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東京 / サニーデイ・サービス 雑感

「サニーデイ・サービス」の「東京」ならそりゃ名盤

昔ほど上京という行為が特別では無くなった近年、というか東京というものに別段強い憧れを持たない人が増えたかなという感じですかね。
それでも上京組はひっそりと東京に思うところあるものです。

私が十代の頃上京したときも「別にしたくてしたんじゃないよ」というポーズというか、一応夢あって上京したのですがそれが少し恥ずかしいためカッコつけて嫌々感を出していました。
(たしかに満員電車なんかは今でも嫌ですが)
そのためこの東京というまんまな感じがした作品は所持はしていましたがなんだかあまりにもその時の状況に似合いすぎる感があって気恥ずかしく聴いていませんでした。これは他の上京組のバンド達のそういった類の曲全体に言えますが。(上京と状況がややこしいですね)

東京に移り住んで数年たったある日下北沢を歩いていて猛烈にサニーデイのことを思う瞬間があり、家に帰ってすぐこの作品を聴いて素直に感動したことを覚えています。
いちリスナーでしか無い私と作品を作り続けるミュージシャンの彼らでは全く人生も何も違うのに地元を離れて東京に居る、下北沢に居るということで妙にアイデンティファイしてしまいました。

この作品が少し時を経ってより良く感じたのは東京での暮らしが当たり前の生活になっていたからかもしれません。
若年の私にはこの作品のイメージは東京でいっちょやったんぜ的なノリのものかと思っていたのですがわりと地に足がついたといいますか自然体の日常の感があり聴く側が身構えなくてもスッと入ってくる作品になっています。

そしてこの作品をすんなり受け入れてオレも知らん間に東京の人なのかなーなんて思ったり。

なんやかんや前置きが長くなりましたが

曲目です。

1.東京
表題曲。アコースティックでフォークソングのように歌われる時間も短い曲。桜のジャケットが目を引くこのアルバムの一発目としてまさにピッタリ。表題曲で一曲目なんだからそりゃそうだろうという話ですがある種コンセプチュアルなアルバムの雰囲気を抜群に引き出してます。

2.恋におちたら
爽やかな朝の気分になる曲。サニーデイサービスというバンド名そのままに他の曲もそうですがよく晴れた気分の良い日を想起させる曲が多くて良いですね。洒落たメロディも気持ちいい。多少悲しい予感が歌詞に含まれていてもそれを覆い隠すような爽やかな曲調がこれまた桜のジャケットそのもののようでピッタリ!

3.会いたかった少女
カントリー味のある曲でゆらゆら身体が勝手に動いてしまいます。これまた洒落たメロディがそこかしこに。ギターの音色とストリングスの音色で穏やかに気分が盛り上がるのが好きですね。歌のメロディも良い。他も全部良い。
アホみたいな感想ですがしょうがないですね。

4.もういいかい
友人なのか恋人なのか全く違う誰かなのかわかりませんがそんな人たちとの別れをかくれんぼになぞらえて歌われた様な曲に感じます。
前曲までにくらべて少し歌が前に出ている感があって少し寂しげな雰囲気のサウンドで聴かされる曲という感じ。

5.あじさい
ファンクとダンスっぽさが入り混じった曲ですがイヤらしい派手派手しさが無くめちゃくちゃノリのいい良質なフォークロックという感じ。
ストリングスも効果的に使われていてとても良い感じです。歌詞も文学っぽいノリが他の曲よりも強く出ているのにサウンドにのるとポップになるのが面白いです。

6.青春狂走曲
彼らの代表曲として有名な曲。シングルではなくアルバムの流れで聴くとハモンドオルガンの音から始まりヒップホップ感のある歌い方をしているこの曲は少し他とは違うメジャー感みたいなものが感じられます。
(代表曲だからと色メガネで見てるところが多分にあると思いますが)
前曲までに比べてドライな雰囲気で歌われる歌詞が良いですね。
友人らに近況はどうだと聞いた後でこっちはどうにもならんよという歌詞はドライに歌われているから不貞腐れている様にも感じませんし、
今んとこはまあそんな感じなんだ という歌詞に繋がるのですがこれまただからって未来に自信がある様にも感じない。
どうにもなってないという慢性的な焦りを持ちつつも晴れてるから気分が良いといった瞬間的な心地良さが同居したような曲なので多くの人の心にスッと入るのではないでしょうか。

7.恋色の街角
個人的に昭和歌謡の匂いを感じる曲。
一口に昭和歌謡といっても様々なのでなんとも説明は難しいのですがそんな感じなんですよ。
野口五郎感があるといいますか、野口五郎氏も実はロックマインドの持ち主なのでこの曲から野口五郎感を感じとっても大きく外れてはないと思います。この文章のせいで「の」の予測変換の最初が野口五郎になってしまいました。

8.真赤な太陽
フォークとブルースを合わせたオールドロック然とした曲。メロディは軽快で歌詞も晴れた日のデートの様子を歌っているようで楽しげな曲。

9.いろんなことに夢中になったり飽きたり
ゆったりとした曲調とコーラスで耳心地の良さが際立つ曲。わりと寂しげなことを歌っているのにのんびり優しげなサウンドのおかげで悲観的には聴こえないのが良いですね。
個人的に傍観してる感じの歌詞が好きなのでこれもそうですかね。

10,きれいだね
冒頭遠くでプライベート感のあるピアノの音がした後でクリーンなギターの爪弾く音が鳴った瞬間でオールOKといった感じですかね。
完全好みのサウンド。ムーディーな歌詞とロックンロールは食い合わせが良いですね。

11.ダーリン
ロカビリー味のあるダンスナンバーのようで跳ねたベースや粒立てた歌い方でノれます
この曲だけでは無いのですが個人的にペダルスチールが使われた曲が好きな傾向があるみたいです。

12.コーヒーと恋愛
タイトル通りオシャレ丸出しの曲。演奏はクレジットを見るとVo.曽我部氏のみ。アルバム全体そうですがわりと曽我部氏のプライベートアルバムの雰囲気が強く出ている気がします。
故にまとまりがあって非常に素晴らしい出来になっていると言えるのかもしれませんが。

聴きました。

アートワーク、コンセプト、サウンドと文句なしですね。96年にこの作品が世に出たというのも素晴らしい。90年代の雰囲気を70年代みたいな音で当時の若者がプライベートな気持ちも一緒にパッケージングして今の時代の若い方たちが聴いて共感を覚えるというのは中々すごいことだと思います。
やはり名作とは自己のパーソナルな部分を歌っていてかつそれが普遍性をもって多くの人に受け入れられるもののことをいうのだなと感じました。

今作の曲は何しろ天気の良い日に散歩してるとき不意に口をつく鼻歌にピッタリ!というようなものばかりなのでまだ聴いたことない方は是非ー。
個人的な話を冒頭書きましたが夢あって上京した私はまだどーにもなってませんがとりあえずこの作品聴いてボーッとしたいと思います。

なんやかんや言ってますが

それではー。 

嘘記事もよろしければー。

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