに対する姿勢が崩されたんです。
―どんな気づきが大きかったですか?
はっとり:「ライブ=会話」なんだなっていうのは、カルチャーショックですよね。それを受けて「このままじゃいかん!」ってなってからは、曲作りよりもむしろライブが楽しくなって、自分たちなりのライブの運び方、お客さんとの会話の取り方が少しずつわかってきて。今は現段階での一個のスタイルを見出せた気がしています。
(マカロニえんぴつ・はっとりが〜以下略、より)

このインタビューから、アルバム『CHOSYOKU』製作前の2017年の、レーベルの移籍が、バンドの考え方に大きな影響を与えたことがわかります。
murffin discsに移籍し、SUPER BEAVERなどのライブバンドとの対バンを重ねたことで、楽曲重視からライブも重視するように考え方が変化したようです。

―新作の『season』に関するコメントでは「マカロニえんぴつという4人組のロックバンドはオールシーズンあなたの逃げ場所を担当します」と書かれていますね。
はっとり:1~2年もすればまた変わっていくと思うんですけど、今はそう思ってます。「優しさ」っていうとざっくりしてますけど、ひたすら優しい歌を作りたいと思って、それでできたのが“ヤングアダルト”で。今はそういう歌を歌える余裕ができたということかもしれないですね。

―前のツアーの本編ラストに演奏された“ハートロッカー”にも<逃げ場所>というフレーズが出てきますが、あの曲を作った当時の心境とはだいぶ違う?
はっとり:違いますね。大きく違うのは、前は一人称で、終始自分の言葉にできない思いを「言葉にできない!」って言ってるだけなんですよ。当時からメロディーには自信があったので、言葉がメロディーに乗ると、あたかも救いの歌のように聴こえるけど、歌詞だけ読むとそんなことはなかった。説明もそんなにしてなかったし、誰にも理解されなくてもいいやって、閉ざしてる部分が多かったと思います。
でも、今は全く逆で、“ヤングアダルト”もそうだし、“青春と一瞬”もそうですけど、俯瞰で、第三者の立場になって、遠くからメッセージを贈っているので。そういう歌が書けるようになったのは、いろんな経験を経たからだと思いますね。
(マカロニえんぴつ・はっとりが〜以下略、より)

また、ライブへの意識が変わり、お客さんとの対話を重ね続けたことで、「内に閉じた歌」から、「メッセージ性の高い、人に寄り添う優しい歌」を書くように変化したみたいです。

個人的には、このようにライブへの姿勢が変わり、楽曲性が変わったことで、マカロニえんぴつの歌が玄人だけでなく大衆に届くようになったのではないかと考えています。

2.マカロニえんぴつはなぜ売れたのか?〜コンセプトの変遷から考える〜

以上のように、マカロニえんぴつのコンセプトは、初期から少しずつ変化していると考えられます。
その変遷を、宮本さんのnoteにある5W1Hの形に整理してみると、下図のようになります!

つまり、レーベル移籍によって生じたライブへの意識の変化から、より目の前のファンに寄り添う歌をつくるようになり、楽曲のターゲット層が拡大したのだと考えます。


そして施策面でも、
2017年のレーベル移籍後からライブパフォーマンスが向上
→2018-19年ごろのフェスシーンで存在感、認知度を向上
→2020年のコロナ禍で、生活に寄り添うグッドミュージックが、フェスで獲得したファンを中心にサブスクでヒットする
という強みを活かした一連の流れを起こせたことで、現在のヒットに至ったのだと思います!

(はっとりさんのカリスマ性を活かしたメディア露出や、SNSも、獲得したファンのグリップに効果抜群なんじゃないかなと思っています。僕がはっとりさん好きなので笑)


このように、
①ライブという新しい強みを磨きつつ
②楽曲のターゲット層を拡大し、
③フェスで認知度を向上させた後、
④グッドメロディーが活きるサブスクの時代に突入した
という一連の流れが、マカロニえんぴつのヒットの要因だと言えそうです!(個人の見解です…!)


3.おわりに〜マカロニえんぴつの描く未来とは?〜

最後に、インタビューを読んでいて面白かった一節を紹介して終わろうかなと思います。

――では最後に、メジャーデビューを果たしたマカロニえんぴつが、これから目指す道は?
隙間産業です。みんなが行ってる方とは違う方に行く。誰もやっていないことはもうできないんですよ、すでに先人がやりつくしているから。ゼロから新しいもの生み出すのは難しいですが、いろんなことをブレンドして新しい風(ふう)にみせて、耳を奪う、目を奪う。それをやり続けていきたいですね」
(エモい!胸を〜以下略、より)

今回は売れた理由の考察を行いましたが、この一節を読んで、はっとりさんはやはり、売れることよりも「マカロニえんぴつの音楽」を突き詰めることを大切にしているんじゃないかなあと感じました。

そしてその音楽は、ユニコーン譲りの凝ったアレンジや、想いのこもった歌詞、そしてグッドメロディーがミックスした、オリジナリティ溢れる素敵なものになるのだと思います。これからどんな曲を作ってくれるのか、ほんとに楽しみです!コロナが収まったらライブ行きましょうね!


それでは、最後までお読みいただきありがとうございました!

文: 山本恵大

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